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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百六十五話 だから好きにした


「暮羽ハ捕えたハズ……?」


 白寧が眉をひそめた。


 その視線の先——


『……あぁ……あ……』


 暮羽の前で、首を落とされた大蛇が呻き声を上げていた。


 ズズズ……。


 切り口で赤黒い霊力が揺らめき、

 大蛇の頭部が少しずつ形を取り戻していく。


「……簡単には消えないか」


 暮羽は霊刀を構えると、大蛇を睨みつけた。


「さすが特級」


「暮羽!あなた一体、どこにいたのよ!?」


 暮羽の背後で桃華が声を上げた。


「捕まっていなかったのね!?」


「いえ。私は……捕まっていました。

 ですが——」


 グワッ!!


 大蛇が再び暮羽へ襲いかかる。


「話は後です!」


 暮羽は床を蹴った。


 ガキィンッ!!


 霊刀と大蛇の頭がぶつかり合った。


「——まあイイ」


 白寧が俺へ視線を戻す。


「先に、お前ダ」


「ぐっ……」


 白寧の足に赤い霊力が灯った。


 ——まずい。


 俺が表情を歪めた、その時。


 パンッ!!


 乾いた音が響いた。


 同時に、

 俺の目の前で、青白い光が白寧の肩を撃ち抜いた。

 

「あ゙……っ!?」

 

 白寧が目を見開く。


 だが、傷口も血もなかった。


 俺を踏みつける白寧の足が緩む。


「……っ!」


 俺はその足を押しのけ、横へ転がった。

 胸に走る痛みを堪え、どうにか立ち上がる。


 銃声……!?

 

 片手で胸を押さえながら、俺は顔を上げた。


 パンッ!!

 

 もう一発。

 白寧の足元で、青白い霊力が弾ける。

 

「……誰ダ!!」


 白寧が振り返った。

 

「ヒャハハハハハハ!!」


 吹き抜けに、男の笑い声が響いた。


「こういうのも、案外悪くねぇなぁ!」


 階段に、人影があった。


 橙色の袈裟、象牙色の髪。

 

 その手には、拳銃。

 銃口からは、青白い霊力が立ち昇っていた。


「ヒーローって、ピンチの時に現れるモンなんだろ?」


 あの姿は——確か。


「……戒……!!」


 常夜ノ会の、戒。

 

 あの日、柊と颯が助け、

 白寧と一緒に警察に捕まったはずの男。


 白寧と一緒に解放されていたのか!?


 白寧が戒を睨みつけた。


「オマエ、何ヲしてイル!!」


「見りゃわかんだろ。そいつ助けた」


 戒は平然と答えた。


「裏切る気カ!?」


「そうねぇ〜」


 戒が階段を降りてくる。


「俺は“好きに生きていい”って、前に言われたんでね」


 戒の表情が、ほんの少しだけ変わった。

 誰かを思い出すように。


「だから好きにした」


 戒は笑った。


「ちなみに、暮羽を逃したのも俺ね」


「ふざけるナ……!!」


「お前もさぁ。冷静になれよ」


 戒は手元で拳銃をくるりと回した。


「恨みで動いたって、利用されるだけだぞ」

 

 戒の視線が俺へ動く。


「そうだ。おい、お前」


「……は?」


「これ、お前の弟が作った霊銃らしいな」

 

 戒が拳銃を持ち上げた。

 

「誰かを守るための武器なんだろ?」

 

 ドクン!

 

 ——狠。


 戒は銃口を白寧へ向けた。


「何ノ話ヲしてイル……!」


 白寧の背中から、赤黒い霊力が噴き出した。

 

「オマエも、処分対象ダ……!!」


「はっ!またそれかよ!」


 パンッ!!


 青白い光が飛んだ。


 白寧の背中から、赤黒い甲羅がせり出した。

 

 ガキィンッ!!

 

 青白い弾丸が、甲羅に弾かれた。

 

「その程度デ——!」

 

「知ってるよ」

 

 戒は銃口を下げない。

 

「お前が簡単に倒せる相手じゃねぇことくらいな」


 パンッ!パァンッ!!


 青白い光が、今度は大蛇の方へ放たれた。

 

 弾丸を受け、大蛇が身を捩り、暮羽から離れた。

 

「暮羽!!」


 戒が声を張り上げた。

 

「お嬢様連れて裏口へ向かえ!!」


 シュッ!!


 戒は、袈裟の中から何かを取り出して暮羽に投げつけた。

 

「……何?」


 暮羽がそれを片手で受け取る。


「霊力増幅薬だよ!俺の分!

 念のためお前が持ってけ!」


「……赤い霊力……」

 

「ミラが裏口にいんだろ!?

 早くしねぇと、そっちがやべぇぞ!!」

 

「暮羽!行くわよ!!」


 桃華が暮羽の手を引いた。

 二人が裏口へ向かって走り出す。


「行かせナイ……」

 

 大蛇の頭が二人へ迫った。


 しかし。


 パァンッ!!


 戒の弾丸が、大蛇の目を貫いた。


『……ああぁ……!』


 大蛇が動きを止める。

 その隙に、戒が袈裟の中へ手を入れた。


「おい!狼のやつ!!」


 ——俺?


 声の方を見ると、何かが一直線に飛んできた。


「!?」


 パシッ!


 反射的に受け取る。


 ひやりとした感触。

 俺は手の中を見た。


 透明な小瓶。

 その中に桃色の液体が詰まっていた。


「それ使え!俺に配られた回復薬だ!」


 これを使うのか?

 俺が?


「試験用で、俺と白寧に一本ずつ支給されてたんだよ!」


「……っ!」


 小瓶の蓋に指をかけた。


 ——敵が作った、得体の知れない薬だぞ?


「邪魔者バカリ……」


 白寧が床を蹴る。

 

 大蛇の身体がしなる。


「くっ」


 戒は慌てて拳銃にゴム弾を込めた。


「使うなら早く使え!!」


 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:10月31日15時

第三百六十六話 一番近くに

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