12.思わぬ収穫
——ジェフリーを見つけた日から、二日後の夜。
屋敷中が寝静まるまで待って、私とアランは集落近くの岩山まで馬を走らせた。
「タチアナ、準備はいいか? 俺のそばから離れるんじゃないぞ」
「離れるなって……こうして手を繋がれているのに、離れようがないじゃない」
昨晩、アランの言葉に耐えきれず涙を見せてしまったことで少し気まずかったのだけれど、アランはいつものように率先して私の護衛をしてくれている。
アランへの不信感が芽生えるたびに、変わらないアランの気遣いが私をいつまでも混乱させた。
でも、躊躇って足を止めるわけにはいかない——少しでも早く、領地の問題を解決しなければならなかった。
(ジェフリー……あなたがすぐそこにいるというのに……。すべてを投げ出して、今すぐあなたを問いただしたいわ。でも……領地の問題を後回しになんてできないもの。それに、もし——)
私は胸の辺りをぐっと掴んだ。
『あれが二ヶ月ぶりに会った妻との感動の再会なら、俺の親友はとんだ愛妻家だ』
再び、アランの言葉が棘となって私の胸の奥を苦しめ続けていた。
「あっ、ごめんなさい……」
「大丈夫か? 慣れない山道だからな……しっかり足を上げて、地面を踏みしめるんだ」
私が何度も転びそうになるのを、アランは繋いだ手をぐっと引き寄せ助けてくれた。
——やっと私たちは、男たちが出入りしていた岩山の穴に辿り着いた。
すでに誰もいない穴の中は暗闇で、先に何があるのか全く分からない。
アランは持って来ていたランプに火を灯すと、穴の奥を照らした。
「タチアナ、足元に気を付けろ」
「ずいぶん奥の方まで道が繋がっていそうね……」
「両脇を見てくれ。明かりを灯せるように松明台があるぞ」
確かに、穴の中の岩肌に、規則正しく鉄の松明台が打ち付けられていた。
私は岩肌に手を触れ、すーっとなぞった。
「自然にできた洞窟ではなさそうね」
不自然に平らな箇所や無理に崩した跡がある。
「ああ、たぶん、この穴は坑道だろう。男たちは坑夫で、何かを採掘しているようだな」
「でも、この地域に鉱山は無かったはずよ。トラン男爵から、鉱山が発見されたという報告も受けていないわ」
私とアランは顔を見合わせた。
「俺たちの予想が当たっていれば、答えは一つだな」
「ええ。トラン男爵は見つけた鉱山をボナパルト家に報告せず、私腹を肥やしている……。まったく、どこまで強欲な男なのかしら」
中を進む私たちの足音がコーン……コッ……と反響し、たまに上から滴り落ちる水で顔を濡らした。
坑道は所々狭くなったり広がったりしていたが、進むうちに時間の感覚も無くなっていった。
そうして、突然——大きな開けた空間に出た。
「アラン、ここは……」
頭上は背の高いアランが手を伸ばしても届かないほど高く、左右の空間は私とアランが並んで両手を広げても届くか届かないかほどの広さだった。
アランは短剣で岩肌を少し削ろうとしたが、硬く浅い跡がつくだけ。
明りに照らされた岩肌は黒灰色や青みがかった灰色で、黒い鉱物の筋のような部分に小さく光が反射した。
「タチアナ、この光が反射したところを照らしてくれ。もっと強く削ってみよう」
今度は、きらきらとした薄片が周りに散らばった。
「アラン、彼らは何の鉱物を採掘していたのかしら? 私にはちっとも予想がつかないわ」
しばらくアランは岩肌をなぞったり、薄片を指先で擦り合わせたりしていたが、ハッと何かに気づいたようだった。
「アラン?」
「男爵め……とんだ食わせ者だな。タチアナ、この岩山は——ダイヤモンド鉱山だ」
「ダ……ダイヤモンド鉱山!?」
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