第三百六十三話 この時を待っていた
青い霊力と、赤い霊力が激しくぶつかり合った。
「……ぐっ……!」
足が、少しずつ後ろへ滑る。
白寧の口元がつり上がった。
さらに拳を押し込まれる。
「……クソ……!」
押し負ける。
そう思った時だった。
身体が、桃色の光に包まれた。
「あ……!」
身体の奥から、霊力が湧き上がる。
温かい。
この力は——。
「最後まで、サポートするって言ったでしょう」
背後から、桃華の声がした。
「……助かる!!」
足を踏ん張った。
「はぁぁ!!」
ドォォンッ!!
白寧の拳を、押し返す。
衝撃で互いの身体が後方へ弾かれた。
空中で体勢を立て直し、両足で着地した。
「桃華!ありがとう!おかげで全回復した!!」
わざと大きな声で言った。
「はぁ?全回復なんか——」
「これなら白寧に勝てる!!
お前は早く裏口へ向かってくれ!!」
桃華の声を遮って叫んだ。
「お前の力がなければ、みんな勝てないんだ!!」
「……大袈裟ね」
桃華が、怪訝そうに俺を見た。
その視線が、一瞬だけ白寧へ動く。
——頼む。気づいてくれ。
「……チッ」
白寧が桃華を睨みつけた。
「お前は、邪魔ダナ」
そうだ。それでいい。
「アタシもいるわよォ!!」
シュルルッ!!
大蛇が、俺の横から迫っていた。
「オラァッ!!」
ドゴォンッ!!
麗子が大蛇の頭を蹴り上げた。
「狛!アタシも援護するわ!」
「……頼む!」
俺は床を蹴った。
麗子も同時に駆け出す。
「玄武は任せなさい!!」
「ああ!」
白寧に向かって走る。
白寧の前へ、甲羅がせり出した。
来た!
「オラァッ!!」
麗子が前へ飛び出す。
ガシッ!!
麗子は、甲羅の下へ両腕を差し込んだ。
「は!?」
「ふんぬぅぅぅ!!」
麗子の腕に、筋が浮かび上がる。
巨大な甲羅が、ゆっくりと床から離れた。
亀の脚が宙に浮く。
大蛇が、激しく身を捩った。
「オラァァァッ!!」
麗子が身体を捻り、抱え上げた玄武を床へ投げつけた。
ドッゴォォォン!!
『あ……あぁぁ……』
床一面に亀裂が走る。
「ボディスラム……!?」
俺は思わず呟いていた。
「行け狛ァ!!」
「ああ!」
これなら、俺は白寧へ集中できる。
「問題ナイ」
白寧が床を蹴った。
速い。
もう目の前……!
白寧が右拳を繰り出した。
「っ!」
白寧の拳をかわし、懐へ潜り込んだ。
白寧の腹部へ拳を叩き込む。
「……ぐっ!!」
続けざまに、右、左と打ち込む。
白寧が防御しながら、後ろへ下がった。
俺はそのまま攻め続け、桃華とは反対の方向へ追い込んだ。
——もう少し。
視界の端で、桃華の姿が小さくなる。
白寧の拳が迫った。
「……っ!」
正面から受けず、斜めにかわす。
そのまま、白寧の横へ回り込んだ。
「……ふん」
白寧が俺を追って、身体の向きを変えた。
そうだ。こっちへ来い。
さらに一歩、桃華とは反対の方向へ踏み込む。
白寧も、俺を追ってくる。
「調子に乗るナ……!」
白寧が蹴りを繰り出した。
腕を交差させる。
バキィッ!!
「ぐっ!」
やっぱり、重い。
衝撃で足が滑り、俺は片膝をついた。
「この……!」
顔を上げる。
白寧の視線が、桃華を追っていた。
「桃華!!
早く裏口へ行って、柊と颯を援護してくれ!」
大声で叫んだ。
「お前の力で、解毒できるからな!!」
「うるさいわね!わかってるわよ!」
桃華が、壊れた裏口へ向かって走り出していた。
「……逃がさナイ」
ブワァァッ!!
白寧の背中から、赤黒い霊力が噴き出した。
『……あ……あぁ……!!』
——出たな。虎。
赤黒い虎が、桃華へ向かった。
「ったく、あなたの声が大きいからバレたじゃないのよ」
桃華がコンパクトを開く。
巨大な牙が、桃華に迫った。
その瞬間。
俺は、白寧との距離を一気に詰めた。
「……お前の力、今は落ちてるだろ?」
拳を握る。
青白い霊力が渦を巻いた。
「まさかオマエ——!」
俺は、この時を待っていた。
「黒狼牙——」
いくぞ、黒狼。
「穿廻!!」
ドゴォォンッ!!
回転する霊力を纏った右拳が、白寧の顔面を打ち抜いた。
「……がっ!!」
白寧の表情が歪む。
次の瞬間、その身体が床を離れた。
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※次回更新:10月30日21時
三百六十四話 タイトル未定




