88.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
黒豚牧場が本格的に稼働し始め、拠点の食生活は劇的な向上を見せていた。
分厚くスライスされた黒豚の肉は、焼けばジュワッと上質な脂が溢れ出し、特製豚汁に入れれば濃厚なコクを生み出す。
領民たちの顔には常に笑顔が絶えず、誰もがこの安定した食糧供給を喜んでいた。
しかし、生き物を飼育する上で、絶対に避けては通れない深刻な問題が浮上していた。
それは、毎日生み出される大量の「糞」である。
丸々と太った立派な黒豚たちは、モリモリと大量の餌を食べ、そして当然のようにモリモリと排泄をする。
豚舎の周辺には、ツンと鼻を突く独特のアンモニア臭が立ち込め始めていた。
これをこのまま放置すれば、悪臭によって領民たちの生活環境が悪化するだけでなく、ハエなどの害虫が大量発生してしまう。
最悪の場合、疫病の蔓延を招き、せっかくの拠点が壊滅する恐れすらあった。
「うぅ、少し臭いがきつくなってきましたね」
エプロン姿のアナが、可愛らしく鼻をつまみながら顔をしかめる。
彼女は幻の犬耳をペタンと寝かせ、困ったようにわたしを見つめてきた。
「リオン様。あの大量の糞の処理なら、リオン様のスキルで一瞬にしてしまえばよろしいのでは?」
アナが不思議そうに首を傾げて提案してくる。
確かに、わたしの【仕様変更】を使えば、あの糞の山を無臭の化学肥料へと一瞬で変換することは可能だ。
労力も時間もかからず、最も効率的でスマートな解決方法に思える。
「それじゃダメなんだ。今回は自分たちの手で『堆肥』を作るよ」
わたしは首を横に振り、真っ直ぐにアナの目を見て告げた。
「たいひ、ですか?」
「そう。糞に落ち葉や藁、それに生ゴミなんかを混ぜて発酵させて、栄養満点の土を作る自然の仕組みのことさ」
わたしはそう言うと、豚舎の裏手に設けた広大な作業スペースへと、アナや手の空いている領民たちを案内した。
そこにはすでに、かき集めた黒豚の糞と、白骨樹海から切り出してきた枯れ葉、それに厨房から出た野菜のクズなどがうず高く山積みにされている。
生々しい糞の臭いと、湿った土の匂いが混ざり合った、なんとも言えない重たい空気が辺りを覆っていた。
「まずは、こうやって糞と植物性のゴミを、交互にミルフィーユみたいに重ねていくんだ」
わたしは自ら長靴を履き、大きなクワを握って糞の山にズボッと突き刺した。
ドロリとした重たい泥のような感触が、柄を握る腕にズッシリと伝わってくる。
それらを藁や落ち葉と均等に混ぜ合わせるように、えっちらおっちらとひっくり返していく。
「そして、これが一番重要な作業だ。『切り返し』って言うんだよ」
「切り返し、ですか?」
「うん。堆肥を作ってくれる微生物には、新鮮な空気つまり酸素が必要なんだ。だから定期的にこうして山を崩して、底の方にまで空気を混ぜ込んであげる必要があるんだよ」
わたしは額に滲んだ汗を手の甲で拭いながら、クワを振り下ろし続けた。
領民たちもわたしの真似をして、スコップやクワを手に取り、見よう見まねで切り返し作業を手伝ってくれる。
ザクッ、バサッという土を返す音が、規則正しいリズムで響き渡った。
「ほら、アナも手をかざしてみて。少し熱を感じるだろ?」
「あっ、本当です! 中からモワッとした温かい空気が」
わたしが数日前に仕込んでおいた別の堆肥の山に手をかざさせると、アナは驚いたように目を輝かせた。
発酵が進むと、微生物が活発に活動する熱で、堆肥の温度は六十度から七十度近くまで上昇する。
この自然発生する熱が、糞に含まれる有害な病原菌や、雑草の種を完全に死滅させてくれるのだ。
発酵が完全に終われば、あの不快なアンモニア臭は嘘のようにすっかり消え去る。
まるで雨上がりの森の奥深くを歩いている時のような、ふかふかで香ばしい土の匂いへと変わるのだ。
その完成した堆肥を西側農園の畑に撒けば、土壌そのものが豊かになり、さらに美味しい野菜を育てることができるようになる。
「ふぅ。やっぱり手作業だと、結構な重労働だね」
わたしがクワを置いて肩で息をしていると、アナが真っ白なハンカチを取り出し、わたしの汗を優しく拭ってくれた。
ふわりと、アナの体から甘いフローラルな香りが漂い、鼻腔をくすぐる。
「本当に大変な作業ですね。やはり、リオン様がスキルでパパッとやってしまえば、一瞬で終わるのに」
アナが幻の尻尾をペタンと下げて、心配そうに眉を下げる。
わたしはタオルで首元の汗を拭き取りながら、明るい声で答えた。
「わたしが目指しているのはね、わたしがいなくても運営できる領地なんだ」
「リオン様が、いなくても?」
アナがオウム返しに呟き、きょとんとした顔で首を傾げる。
わたしはゆっくりと頷き、領民たちにも聞こえるように少し大きな声で言葉を紡いだ。
「わたしの【リサイクルショップ】のスキルは、確かに便利で強力だ。何でも一瞬で解決できる」
わたしは一度言葉を区切り、真剣な表情を作る。
「でも、それに頼り切ったシステムは、スキルを持つわたしがいなくなれば、その瞬間に崩壊してしまう」
領民たちが自分たちの手で考え、働き、資源が循環していく仕組みを作らなければならない。
ゴミを拾い、豚を育て、出た糞を堆肥にして畑に還し、育った野菜を豚や人間が食べる。
その持続可能でサステナブルなエコサイクルこそが、真の国作りの基盤だとわたしは考えている。
「わたしもただの人間だからね。いずれ寿命が来れば死んじゃうし。だからこそ、みんなだけで未来永劫回せる仕組みが必要なんだよ」
わたしは深刻になりすぎないよう、あっけらかんとした笑顔で言い放った。
しかし、その言葉を発した直後だった。
周囲の空気が、ピシッと音を立てて凍りついたように冷たくなった。
「し、死ぬ?」
アナの顔から、スッと全ての表情が抜け落ちた。
ハイライトの消えた虚無の瞳が、じっとわたしを見下ろしている。
ゾクリと背筋に強烈な悪寒が走り、わたしは思わず数歩後ずさった。
「嫌です。死なないでぇぇぇっ! わぁぁぁぁぁんっ!」
次の瞬間、アナが大粒の涙をボロボロとこぼしながら、凄まじい突進力でわたしに飛びかかってきた。
「ぐえっ!」
アナの豊満で暴力的な胸に顔面から激突し、そのまま強烈な力で抱きしめられる。
骨が軋むほどのフルパワーのハグだ。首の骨が折れそうになる。
「どうしたさね!? 主が死ぬ!? ならわたしも今すぐここで腹を切ってお供するさね!」
「主よ、不老不死の秘薬を探すための遠征軍を直ちに編成します! まずは邪魔なエルフの里を焼き払いましょう!」
騒ぎを聞きつけたガラやエリーが、血相を変えてすっ飛んできた。
彼女たちの目も完全に血走っており、理性のタガが完全に吹き飛んでいる。
「もうずっと私が地下室に閉じ込めて、一生お守りしますぅぅ! ご飯も私が毎日口移しで食べさせますからぁぁ!」
「ちょ、ちょっと待っ! 痛い! 苦しいってば!」
さらにキリカや桜香までもが雪崩れ込んできて、わたしは完全に身動きが取れなくなってしまった。
四方八方から押し付けられる極上の柔らかさと、むせ返るような甘い香りの奔流。
普通なら男の夢のご褒美なのだろうが、今の彼女たちは完全に病みモードに入っており、加減というものを一切知らない。
「むぎゅぅぅぅっ! うぶぶぶぶっ!」
顔が完全に双丘の谷間に埋没し、新鮮な酸素が全く供給されない。
持続可能な領地を作り上げる前に、わたしの命がここで尽きてしまう。
わたしはヒロインたちの重すぎる愛と柔らかい凶器の山に埋もれながら、徐々に遠のいていく意識を必死に繋ぎ止めるのだった。
【おしらせ】
※4/20
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