倒れているエルフと倒れている女の子
出発したルビーとルクアは楽しく雑談しながら歩いている。
「ギルドからしばらく歩いたけどずっと草原だな」
「ギルドはものすごく広い草原の中に建ってたからな」
ルクアの言う通り辺り一面見渡す限り草原で何も見当たらない。
「今さらだけど何でそんな不便な所にギルド建てたんだ?」
ギルドでの生活で不自由なく暮らしていたルクアは特に周りの環境など気にならなかったがふと疑問に思った。
「私達が暴れても大丈夫なようにだな」
「あ~なるほど」
昔ルビーとオウミが喧嘩をした時に大きなクレーターを作ってレタスに怒られていたのを思い出す。
「それに私達の足だったら町まですぐだからな」
「それもそうだな」
そうは言っても一番近くの南にある町まで歩いてニ日はかかる距離だ。ちなみに今向かっているのは西にある町なので歩いたら三日ほどだろうか。
ちなみに今回の行き先は棒を倒して決めた結果だ。
今の季節は春、のどかな風景を見ながら歩くのも悪くないなと思うルクアは鼻唄まじりに歩いている。
道を歩いてると誰かが倒れている。
二人は少し手前で立ち止まった。
ルクアがエルフだなと言い、ルビーもそうだなと頷く、しかもそのエルフは良く見るととても見覚えのあるエルフだった。
しばらく考えて無視して横を通り抜ける事にした二人。
それに気付いたエルフがさっと立ち上がる、倒れていたのはどこからどう見てもレタスだった。
「ちょっと待って二人とも無視は酷いよ」
無視された事で涙目になるレタス。
「連れてかないぞ」
ルクアはレタスの方を振り返りそれだけ伝えて歩き続ける。
「もう!ちょっと待ってよ」
少し怒って頬を膨らませ、追いかけてくるレタス。
それを聞き顔をしかめ立ち止まる。
「渡し忘れたの物があったの」
「それなら普通に渡してくれ」
とタメ息をつくルクア。
驚かそうと思ったレタスはルクアの反応にしょんぼり肩を落とす。
「それで渡す物とは」
レタスが首から下げているネックレスを外して手に持つ。
「それ、母さんが大事にしてたネックレスだよな」
このネックレスはレタスが肌身離さずつけていたネックレスだ。
「うんそうだよ、だけどこのネックレスはルクアが持っておくべき物なの、大きくなったし失くさないでしょ」
ウインクをしてニヤッといたずらぽっい笑みを浮かべるレタス。
一度大事そうに胸で抱きしめルクアに渡す。
渡されたネックレスは鎖状のチェーンに五百円玉程の大きさに銃と剣が交差するように描かれている。
「そうだな、それはルクアが持っておくべきだ、私達からしても大事なネックレスだから失くすなよ」
ルビーの表情はいつにもまして真剣だ。
ルクアも何か感じとったのか、真剣な面持ちでネックレスを首につける。
「大事にするよ」
その様子を見てルビーはかつてのルクアがネックレスを首から下げてたのを思いだした。
レタスは最後の時にルクアからネックレスを渡されたのを思いだす。
手を振りながらレタスと別れを告げた。
ルビーは先程のレタスを見て母親の時はしっかりしてたのに、以前のレタスに戻りつつあるなと心の中で思った。
それからしばらく歩いててルビーはふと思った。
(このままじゃ三日間草原の道を歩くだけで終わってしまう、せっかく独り占めできているのに)
ギルドに居た時は仕事以外の時間は基本的に一緒に居れたが、その他大勢が居たため独り占めは出来なかった。
「よしルクア走るぞ」
「どうしたんだよいきなり」
「最近走ってないから修行だ修行」
「わかったよ」
過去ルビーと走る特訓をしてた時の事を思いだす。
「いいかルクア勝てない相手と思ったら逃げるいいな!」
腰に手をあて話すルビー。
「うんわかった」
元気よく返事をする十歳のルクア。
「よし!じゃあ~走り込みだ、足が速くなくては相手から逃げきれんからな」
あの時はとにかくひたすら走りまくったなと思いつつ、あの特訓はルビーらしいとも思った。
二時間ぐらい走っただろうか、大粒の雨が勢いよく降りだしてきた。
俗にいうゲリラ豪雨だ。
「うわ~思いっきりふってきたな」
ルクアが上を見上げていると、ルビーが腕にしがみついてきた。
「雨苦手なの」
ルビーが少し震えている。
その言葉をきいて、見えない手の応用でドーム状に結界をはった。
「これで大丈夫だろ」
そう言いながら、草原の方に歩きシートをだして座る。
「ありがとう」
喜んだ様子をみせ、ルクアーが昔もこうして雨から守ってくれたなと前世での思い出を懐かしむ。
結界のなかで肩を寄せ合うふたり。
「この雨ルビーなら雲ごと蒸発させられるんじゃないか?」
「出来るけど辺り一面焼け野原になっていいのか」
真顔で恐ろしい事を言うルビー。
「うん、やっぱり止めて、俺も焼け死ぬわ」
真顔で即答するルクア。
十キロほど離れた所にある小高い丘からレタス、オウミ、ピカリン、モクリン、ガウ、コロ達七名が
二人を観察している。
こちらはまだ雨は降っていないようだ。
「くぅ~ルビーめルクアとイチャイチャして」
「もっと雨を降らせてルビーに嫌がらせをしようかしら」
「ついでに特大雷をお見舞いしますか」
口元を引き締め悔しそうに眺めるレタスと、どう嫌がらせをするかオウミとピカリンが真面目な顔で話しあっている。
「そんな事したら二人がくっついてる時間が長くなるだけよ」
「じゃあ~私が氷をお見舞いしよう」
「それもダメ」
ガウまで氷をお見舞いしようするので、皆もぅ~と困った顔をするモクリン。
するとそこで、ガウの後ろにいたコロが
「お姉ちゃんは脳筋なんだから私が風で雲を吹き飛ばすよ」
妹に脳筋扱いされたガウは悔しそうだ。
ちなみにコロはガウの妹で、ガウより少し背が低くく、人懐っこい顔をしている。
ショートヘアが似合う可愛い女の子だ。
コロは犬の髪飾りをしている。
改めて姉妹を比較してみると、ガウが気の強そうな美人、コロが可愛い妹系女子という感じだ。
コロがだした提案にモクリンも賛成した。
「それいいわね、そうしましょ」
コロが丘の先端に歩きでて、手のひらを下唇の下ぐらいにあて、軽く吐息を吹いた。
すると最初は小さな渦が段々と大きくなり飛んで行く。
ルクアとルビーが結界で休憩をしていると急に雨が止み、雨雲一つない晴天になる。
勿論コロのゼウスの力を感じとっていたルビーは急に雨が止んだ原因に気付く。
(コロが雲を吹き飛ばしてくれたか)
苦手な雨がやんで元気になるルビー。
「急に雨が止んだなぁ~」
(コロあたりが風で吹き飛ばしたんだろう)
眩しそうに空を眺め原因には気付かない振りするルクア。
皆が後をつけてるのを勘づかれたくないルビーは誤魔化すように
「さぁ~さっさと町まで走るか」
「うん、そうするか」
少し怪訝な表情をするルクアと内心冷や汗をかくルビー。
それから走り続け町まで後歩いて一時間ぐらいの所までついた。
時刻は夕方17時ぐらいだろうか。
流石に疲れたルクアははぁ〜はぁ〜と息をきらし膝に手をついている。
ルビーは全く疲れた様子なくケロっとしている。
ルビーが道の先を眺めているとまた人が倒れているのを発見する。
「二百メートル位先に人が倒れてるな」
ルクアに向かって喋りかけるルビー。
「もしかして母さん?」
先ほどの事を思い出し眉をしかめるルクア。
「うーん知らない人だな」
「それなら心配だし行ってみるか」
走って駆け寄るルクアとルビー。
「おい大丈夫か」
うつ伏せに倒れている人をゆすってみる。
反応がないので、ひっくり返して上に向ける。
どうやら倒れていたのは女性のようだ。
ルクアが息をしてるか確認すると、息はしているようだ。
身体を見ると小さい傷がいくつもついている。
女の子がうっすら目をあけ、小さな声で
「水と食べ物と私に触ったのでお金を下さい」
と言ってるのを聞いたルクアとルビーが顔を見合せる。
「お金?」
ルクアが聞き間違えじゃないかと思い女の子に聞き返す。
「うん」
さっきまで気絶してたとは思えないぐらいの笑顔だ。
「ルビー行こうか」
「うん」
二人は女の子をジト目で見て置き去りにしようと歩きだした。
すると女の子がルクアの足を掴み必死な顔で
「さっきのは冗談です。水と食べ物恵んで下さい。」
「しょうがないな」
と言いながらしゃがみこみ、寝たまんまの女の子にパンと水を渡してあげる。
「起きるの手伝ってほしいかな」
女の子が笑顔を向けてくる。
「嫌だよお金とられるし」
さっきの仕返しに心底嫌そうな顔をして嫌みを言ってみるルクア。
「さっきのは冗談って言ったでしょ」
少し目が泳いでる。
(さっきのは本気だったな)
結局は身体を起こして支えてあげるルクア。
「これでいいか?」
「ありがと助かるわ」
「なんで倒れてたんだ?」
「疲れてお腹が減って動けなくなったの、という事で先パンと水食べていい?」
「そうだな」
よっぽどお腹が減ってたのだろう、頬ばりながら凄い勢いで食べていく。
最後に水を飲んで落ちついたのか、女の子から喋りだした。
「私の名前はユキっていいます。助けてくれてありがとう。」
「俺はルクア」
「私がルビーだ」
ユキと自己紹介した女の子は綺麗な白髪ショートヘアーで整った綺麗な顔をしている。
「それで何で倒れてたんだ?」
「ごめん、理由は言えない」
女性には言えない秘密が一つや二つはある物なのよとレタスから教えられてるルクアは深くは追求しない。
「そっか、じゃあ~また倒れないよう気をつけろよ」
「うん、ありがとう、ホント助かったよ」
手を振りながらルクア達が進む道と同じ方向に走って行った。
「なんだったんだろうね?」
「さぁ~な、俺達も行くか」
そう言うと二人も歩きだした。
一時間程歩くと町についた。もう夕暮れ時だ。
ガンバレ男爵領地と書いている看板がある。
「寂れた町だな、ざっとみ二千人規模ぐらいの町か」
「そんなの見ただけでわかるんだ」
と感心するルクア。
「そっかルクアは初めての町だな、だとするとさっき会ったユキって子も私達以外では初めて会った人になるんだな」
「言われてみればそうだな、何も知らないからルビーがついてきてくれて良かったよ」
「確かにそうだな」
そう言われ嬉しいそうにニカッと笑顔になるルビー。
「ルビーはこの町には来た事あるのか?」
「私はないよ、町に行くならギルドの南にある大きな町にいくな」
そんな話しをしながらしばらく歩いていると二人組の男に呼びとめられた。
「この辺りで白髪ショートヘアの女性をみかけなかったか?」
すぐに誰の事かピンときたルクアだが
「見てないな、何かあったのか?」
「この町の領主邸に盗みに入った、義賊を名乗る不届き物だ」
「へぇ~そんなのがいるんだ、また見かけた時は通報するよ」
「そうしてくれ」
それだけ言って走って行った。
「どうしてさっき会った事言わなかったんだ?」
「そりゃ男性より女性の味方なだけさ」
ルビーが鼻でフッと笑い
「で、ここからどうするんだ」
「とりあえず探しだして話しを聴くか」
「それでどうやって探す気だ?」
「この暗さでも、ルビーなら見えるよな?
」
「見えるけど」
「じゃあ~ジャンプして屋根の上を見てくれ」
「はいよ」
そう言うと、ルビーがピョンと軽くジャンプをした、するとあっという間に二十五メートルぐらいの高さまで到達した。
「相変わらず凄いな」
くるっと一周町を見下ろしたルビーが降りてきて、ストンとほとんど音も立てずに軽快に着地した。
「見つかったか?」
「いたぞ、こっちだ」
今いる通りを三十メートル程進み、脇道に入り五十メートル程進んだ所にあった、木造の一階建ての家の屋根にいるらしい。
ルクアは見えない手を階段代わりにしてあがり、ルビーはジャンプしてあがった。
ユキは三角屋根のてっぺんの部分に身を低くして隠れていた。
よっと軽く手を上げ歩み寄っていくルクア。
「見つけたぜ義賊のユキさん」
義賊と言われ身をおこし警戒するユキ。
「ルクアとルビーじゃない先ほどぶりね、私を捕まえにきたのかしら」
「そんな事しないさ、俺は正義の騎士隊員様じゃねぇからな」
「じゃあ~何のようかしら?」
そっけない態度のユキだ。
「何で義賊なんてやってんのさ」
「この国の貴族が腐ってるからよ」
「そうなのか?」
国の事何て知らないルクアがルビーを見る。
「百何年か前までは良い国だったと思うけど今は知らないわ、最近この国に来てなかったし」
「百何年前ってルビーは今いくつなの?」
ユキの問いかけに何でもないかのように千を超えてから数えてないと言うルビー。
それを聞いて驚くユキに更に捕捉するようにルクアがルビーは龍種なんだよと教えてあげる。
ユキ「へぇ~龍種か、珍しいね」
ユキ(龍種でもあそこまで完璧に人化できるのは少ないはずよね)
内心もの凄く驚いてるが、どうにか顔を引きつらす程度で耐えたユキ。
「少し話しがそれたわね、それで用はそれだけかしら?」
ルクアが少し考える素振りをしてから
「その仕事俺らも手伝うよ」
ウン、ウンと何故か満足気に頷いてるルビー。
(前世のルクアも気に入らない貴族から金品巻き上げて同じような事してたな)
「本気で言ってるの?」
「本気も本気ユキ一人じゃ無理そうだしな」
「じゃあ~手伝って貰おうかしら」
そう言ったユキはいざとなれば囮に使えそうだと悪巧みをしている。
「おう!任せとけ」
ユキの悪巧みには気付かず自信満々に胸をはるルクア。




