表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
始まりの心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/307

第三話 守るって、決めてた【後編】


 ***


 Side:柊

 

 バアァァァン!!


 僕は黒い影を吹き飛ばし、闇から飛び出した。

 息を深く吸い、ゆっくりと目を開ける。

 

 颯の姿が、ない。


「……いる」

 

『多分な!わかんねぇけど!!』


 脳内に響く颯の声。


『アイツ倒すぞ!柊!』

 

「……うん!」


 黒い影が、再び僕らへ襲いかかる。


『柊、避けろ!』


 颯の声が頭の中に響いた。

 

「うん……!!」


 見える。

 動ける。

 

 思った通りに。

 

 まるで――颯と一緒に戦っているみたいだ。


 迫りくる影へ拳を叩きつけた。


 バァンッ!!


 黒い影が大きく弾け飛ぶ。


「当たった!!」


「……あ……ああ……」


 影に張り付く人の顔が、苦しそうに声を上げた。


「あ……ああ……ずる……い」


『おい、何か言ってるぞ!』


「……取り込まれた時に、見えた。

 事故で死んだ人たちなんだ」


『そりゃ気の毒だけどよぉ!

 だからって生きてるやつ巻き込むのはちげぇだろ!』


「だから……終わらせよう」


 四方から伸びる影をかわしながら、

 赤い車――黒い塊の中心へ向かって走った。


「……恨んだまま、ここにいるのは……苦しいよね」

 

『誰かを恨んだって、幸せにはなれねぇよ』


「――だから」


 拳に強く力を込め、振り上げた。


「もう、楽になれ!!」


 ドガァァァン!!


 拳が中心を撃ち抜く。

 

 その瞬間、黒い影と赤い車が、

 光の粒となって煌めきながら空を舞った。


 夕陽の中に、光の粒が涙のように散って消えていく。


 真っ暗だった空は、いつの間にか美しい夕焼けに戻っていた。


「ご冥福を……お祈りします」


 僕と颯は、そっと手を合わせた。


『何とか、なったみてぇだな』


「うん。……颯のおかげだよ、ありがとう」


 夕焼けが、やけに静かだった。


『ちげぇよ。さっきのは、お前の力だろ。』


「え?」


『俺は、アイツに触ることすらできなかったからな。

 ……んで?』


 一呼吸おいて、颯が尋ねる。


『どうやって戻んだ、コレ』


「え?わ、わかんない……」


『おい、待て。まさか俺、一生お前の中!?』


「え、ど、どうしよ!?」


『っつか、何で自分の身体には入れねぇのに、お前の身体には入れるんだよ!!意味わかんねぇ!!』


「ちょ、颯、落ち着いてっ……。頭に響く!響くから!」


『うっせぇボケ!!!』


 僕は頭を抱えた。


 これから、どうなるんだろう。


 その時、二匹の蝶が夕焼けの中をひらひらと横切った。

 その蝶は、薄く光を散らしながら茜色の空へと消えていく――。


 ***


 郊外にある、静かな平屋の屋敷。

 美しい庭を通り抜け、二匹の蝶は家屋の中へと入っていく。


 和室で花を生ける、一人の青年。

 白銀の髪。襟足が長く、さらりと肩にかかる。


 白く、陶器のように滑らかな肌。

 伏せた睫毛が頬に影を落とす。

 

 濃紺の着物を纏い、水盤に花を生ける彼は、“かっこいい”よりも、“美しい”という言葉がよく似合った。


 その足元で蝶が淡い光を弾けさせ、人間の姿に変わる。

 その姿は半透明で、生気は感じられない。

 

 桃色のフリル着物の少女。

 水色の着物の少年。

 ――背丈も顔立ちもよく似ている。双子なのだろう。

 年齢は十三歳前後といったところか。

 

 二人は同時に深く頭を垂れた。

 

 蒼髪の少年が恭しく口を開く。


かがり様、白瀬柊とその弟、白瀬颯の共霊きょうれいを確認しました」


 緋色の髪を揺らし、少女が続いた。

 

「想定以上の霊害を、白瀬兄弟が祓ってしまいましたわ♡」


 篝と呼ばれる青年は、ふっと微笑んだ。


「ふふ……そう。よいあかり。報告ありがとう。あの人にも、伝えておかないとね」


 篝は、二人に柔和な笑みを向ける。


「引き続き、白瀬兄弟を見守ってあげて」

 

「はっ」

 

「お任せくださいませ♡」


 二人は礼儀正しく頭を下げ、再び蝶の姿へ戻った。

 夕暮れの風に、水盤の花が揺れる。


「……夜が、動き始めるね」


 篝がひとり呟いた。


 ***


※次回更新:1月6日7時

第四話 祓い師の転校生【前編】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ