思いだしてほしい
ルクアが戻って来た日の早朝には、探しに出ていたメンバーも話しを聞きつけ、皆が集まり丸一日宴会が続いた。
次の日の早朝皆ギルド内のテーブルや、床やらで潰れて眠っている。
レタスがルクアを抱えたまま、カウンター内の背もたれ付きのイスでだらしない顔でヨダレを垂らしながら寝言を呟いている。
「お師匠様もう何処にも行かないで」
ルクアを抱える腕に力が入りビックリしたルクアが目を覚まし、泣き出した。
その声で酔いつぶれてた皆が目を覚まし受付カウンターに集まり、ルビーが覗き込み声をかける。
「どうしたんだ」
レタスもどうしたのだろうかと、首を傾げながら立ち上がりあやしている。
「お腹減ったのかな?どうしたのかな?」
カウンターに集まった内の一人、気の強そうな顔だが雪のように白く美しい顔立ち。
髪は銀髪で腰ぐらいまで伸びており、体型はオウミに負けず劣らずスラッとしている。
名前はガウだ。
そのガウが鼻をピクピク動かしている。
「多分お漏らししたからじゃないか、臭うぞ」
言われてレタスが紙オムツを脱がしてみたら、紙オムツに大きい方と小さい方を先程ビックリした時にお漏らししたみたいだ。
お漏らしした紙オムツを脱がしたら、ルクアが泣き止みオムツを新品に代えようとしたが、ギルドには代えのオムツがなかった。
「私がオムツを買ってきます」
と言いピカリンが出掛けて行った。
「私が服とか必要そうなの買いに行ってくるね」
と言ってモクリンも出掛けて行った。
オムツがないので、カウンターの上ですっぽんぽんの状態で寝かされているルクア。
ヒメが近付いてきてルクアの小さな手に人差し指をあててみた。
するとルクアが小さな手で指を握ったのだ。
「町で聞いた通りだ、握ってくれた、可愛い」
それを見たガウさんも真似をして人差し指をだしたら小さな手で握ってくれた。
「あのルクアを可愛いと思う日がくるとは」
そういいながら目を細め口元を緩ませ優し気な表情で空いてる方の手を使ってルクアの頭を撫でた。
ルクアはキャッキャキャッキャと喜んでいる。
その様子をみた皆が私も私もと代わる代わる指をだして行った。
ピカリンが帰ってくる頃には握り疲れたのか眠ってしまっていた。
「買ってきたぞ」
「寝てるから」
レタスが人差し指を立て口元でシーをしながら、小声で伝えた。
モクリンも服やらおしゃぶり、オモチャ等買って戻ってきて、同じくレタスにシーされていた。
ルクアが寝ついてしばらくたったあと、女性が一人思いたったように立ち上がった。
見た目は優し気な雰囲気を纏っており、髪が長く身長はモクリンと同じくらいで、髪色は茶色に所々緑色が入っている。ギルドでモクリンと一、二位を競う母性溢れる女性キミコだ。
「そうだ、私がベビーベッドを作ってあげる」
キミコがカウンター横の壁際に手をかざすと、木が生えてきて、白い花が咲きベッドの形になっていく。
あっというまにベッドが出来上がりルクアを寝かせる。
「これで、レタスとルクアもゆっくりできるんじゃない」
「そうだね、ありがと」
レタスがニッコリ微笑むのである。
ルクアも眠り、皆が落ち着いたのを見てレタスが話しだした。
「お師匠様はお師匠様だけど、あの頃のお師匠様じゃないんだよね」
「そうね、姿形は違うかもだけど、ルクアはルクアよ」
オウミも思う所があるみたいだ。
そんな二人の言葉に何処か悲しげな雰囲気がギルドに漂う。
そんな雰囲気を見てルビーが明るくしようと思い、先程の言葉に戸惑いながらも声をかける。
「ルクアが500年ぶりに帰ってきたんだ、今は喜ぼうぜ」
「うん」
レタスは返事はしたもののまだ浮かない表情だ。
そんなレタスが気になるルビー。
「どうしたんだよ、レタス」
「お師匠様は確かに帰ってきてくれたけど、あの約束は覚えてるのかな、私達との思い出も」
レタスはさらに悲しげな表情をみせる。
その時ギルドの中央が光一人の男性が現れた。
髪は金髪のボサボサ頭。
ちょっと適当そうで軽薄そうな雰囲気だ、その男が片手を上げ挨拶でもするかのような口調で話しかけてきた。
「やぁやぁ皆元気かね、まぁ~不死だから元気か」
この男は創造神だ。
「創造神が今さら何のようだ」
ルビーが怒った口調で睨みつける。
他の皆も創造神を睨みつけている。
「おやおや産みの親なのにつれないね」
わざとらしく悲しい振りをする創造神。
それをみたルビーはもう話したくないのか、プイっとそっぽを向いた。
それを見たオウミが、話しを引き継いだ
「そうね、貴方は確かに産みの親、ほんの少しだけは感謝してるわ」
その言葉を聞いた創造神は両手をあげ大仰し態度で、
「そうか感謝してくれてるか、嬉しいね」
そんな創造神の態度にオウミは立ち上がり、腕を組み苛立ちを隠さぬ言い方で告げた。
「フン、わざとらしい、それで何の用なの?五百年も私達を待たせて」
「それは仕方がなかったんだよ、彼の魂に合う器がなかなかなくてね、ちなみに彼は昔のルクアの妹の血筋の産まれだよ、君達も妹にはあった事あるだろ」
それを聞いた皆は心の中で思った、五百年かかったがルクアの血筋か、それを聞いたら余計愛おしくなるなと。
「フーン、正確には妹だけど血は繋がってるし細かい事は気にしないか」
少しニマニマしている創造神である。
「勝手に心読むんじゃねぇよ」
創造神ほどになると心を読む事ができる。
自分の心が読まれた事がわかり照れ隠しで顔を紅くして怒るルビー。
「それと君達が知りたい事だけど、彼の過去の記憶が戻るかは正直わからない、それと私はちゃんと約束は守るから信用してくれていい」
創造神の話しを聞いた皆は険しい表情をしている。
オウミも立って腕を組んだまま答える。
「約束守るってのは信用してるわ」
「では私は帰るとするよ、あっそうだ彼の成長楽しみにしてるといいよ」
光につつまれながら、忘れていたのか最後にそれだけ伝えて消えていった。
創造神が消えてしばらく沈黙が続いたが、泣きそうな顔でルビーが喋りだした。
「創造神が約束は守るって言ってたな、きっとルクアも約束を思いだしてくれるよな」
「ルクアは私達との約束破った事ないでしょ」
「うん、そうだな」
オウミが微笑みルビーを慰めてあげる。
ルビーは瞳を潤ませ口元をきゅっと結び少し無理しながらも返事をする。
「だから私達の使命や約束については秘密にしましょう、これからのルクアの人生どうなるかわからないけど、重荷を背負わせたくないの」
オウミが瞳に力を込め決意に満ちた表情をする。
「そうだね、そうしよ、私もルクアなら約束思い出してくれると信じてるから」
「私もルクアを信じて待つ」
「私も待ちます。」
レタス、ルビー、ピカリンが口元を引き締め力のこもった眼差しで決意を示した。
三人に続き皆からも信じて待つと言う言葉が聴こえてきた。
「これだとルクアが約束を思い出した時また怒られちゃうね」
と微笑んでみせたモクリン。
「そうだな、その時は皆で怒られような」
さっきまで元気なかったルビーが明るく笑ってみせた。
ルクアが戻ってきた、創造神も500年振りに姿を見せた、久しぶりにあの時の約束の話しをしたら、前世のルクアの最期を看取った時の事を皆が思いだした。決して忘れていた訳ではないが、あまり思い出したくない悲しい思い出、大事な約束をした思い出。




