伯爵領でトラブル発生
ルクア、ルビー、ユキの三人はお昼休憩をした湖から六時間程歩き夕暮れ時に次の町ツントロン伯爵領についた。
伯爵領というだけありそれなりに栄えており人も沢山住んで居そうだ。 伯爵領に入る為には身分証が必要らしく三人は門から離れた茂みの中に身を隠しどうするか話し合いをしていた。
「俺は身分証とか持ってねぇしどうっすかな」
「私も持ってないぞ」
「私もないわよ」
「じゃあ~壁を乗り越えて忍びこむしかねぇか」
ルビーとユキがルクアの提案に賛成し、町には壁を乗り越えて忍びこむ事になり、もう少し暗くなってから実行する事になった。
あれから一時間ほど待ち辺りが暗くなってきたので行動に移す三人。
人影がない事を確認し壁まで近付いた、壁の高さは五メートルぐらいだ、普通の人なら梯子でも使わなければ侵入するのが難しい高さだろう。というより普通の人は身分証を持っているので普通に門から入るだろう。勿論町から出る時も身分証は必要だ。
万が一不法侵入が見つかった場合厳しい罰則があるのでそこまでして町に入る理由もないが、町を観たいルクアと人間の決まり事等あまり気にしないルビーと町でご飯を食べ宿に泊まりたいユキは忍びこむという選択肢しか持ち合わせていなかった。
壁の高さが五メートルあろうが三人には関係ない、ルビーが壁をひょいっと飛び越え、ルクアは白の心の見えない手で階段を造り、ユキはそれに便乗し軽々と忍びこむ事に成功した。
壁を乗り越えた先は飲み屋街の裏道みたいなので、脇道を通り賑やかな声がする方に歩いて行った。
人通りも多く飲み屋も軒を連ねており、その光景を目にしたルクアは嬉しそうに目を輝かせている。
「町ってこんなにも人がいて店も沢山あって賑やかなんだな」
「そっかルクアは大きな町は初めてなのね、美味しい飲み屋が沢山あるから見てまわろうか」
ユキの提案でお店を見てまわる三人、飲み屋街には冒険者や商人が多くいるみたいだ。
歩きながらあれこれユキが説明をしてくれていると前から冒険者が三人歩いてきて声をかけてきた。
「そこの可愛いお二人さん俺達と飲まないか」
所謂ナンパと言うやつで、ルクアは居ない者として扱われている。
「そういうのは間に合っているのでけっこうよ」
ユキが断りをいれるが、道を開けない冒険者達
「その男の事か、そんな男より俺達飲もうぜ」
そう言いながら、冒険者の一人がニタニタしながらルビーに手を伸ばしてきた。
腕を組んで立っていたルビーは男の手をかわし睨みつけた
「聴こえなかったのかお前達に用はないと言ったのが」
ルビーのあまりの迫力に尻餅をつく冒険者達、それを横目にルクア達は冒険者を無視して去っていく。
その後しばらく歩いていると、肉が売りの美味しいそうな飲み屋を見つけた。
中に入ろうとしたその時、前から黒い服を着た男が伯爵家の騎士だろうか、五名ほどの男に追われているのが目に入った。
追われている男をよくみると服の至る所が破れており、切り傷らしいものが多数ついている。
「あの男は騎士から拷問を受けている途中に逃げだしたのかしら」
ユキが走ってくる男を見ながらそう言っている。
「関わり合いにならない方がいいわ、無視してさっさとお店に入りましょ」
ユキがさっさとお店に入ろうとした時
「おい!そこのお前達その男を足止めしろ」
騎士達から声がかかる
普通の人がきいたら無茶な事だと思うだろう。
三人が顔を見合せルクアがどうすると言った時にはボロボロの男が横を通りすぎ、店の角を曲がり脇道に入って行った。
ルビーはその男が通りすぎる時にある事に気がついたがルクアには言えない事なので黙っておく事にした。
騎士達が息を上げながらルクア達の下にやってきた。鎧をつけており明らかに重そうだ。
「お前達冒険者じゃないのか、何故協力しなかった」
威圧的な態度で協力するのが当たり前かの様な物言いだ。
ルビーが鼻で笑い小馬鹿にするような言い方で
「お前らに協力する義理なんかないからな」
と言い騎士を睨みつけた。
騎士も一歩さがりながらも睨み返してくる。
「お前ら騎士にそんな事言ってただで済むと思うな」
ルビーに掴みかかろうとするが、ルビーに足を払われずっこけてしまった。周りで見てた人達から笑いがおきる。転かされた騎士は怒りと恥ずかしさで顔が真っ赤だ。
周りに人が集まってきたので、これ以上騒ぎにするのはマズいと思った騎士は、ルクアの首から下げているネックレスに目をつけた。
「お前ら今日の所はそのネックレスを伯爵様に献上する事で許してやろう」
そう言って騎士がネックレスに手を伸ばしてきた。その瞬間ルビーに手を捕まれ捻られた。
「このネックレスはお前らが触って良い物ではない」
ルクアが今までに見た事ないぐらいルビーが怒っている。
ルビーの怒りに触れた騎士達は全員がガタガタと震え顔を真っ青にして逃げだした。ルビーが掴んでいた手を離し男を解放すると、男は震えながらも
「お前ら伯爵様への献上品を断るとはどうなっても知らないからな」
それだけ言い残して去って行った。
男達が去って行くのを見送った後ユキがネックレスに目をやり、まだ周りに人がいるので人目を気にしながらルクアとルビーに尋ねた。
「前から気になっていたけど、このネックレスってオリハルコンよね」
ルクアはえっ?と驚いた顔をしてルビーを見た。
ルクアも本で見てオリハルコンが凄い物だとは知っていたが、まさかネックレスがそうとは思っていなかった。
「そうだ、そのネックレスはオリハルコンで出来ている」
そこで一旦言葉をきり
「とても大事な物だ、誰であろうとこのネックレスは渡さない」
ルビーの真剣な表情を見て二人は息を呑む。
周りにいた連中にも聞こえていたのか、驚きの表情をするがルビーの顔を見て皆そそくさとその場を後にした。
ルクアがオリハルコンと知り納得したのか
「じゃあ~あいつらもこれがオリハルコンとわかったから手にいれようとしたんだな」
「そうね、オリハルコン独特の黒金色をしているから知っている人がみれば一目でわかるわ」
ユキが返事をしながらオリハルコンの特徴も教えてくれた。
そんな話しをしていると、さっきの男がお店の角の路地から出てきた。
「さっきはありがとな助かった」
「まだそこにいたのか」
ルクアが驚いている。
ルビーが出てきた男を見つめながら
「何があったのか教えてくれないか」
と言葉をかけた。
「わかった話しを聞いてくれ」
そう言った男とルクア達三人は、入ろうとして足止めをくらっていたお店に入って行った。




