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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百六十二話 二対二


 ***


「はっ!!」


 奏は、勢いよく目を開けた。


「私、気絶してました!?」


 上体を起こす。

 奏は脇にいた桃華へ顔を向けた。


「ええ。一気に霊力を使いすぎたんだわ」


 桃華がかざしていた掌を下げた。


「……あ」


 ——霊力が、戻ってきてる。


「桃華さんが、助けてくれたんですね」


「そうね。感謝なさい。でも——」


 桃華が振り返った。

 奏も同じ方向へ視線を向ける。


「ここまで連れてきたのは麗子よ」

 

「オラァァァ!!」

 

 その先で、赤黒い虎が麗子へ飛びかかっていた。


 ドガッ!!


 麗子が両腕で受け止める。


「何ですか!?あの虎!!」


「白寧の一部よ」


「白寧!?」


「ええ。本体はあっち」


 桃華が指差した先で、狛と白寧が向き合っていた。


「狛さん……!」


「見ての通り、狛も麗子も戦ってる。伊吹も地下へ落ちたし」


「地下へ落ちた!?」


「そう。説明は後」


 桃華は奏の目を見た。


「奏、もう動けるわよね?」


「はい」

 

「ミラが来てるんでしょ?

 桃華は裏口へ行くから、あなたは地下へ向かってちょうだい。伊吹をお願い」

 

「でも……!」


 ——この状況。

 麗子さんと狛さんにも、桃華さんの力が必要なのでは?


 奏は眉を寄せた。


「ぐっ……!!」


 麗子の呻き声。


 奏は視線を麗子たちの方へ戻した。


「麗子さん!!」

 

 虎の牙が、麗子の腕に食い込んでいる。

 

「乙女の柔肌を……」

 

 ドガッ!!


「噛むんじゃないわよォ!!」

 

 麗子が虎の腹部へ膝を叩き込んだ。

 

『……あ……あぁ……』

 

 赤黒い輪郭が、ぐらりと揺らぐ。

 さらに、麗子が拳を振り上げた。

 

 バキィッ!!

 

 虎の頭が弾かれる。


 それを見て、桃華が笑った。


「安心なさい。最後までサポートしてから行くわ」


 ***


 Side:狛


「……っ、奏!!」


 向こうで、奏が起き上がるのが見えた。


 良かった。

 桃華が回復させたのか。


「……はぁ……はぁ……」


 正直——俺も回復させてほしい。

 

 ……いや。

 麗子も、かなり消耗しているはずだ。

 ずっと戦い続けているんだから。


 麗子が先か。

 そんなことより、早く裏口へ向かわせた方が良いか。

 

「余所見するナ」

 

「……っ!」

 

 白寧が、目の前にいた。

 

 右拳が迫る。

 

 ——受ける!

 

 俺は腕を交差させた。

 

 ガキッ!!

 

「……ぐっ!」

 

 押し返す。

 

 そのまま、白寧の腕を掴もうとした。

 

 また、甲羅が動く。


「邪魔だな……!」


 拳を引いた、その時。

 白寧の足元が、わずかに揺れた。


「……っ?」

 

 さっきの一撃が、効いている?

 

 今なら——。

 

「はぁっ!」

 

 俺が踏み込んだ瞬間。

 

 白寧が、低く呟いた。

 

「……戻レ」

 

 ——え?

 

 ブワァァッ!!

 

 背後で、赤黒い霊力が弾けた。

 

「何なのよォ!?」

 

 麗子の声。

 

 振り向くと、虎の身体が崩れていた。

 その輪郭が、赤黒い霊力へと変わっていく。

 

 そして——。

 

 ズズズズッ!!

 

 白寧の背中へ、勢いよく吸い込まれた。

 

「戻った……!?」

 

 赤い霊力が、白寧の身体を包み込む。

 

 ——何だ?

 さっきまでとは、明らかに違う。

 

「……終わりダ」

 

 白寧が、俺の懐へ踏み込んだ。

 

「!?」

 

 咄嗟に腕を構える。

 

 ドゴォォンッ!!

 

「……がっ!!」

 

 拳が、防御した腕ごと身体を押し飛ばした。

 

 ——重い!!

 

 床を転がる。

 

 ドサァッ!!

 

「うぅ……!」

 

 両腕が痺れている。

 

 さっきより明らかに動きが早い。

 それに、威力も増している。


 その時。


「麗子!!」


 桃華の声が響く。


 振り向くと、桃華が麗子に向かって手をかざしていた。

 

 桃色の霊力が、麗子の身体へ流れ込む。

 

「……っ!」

 

 麗子が顔を上げた。


「白寧の攻撃が強くなったわ!」

 

「……そういうことねェ」

 

「東雲狛に加勢しなさい!」

 

「わかったわァ!!」

 

 麗子が床を蹴った。


 白寧へ視線を戻す。

 

 ——やっぱり。


 虎が戻ったことで、白寧の力が強くなった。


「……そういうことか……!」

 

 白寧が、眉をひそめた。

 

「……何?」

 

 俺は、ゆっくりと立ち上がった。

 

 胸の奥で、黒狼が唸る。

 

 ——理解した。

 白寧の強さの、裏側。


 ズズズ……。

 

 目の前では、赤黒い甲羅が動いている。

 その周囲を、大蛇が這っていた。

 

 玄武は、まだいる。

 

 つまり、こいつは今も、全力じゃない。

 

「それでも、あの威力か」

 

 思わず、笑いが溢れた。

 

「……何ガおかしい」

 

「いや」

 

 ゆっくりと、拳を構え直した。

 

「お前の力が、少しわかっただけだ」

 

 白寧が、目を細める。

 

「……だったラ?」

 

「……ああ」

 

 黒狼の霊力が、拳へ集まる。

 

「次は、こっちが考えさせてやる」

 

 シュルッ!!


 大蛇が迫る。


 ——頼んだぞ。


 俺は避けずに、そのまま白寧に突っ込んだ。


 ドゴォッ!!


 俺の背後に迫った、

 大蛇の身体が吹き飛んだ。


「……な……!?」


 白寧が目を見開く。


 振り返らなくてもわかる。

 あの拳は——。


「麗子!」


「二対二なら対等でしょォ!?」


 拳を振り上げる。


 バキィィィンッ!!


 俺の拳と、白寧の拳がぶつかった。

 

 ——勝負は、まだ終わらない。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:10月29日21時

第三百六十三話 タイトル未定

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