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第十六話 おっさん、新たな加護を得ていた②

――鑑定



【 名 前 】 寺日(テラカ) 陽太(ヨウタ)

【 年 齢 】 36

【 状 態 】 正常

【 種 族 】 人間

【 職 業 】 神見習いの保護者・商人

【 加 護 】 創造神デミウルの加護(仮)・商業神ルメースの加護

【 スキル 】 鑑定眼・アイテムボックス(∞)

【 固有ギフト 】 換金

【 総合ステータスランク 】 E



 ・・・・・・なんか、増えてないか?


 職業と加護のところに、さっきまで無かったものが記載されているんだけど……


『マスター、どうかされましたか?』

「いや、その……今、俺のステータスを見てるんだけど、変化してるというかなんというか……」

『えぇ!? ステータスが変化したんですか!?』

「正確には、職業と加護が追加されてるんだ」


 職業に商人が増えたのは、ミロンと商談を成立させたからだろう。自分の行動がステータスに反映される早さには驚いたが、納得できる変化ではある。問題はもう一つのほうだ。


「なんで加護が増えてるんだ? 身に覚えがなさすぎる」

『でも加護が多いのは、素晴らしいことに違いはありません! 良かったですね、マスター!』

「いや、これって喜んでいいのか……?」


<なんや、ワイの加護がいらんとでも言うんか!?>


「ぅわっ!? またっ……!」

『マ、マスター?』


 思い当たる節が全くない加護に戸惑っていると、耳を劈くような怒声が聞こえてきた。荒々しく勢いのある関西弁。その声は、先ほど聞こえてきたものと同じだった。華には申し訳ないが正体を突き止めるチャンスを逃さないため、俺は関西弁のほうだけに意識を向ける。


「だ、誰だよ!? さっきから人の頭の中で騒ぎやがって!」


<うっさいわ! それより、ワイの加護はそりゃあもうウルトラスーパーデラックスでレアな加護なんやぞ!? 良かったねと言われたら、はい嬉しいですって素直に喜ばんかい! そんで、胸を張ってドヤ顔の一つでも浮かべるのが商人ちゅうもんや!>


 マシンガンのような返答に、耳がキーンとなった。なんなんだよ、この賑やか青年は……


「慎ましい商人もいるだろうが……」


<それはそれ! これはこれや!>


「どんな理屈だよ……ん? ちょっと待て、ワイの加護って……え? もしかして、ルメース様!?」


<遅っ!? てか、今さらかい! 鈍いのは商人にとって致命的な弱点やぞ!?>


 肯定すると共に鋭くツッコまれる。すぐに気が付かないのも、仕方がないだろう。神様がそんなこてこての関西弁なんて、誰が想像できるって言うんだ!


 飛び出しそうになった抗議は喉奥に押し込む。相手は一応、神様なんだ。失礼があったら罰が当たるかもしれない。


<大体、キミさっきから見てたけど、押しに弱すぎるわ。そんなんじゃ、この世界の商人のええカモにされてまうぞ。相手の事情ばかり見んと、自分の利益にも目を向けんかい!>


「す、すみません……」


 何も悪くないはずなのに、反射的に謝ってしまった。これが神の力なのか!?……いや、俺がヘタレなだけか……


 はぁ、と小さく零した息を、商業の神たるルメース様は見逃さなかった。


<なんや、その辛気臭いため息は。そんな顔しとったら、お客が逃げてまうやろ。元気は商人の基本! これ、常識やで?>


「そんなこと言われましても……」


<商業の神であるワイが加護を与えたんや。キミには一流の商人になってもらう義務がある。腹括って頑張りや!>


「えぇ!? そんなの無理ですよ! 俺、勇者を探すために異世界に来たんですから!」


<そんなもん、サイプル君に任せとったらええ>


 きっぱりとそう言い放たれ、俺は呆気にとられてしまう。なんて強引な神様なんだ……俺が黙り込んでいると、ルメース様からぐふふと神様らしからぬ下卑た笑い声が聞こえてきた。


<キミには面白い商談をする才能がありそうやし、相棒君の固有ギフトの能力は底が見えへん……そこに商業の神であるワイ、ルメースの加護が加われば正に最強! 鬼に金棒や! いやー、これからのキミらが楽しみで仕方ないわ!>


「そんな勝手な……」


<まぁまぁ、そう言わんと。そんで今後やけどな、相棒君の固有ギフトを使って、もっと派手に商売をやな――>


――スパーーン!!


<アイタァ!?>


 突然の空気を弾くような音が、ルメース様の言葉を遮った。


<何すんねんな! って、爺さん!? いや、これはその、ちょっとした神託っていうか……アダダダ! ごめんて! 堪忍してぇな!>


 俺ではない誰かに向けての謝罪を最後に、ルメース様の声は途切れた。


 あの音ってハリセン、だよな……それに爺さんって……その二つの条件を併せ持つ人物に、心当たりはある。


 俺は腰に手をやり、地面に向けて疲労の息を深々と吐いた後、天を仰いだ。


「デミウル様も大変だよなぁ……」


 思い浮かぶのは、記憶に新しい髭が立派なご老体の姿。神々の中でも最年長であるが故に、苦労人……いや、苦労神であろうデミウル様に届くようにと、労りの気持ちを込めてぽつりと空へと言葉を飛ばした。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。


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