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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百六十一話 その先を考えろ


 白寧が空中で体勢を立て直す。

 

 白寧が着地する前に——


 シュルッ!!


 横から大蛇の頭が突っ込んできた。


 グワッ!!


 大きく開かれた口に、鋭い牙が光った。


「……っ!」


 飛んで避ける。


 ——やっぱり。


「……掴めてきた」

 

 パターンは大体同じだ。


 どちらかに視線を奪われているうちに、

 もう一方が死角から攻撃を仕掛けてくる。

 

 ——だとしたら、次は。


 俺は視線を上げた。


 予想通り、白寧の影が落ちてくる。


 受け止めるか?

 

 いや。

 拮抗すれば、その間に蛇が攻撃してくる。


 だが、今の力差なら押し返せるかもしれない。


 違う。

 押し返したところで、次の攻撃を仕掛ける前に甲羅で防がれる。


「……クソッ!」


 わからない。


 身体を横へ滑らせた。


 避けてもまた——。


 シュルッ!!


「そう来るよな……!」


 大蛇の牙が、目の前を通り過ぎた。


 それでも、避けるしかできない。


「逃げてばかりダナ」


「……っ……!」


 やり合えば、押せる。

 なのに攻撃が届かない。


 ……そもそも、

 あいつの力が弱くなったのはいつからだ?

 

 伊吹のサポートがあって、ようやく押し返せたあの力。

 

 いつから、変わった……?


 その時。


「オラァッ!」


 バキッ!!


 また、背後から麗子の声と衝撃音が聞こえた。


 あそこで、麗子が戦いを続けている。


 あの虎と。


「……もしかして」


 初めに、虎が出てきた。

 その次に、蛇。

 そして、玄武の甲羅。


 白寧の身体へ目をやった。

 その背から、赤黒い霊力が伸びている。


 威力が落ちたのは——。

 

「あいつらが出てきてから……?」


 白寧の中にある力を、外へ分けているとしたら?


 ——それで、本体の威力が落ちたのか。


 だが。


 わかったところで、どうする?


 大蛇が、再び牙を剥いた。


「……っ!」


 間一髪、体を反らしてかわす。


 避け続けていても、いずれ体力が尽きる。


 正面で、白寧が床を蹴った。


 俺も拳を構える。


 こちらも仕掛けなければ、勝てない。


 だけど、

 正面から攻撃したところで、玄武の甲羅に防がれる。


 じゃあ、甲羅を砕くか?

 あの硬さを、簡単に砕けるとは思えない。

 

 蛇を狙っても、白寧が来る。

 白寧を狙っても、玄武が守る。


 何とか甲羅を避けて、

 その奥の白寧へ攻撃をしかけないと——。


「……いや?」


 ——避ける?


 白寧が目の前に迫る。


「……っ!!」


 白寧へ向かって拳を突き出した。


 ブワッ!!


 甲羅が、白寧の前にせり出す。


 そうだ。

 俺が殴ろうとすれば、こいつは必ず守りに来る。


 それなら。


 俺が甲羅を避けるんじゃない。

 こいつを、俺が使えばいい。


「っ!」


 拳に霊力を乗せる。


 甲羅が、白寧の身体を覆うように動いた。

 

 ガキィィンッ!!

 

 右拳が甲羅にぶつかる。

 そのまま、拳を押しつけた。


「無駄ダ」


 ——次は、蛇が来るはず。


 左側から、赤黒い頭が見えた。


 ——来た!


 蛇が俺の頭を狙い、一直線に迫る。


 それでいい!


 その場で膝を折った。


 ガコォッ!!


 大蛇の頭が、勢い余って甲羅の側面へぶつかった。


「……ナニ?」

 

 甲羅が、わずかに横へ傾く。


 ——今!


 足を踏み込み、空いた隙間へ身体を滑り込ませた。


「黒狼牙——」


『アオーン!』


 低い姿勢から、左拳を突き上げる。

 

「穿廻!!」


 ドゴォッ!!


「……ぐっ……!!」


 白寧の顎を、拳が捉えた。


 白寧の上体が、大きく仰け反った。


 もう一発——!


「……甘イ」


 白寧が笑った。


「何……!?」


 シュルルッ!!


「うおっ!?」


 背後から、大蛇の胴体が俺の身体へ巻き付いた。


 そのまま後ろへ引っ張られる。


 バランスを崩して、

 俺は床に背中から倒れた。


 しまった。

 早く立ち上がらなければ……!


「……っ、く……!」


 身体が締め付けられる。


 痛みに表情を歪めた。


 白寧が、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「たかが、一発当てたダケ」


「何だと……!」


「少し考えた程度デ、勝てると思うナ」


 白寧が拳を引いた。

 

 ——避けられない。

 

 それなら……!

 

 俺は、霊力を胴体へ集中させた。

 

「……はぁっ!!」

 

 バチィッ!!

 

 大蛇の拘束が緩んだ。

 

 すぐに身体を捻る。

 

 ドゴッ!!

 

「……ぐあっ!!」


 白寧の拳が、肩を打った。

 

 衝撃で身体が回転する。

 

 だが、その勢いのまま床を蹴った。

 

 ザザッ!!

 

 なんとか距離を取る。

 

「……っ、はぁ……はぁ……!」

 

 ——危なかった。

 

「……ふん」

 

 白寧が鼻を鳴らした。

 

「結局、力任せ」

 

「そうかもな」

 

 俺は拳を握り直した。


「……はぁ……」


 霊力がだいぶ削られた。


 伊吹は地下へ落ち、霊力供給は切れた。

 桃華は奏の治療中だろう。

 

 今はまだ頼れない。


 どうする?


 考えろ。

 やっと一発当てられたんだ。


 考えれば、攻撃を通せる。

 

 問題は、その先だ。

 

 白寧の反撃まで、読まなければ。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:10月28日21時

第三百六十二話 タイトル未定

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