マーカイルが明かす、この世界②
「それで、お前は一体どうするつもりなんだ? 全員を侍らすつもりは無さそうだが、エバーンズとヒューの二人をどうするんだ」
「うっ……それは…………」
あたしは正直に自分の思いをカーマイルに話した。元から婚約者の居る相手とは関わらないつもりで居た事、一番好きだったのはカイラード殿下だけどパールルーシャ様から奪うつもりは無い事、そしてエバーンズとヒューに対して恋愛感情を持てないでいる事。
「実際に貴方達と関わってみて改めて分かったの。ゲームの世界で見ていた事と、こうして現実世界として体験するのとでは全く別物なんだって。確かにカイラード殿下の事は前世で好きだったけど、今は全くそんな気持ちは無いし……」
「少々おかしな世界にはなっているが、おれ達からしたら全てが現実世界の出来事だからな」
「うん。だから余計に、あの二人には気を持たせてしまう事をしてしまって後悔してる。きちんとお詫びして、断ろうと思ってる。ただ、問題なのが……」
「マジャナン侯爵か」
「うん……」
エバーンズは話せば分かってくれるとは思うけど、父親のマジャナン侯爵は聖女となるであろうあたしを囲い込みたい筈だ。だからこそ、こうして噂を広めてきている。果たして大人しく引き下がってくれるのだろうか。
カーマイルは難しい顔をして暫く考え込んみ、そしてポツリと呟いた。
「…………他に婚約者が居ればいいんだよな」
「え?」
「おれが……お前の婚約者になってやろうか?」
「えっ……は? ……へっ!?」
言っている意味がよく分からずカーマイルの顔をガン見してしまった。
「要はお前が他の奴と婚約してしまえば、侯爵も諦めざるをえないだろう?」
「で、でも、マジャナン家の方が家格が上だから問題になるんじゃ……」
「おれの家は伯爵家だが、代々芸術家として王家とは懇意にしてきているんだ。侯爵家といえども、そう簡単にあしらえる家じゃない」
「そ、そうなの?」
ゲームの中では分からなかった内情に驚く。そんなに凄いんだ……ロナルド伯爵家って。
「あ、でもご両親から反対されない? ぽっと出の男爵令嬢と婚約だなんて……」
「それこそ、聖女の肩書が生きて来るじゃないか。むしろ喜ばれる筈だ」
そんなものなのだろうか……。やっぱり聖女って特別なんだね。
「ね、ねぇ、マーカイル様はそれでいいの!? 別にあたしの事好きでもなんでもないのに婚約だなんて」
「どうせ一年後にはまたループする。問題ない」
「あ……そっか。そうだよね、期間限定だもんね」
そうだった。この世界は一年でループを繰り返しているんだった。例え婚約しても婚姻する前にリセットされてしまうんだわ。何故か胸の奥がチクリと痛んだ気がした。
「まぁ、安心しろ。偽りの婚約者だが、婚約者らしい振る舞いはしてやるから」
「は、はぁ……」
なんか思いもよらぬ展開になってきたわ……。まさかマーカイルと婚約する事になろうとは。
「あの……どうして、あたしを手助けしてくれるの? マーカイル様には何の得にもならないと思うんだけど」
「……さぁ、何故だろうな。今までと違うお前なら、このループから抜け出せるんじゃないか……そんな気もしたりな」
「え……」
「ふっ。あまり気にするな、ただの気まぐれだ」
そう言って唇の端を持ち上げて微笑むマーカイルにドキッとしたのは内緒だ。




