第八話 おっさん、相棒のステータスを知る②
『あの、マスター。私のステータスには何と書かれているんですか?』
「あ、そっか。華には鑑定眼がないから見れないのか……」
鑑定結果は鑑定眼のスキルあってこそ見れるもの。いくら優秀で可愛くて気配りができる華でも、無いものはどうしようもない。紙やペンといった書くものが手元に無いので、とりあえず口頭だけでステータス画面の内容を伝えようとしたが、それより先にサイプルが解決策を提示してくれた。
「ご安心を。自分が“共有”というスキルで、華殿にお見せします」
『ありがとうございます!』
「なんでもありだな……」
何か問題が発生すれば、サイプルがすぐさま解決してくれる。有難いことだが、彼に依存しすぎないよう注意する必要があると思った。勇者を探し終えたら、サイプルとはお別れなんだ。頼りすぎては、後々俺が困ってしまうだろう。それに、見た目の年齢だが年下に頼りっぱなし、というのもなんだか格好がつかない。おっさんは時にそういうことを気にするのだ。
『ふむふむ。スキルが四つ、固有ギフトは二つ……つまり、私には全部で六つの能力があるんですね』
「スキルは増やすことが可能だ。固有ギフトと違って、スキルは努力の証のようなものだからな。華殿なら鍛錬さえすれば、攻撃魔法くらい使えるかもしれないな」
『攻撃魔法……鍛錬……!』
「興味があるなら、自分が指導するが?」
『本当ですか!?』
「待て待て待て!」
サイプルのとんでもない提案に、慌てて待ったをかける。
「華に危険なことさせようするんじゃねぇ!」
「む? ただの鍛錬ですが?」
「アホ! 華をお前みたいな規格外と一緒にするな! 大体、優しい華が攻撃魔法に興味を持つなんて……」
『マスター、私やりたいです!』
「ぅええ!?」
まさかの志願に、変な声が出てしまった。
「は、華? お前は今のままでも十分すごいんだから、鍛錬なんかしなくていいんだぞ?」
『でも、まだ上のランクがあるんですよね? だったら、私はそこを目指したいです!』
やる気に満ちた声と鼻息荒くエンジンを鳴らす相棒に、俺はたじろいでしまう。
「で、でもな、華。攻撃魔法なんて危ないんだぞ? それに、鍛錬で怪我でもしたらどうするんだ?」
『自己回復があるから、大丈夫です。それに、この世界には魔獣がいます。攻撃魔法を覚えるということは、自己防衛に繋がると思いませんか?』
「それは、そう、だけど……」
正論すぎる意見を述べられ、俺は口をもごつかせながら目を右往左往に動かす。
「師匠、過保護が過ぎます」
容赦ない一言を投げかけてくる少年に、俺は情けなくも眉尻を下げてしまう。
「だってよぉ……心配なんだよ。攻撃魔法なんて、危険でしかないだろ? 華にもしものことがあったらって、考えちゃうんだよ」
「華殿を心配するお気持ちは分かりますが……」
サイプルはチラリと、華へ目線を向けた。
「そんな調子ではこの先、華殿の可能性の芽を摘んでしまいます。それに本人の意欲を削ぐのも、いかがなものでしょうか?」
「うっ……でも……」
『マスター』
不意に響くのは、悲しげな声。
『マスターは私が強くなるの、嫌……ですか……?』
「そ、そんなことはないぞ! ただ、俺は華のことが心配なだけで……強くなろうとする向上心はすごくいいことだ!」
『本当ですか……?』
「もちろんだ!」
『じゃあ、鍛錬してもいいですよね!』
「え!? いや、それは……」
コロリ、と声音を変える華。俺の相棒は、意外にも強かなようだ。
俺よりも上手の華に足元をすくわれないよう、言葉を慎重に選ぶ。しかし、残念なことに俺の脳みそはそういったことに長けてはいない。
無い語彙力を引き出すため、うーんうーんと唸る俺の耳に、サイプルの苦笑混じりの声が聞こえてきた。
「まぁ、鍛錬については後で話し合うとして……次は、師匠のステータスを見てみましょうか」
「お、おぉ! そうだな!」
年下からの助け舟に飛び乗る。華は軽くエンジンを吹かすが、今だけは聞こえないふりだ。
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