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 トーチカさんは、魔石を削って出た粉末を無価値なものとして捨てようとしていた。

 わたしはそれが間違いであることを証明するため、自ら作業台の前に立つ。


「リオン様。いつものようにスキルを使用して、新しいものを作るのではないのですね」


 アナが小首を傾げ、わたしの手元を覗き込んでくる。

 ふわりと甘い香りが漂い、彼女の頭上にある幻の犬耳が、不思議そうにパタパタと動いていた。


 現在わたしが立っているのは、セフィアさんが取り仕切る商会ギルド内の作業場だ。

 油と鉄の匂いが立ち込めるこの場所で、ドワーフたちの視線が背中に突き刺さるのを感じる。


「そうだね。スキルを使ってしまうと、今回の意図から外れちゃうし」


 わたしがあくまで示したいのは、これが無価値な残り滓ではないという事実だ。

 【リサイクルショップ】で一瞬にして加工してしまえば、ただわたしのスキルが規格外だという話で終わってしまう。


「ふんっ。できるもんなら、やってみやがれってんだ……げほげほっ」


 背中を丸めて咳き込むトーチカさんを尻目に、わたしはキリカの腰に差してある魔剣へと視線を向けた。


「グーラ、起きてる?」


『無論だ。どうしたのじゃ?』


「桜香の炎を出せる?」


『うむ。保存してあるぞ。前に暴走したときに、食っておいたのじゃ』


 グーラはあらゆるものを喰らう『暴食の魔剣』だ。

 以前に放たれた攻撃を喰らい、そのエネルギーを保存しておくことができる。


 わたしは小さく頷き、石の器に魔石の削り粉をたっぷりと流し込んだ。

 そのまま、熱気を放つ鍛冶用の炉の前へと歩み寄る。


「お願い、グーラ」


 キリカが鞘から魔剣を抜き放ち、炉めがけて切っ先を向ける。

 その瞬間、刀身から桜香の放つ強力な鬼の炎が凄まじい勢いで吐き出された。


 ごおぉぉっ、という重低音とともに、炉の中が高温の赤い炎で満たされる。

 肌を焼くような強烈な熱波が押し寄せ、わたしは思わず目を細めた。

 そこへ、粉末の入った石の器を静かにくべた。


「な、なんでえ……溶かすっていうのかっ。けど魔石を無闇に熱しても、炭になるだけだぞっ」


 トーチカさんが杖をつきながら、驚いたように身を乗り出す。


「うん。そうだね」


 わたしは額に滲む汗を手の甲で拭いながら、炎の量を慎重に調節してじっくりと炙っていく。

 服の下に熱気がこもり、息苦しいほどの暑さに包まれるが、視線は決して器から外さない。


 やがて、しばらくの時間が経過した。

 火ばさみを使って、慎重に器を取り出す。

 すると、並々と注がれていた粉末は跡形もなく消え、器の中はドロリと輝く高温の液体で満たされていた。


「炭化してねえだと……っ」


 トーチカさんが目を見開き、愕然とした表情で数歩後ずさる。


「うん。適当に熱したら炭化しちゃうけど、温度を徐々に調節していけば、炭化せず液状化するんだ」


 なんでこんな知識を知っているかというと、領地にいる間に色々な専門書を読んで勉強を重ねていたからだ。


「え、液状にしたからなんだってんだっ。これで終わりか?」


 トーチカさんが信じられないものを見るような目で、震える声を絞り出す。


「まさか。こっからだよ」


 わたしはドロドロに溶けた魔石の液体を見つめながら、ふっと口角を上げた。


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ガラスでしょうかね
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