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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百六十七話 心音を重ねて

本日12時に更新予定でしたが、投稿が遅れてしまい申し訳ありません。


本日は15時と19時に更新いたします!


いつもお読みいただき、ありがとうございます!


「ガウッ!!」


 俺の身体が、弾かれたように動いた。

 

 ヒュッ!!

 

 白寧の拳が、頭上をかすめる。

 黒狼は低い姿勢のまま、白寧の懐へ頭から飛び込んだ。

 

 ドガッ!!

 

 ——頭突き。


「……ぐっ……!」


 白寧がくの字に折れる。


「アオーン!!」


 黒狼はそのまま身体を起こし、

 白寧を横薙ぎに蹴り飛ばした。


 ドガッ!!


 白寧の身体が吹き飛ぶ。

 

『……っ!』


 俺は、意識の奥にいた。


『黒狼!!』


「ヴォン!!」


 ——大丈夫。

 ちゃんと通じてる。


「……ハッ……ハァッ……」


 黒狼の呼吸が乱れている。


 意識を切り替えたからって、

 これまでに俺の身体が受けた傷が消えるわけじゃない。


 霊力だって残りは限られている。


「ヴヴー!」


 黒狼が両手を床についた。


 威嚇する姿勢。


 苦しくないわけがない。

 

 それでも、

 本能で戦おうとしているのだと思った。


 だったら——。


『お前の一撃に、限界まで霊力を乗せる……!』


 身体は黒狼に任せた。

 俺は、霊力操作に集中する。


「……狼に意識ヲ譲ったカ」


 白寧が立ち上がる。


「ダガ、猿真似デハ、勝てナイ」


 白寧は、血の混ざった唾液を吐き捨てた。


「オマエ程度、甲羅ダケで十分ダ」


「ガウッ!!」

 

 黒狼は低い姿勢から、一気に白寧へ迫った。


 ——速い!

 

『待て!まだ霊力が——!』

 

 ガキィィンッ!!

 

 赤黒い甲羅が、俺たちの突進を阻んだ。

 

「……っ!」

 

 身体が後方へ弾かれる。

 

 ドサッ!!

 

「ヴ……ッ」

 

 黒狼が両手を床についた。

 

 ——息が合わない。


 俺なら迷う一瞬にも、こいつは動く。

 判断が速すぎて、霊力操作が追いつかない。

 

 タイミングが——合わせられない。

 

「バラバラダナ」

 

 赤黒い甲羅がうごめく。

 次は、白寧が攻撃してくるはずだ。


「ヴヴー!!」


 どうやって合わせる!?


『黒狼……ッ!俺の——』


 その時。


 ドクン……!

 

『……あ』

 

 黒狼の心音を感じた。


 ドクン……ドクン……。

 

 足に力が入る。

 次に、どこへ踏み込もうとしているのか。

 

 身体の内側にいるからこそ、わかる。


『そうか』


 言葉で伝え合えなくても、できる。

 

『俺が、黒狼の動きに合わせるんだ』

 

 ——柊と颯がやっているように。

 

 俺たちにも、できるはずだ。

 

「ガルルルル……!」

 

 黒狼が白寧を睨んだ。

 

 両脚に、力がこもる。

 

 ——頭から突っ込む気か。

 

 なら、拳じゃない。

 全身だ。

 

 俺は、残された霊力を身体全体へ巡らせた。

 

 ドクン!!

 

 青白い霊力が、俺たちを包み込む。

 

 黒狼が両腕を前脚のように曲げ、低く身構えた。

 

「正面カラ来ても無駄ダ!」

 

 赤黒い甲羅が、白寧の前へせり出した。


 ——合わせる。

 

 ギュルルルルルッ!!


 霊力を高速で旋回させた。

 

「アオォォォン!!」


 ——“狛、信じてる”


『っ!?』


 黒狼の声が、聞こえた気がした。

 

 ——そうだ。

 お前は、お前のやり方で戦え。

 

 俺も、お前を信じてる!

 

 黒狼が床を蹴った。

 

 ドォンッ!!

 

 俺たちの身体が、青白い弾丸となって飛び出した。

 

『黒狼牙——!!』


 ガギィィィン!!

 

 黒狼の頭が、赤黒い甲羅へ激突した。

 

 高速で旋回する霊力が、甲羅を抉っていく。

 

『——穿廻!!』

 

 バキバキバキィッ!!

 

 甲羅が砕け散った。

 

「……ッ!?」

 

 ——まだだ!!

 

 黒狼は止まらない。

 砕けた甲羅の向こうへ、そのまま突っ込む。


 ——絞り出す!

 限界まで……!!


『はあぁぁぁ!!』

 

 ドゴォォォォン!!

 

「がああああっ!!」


 白寧の腹部へ、旋回する霊力を纏った頭突きがめり込んだ。

 

 ドガァァァン!!

 

 白寧の身体が、背後の壁へ叩きつけられた。

 

 ガラガラガラッ!!


 壁が崩れ落ちる。

 

「……がっ……は……」

 

 瓦礫の中で、白寧が顔を上げた。

 

「……まだ……ダ……」

 

 床に手をつく。

 

 だが——。

 

「……何故……ダ……」


 背中に残った赤黒い甲羅が、形を失っていく。


「俺ハ……負けナイ……!」

 

 その言葉とは裏腹に、身体が傾いた。

 

 ドサッ。

 

 白寧が、床に倒れ伏した。

 

 ——動かない。

 

 だが、霊力は感じる。

 

 生きている。


 もう、立ち上がってこない。

 

『……勝った、のか……?』

 

「……ヴ……」

 

 俺たちの身体が、ぐらりと傾いた。


 ——カチッ。


 次の瞬間、俺は自分の膝が床に落ちるのを感じた。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:11月1日19時

第三百六十八話 この世の色

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