83.
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
ゴミ袋作戦は、予想以上の成果を上げていた。
領民たちが楽しそうにゴミを拾い、袋に詰め、口を縛る。
ポンッという音と共にゴミが消える。
その爽快感がクセになるのか、昨日まで平気でポイ捨てしていた連中が、今日は進んでゴミを集めている。
人間、楽しければやる。
シンプルだけど、真理だと思う。
街がみるみる綺麗になっていくのを眺めながら、わたしは満足げに腕を組んだ。
そのときだった。
「リオン様」
エリーがわたしの袖を引いた。
手には、指定ゴミ袋。
「なに、エリー」
「この袋……用を足すのにも使えますか?」
わたしは固まった。
「……え?」
「口を縛れば消えるんですよね? なら、その……いろいろと便利かと思いまして」
「だ、ダメだよ!? 衛生的にも精神的にも、いろんな意味でダメだよ!」
全力で却下した。
エリーは「そうですか」と残念そうに袋をしまった。
なんで残念そうなんだ。
待て、落ち着け。
エリーが変なことを言い出したということは、それはつまり。
「……ねえ、エリー」
「はい」
「みんな、今どこでトイレしてるの」
「その辺で」
一言だった。
清々しいくらい一言だった。
わたしは空を仰いだ。
そうか。
そうだよね。
廃棄都市だもんね。
トイレなんてあるわけなかったよね。
「……トイレ、作らなきゃ」
「トイレ、ですか?」
「個室があって、水で流せる、ちゃんとしたやつ、かな」
エリーがぱちぱちと瞬きをした。
「個室……ですか。なぜ個室が必要なんですか?」
「えっ、そりゃ……プライバシーのためだよ。恥ずかしいじゃない」
「恥ずかしい?」
エリーは首を傾けた。
本気でわからないという顔をしている。
「確かに……個室があれば、その……いかがわしいことをするにも、都合がよさそうですね」
「そっちの方向には行かないでよ! 普通にトイレを使うためだよ!」
なんでそっちに飛躍するんだ。
元魔王の発想は理解できない。
そこへ、廊下の方からパタパタと足音が近づいてきた。
「リオン様! お呼びでしょうか!」
勢いよく扉を開けて飛び込んできたのは、アナだった。
うちのメイド。
いつも元気で、いつも少しズレている。
「呼んでないけど……まあいいや。アナ、王都ってトイレはどうしてたっけ」
「トイレでございますか!」
アナはびしっと背筋を伸ばした。
「王都では、スライム式トイレが主流でございます!」
「スライム式?」
「はい! 便槽の中にスライムを飼っておりまして、用を足すとスライムがすべて食べてくれる仕組みです! 臭いもなく、詰まりもなく、大変優秀なシステムでございます!」
なるほど。
この世界らしいやり方だね。
「スライムに食べさせてるのか……」
「さようでございます! ただし、スライムの機嫌が悪いと食べてくれないこともあるそうで、その場合は大惨事に——」
「わかったわかった、十分わかったよ」
手を挙げてアナを止めた。
スライムの機嫌で大惨事になるトイレは困る。
「うちは水洗にしようかな。個室で、ちゃんと仕切りがあって、清潔なやつ」
「個室……」
アナが目を丸くした。
何かを考えている。
考えているアナは、だいたい良くない方向に考えている。
「個室にするということは……トイレで、その……いかがわしいことが……」
「なんでそうなるの!?」
エリーと全く同じ結論に至るな!
この拠点、トイレに対する概念がおかしい!
わたしは深呼吸をした。
「いいかな、二人とも。個室トイレはね、ただ用を足すためのプライベートな空間だよ。いかがわしいことをするためじゃなくて、清潔に、快適に、人間らしく用を足すための場所なの。わかった?」
「「……はい」」
二人が神妙な顔で頷いた。
わかってるんだかわかってないんだか。
まあいいや。
とにかく、トイレを作ろう。
この廃棄都市に、まともなトイレを。
わたしは袖をまくって立ち上がった。
「よし、【市場調査】で使える廃材を探そう。水洗個室トイレ、今日中に試作品を作るよ」
「リオン様がその気になると、いつも街の形が変わるんですよね」
エリーがしみじみと言った。
「褒めてるの?」
「褒めてます」
アナは既にメモ帳を取り出して、何かを書き込んでいた。
「個室トイレ……用途は……清潔かつ快適に……人間らしく……」
「そうそう、そういうこと」
「……いかがわしいことは、別の場所で……」
「最後の一行消して」
廃棄都市に、今日も平和な朝が来ていた。
【お知らせ】
※3/17(火)
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