第三百五十七話 君は、どうしたい?
昨日は投稿時のトラブルにより、予定していた更新ができませんでした。
本日から、改めて更新いたします。
引き続きよろしくお願いいたします!
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Side:柊
拳が、巨大な蔦の鞭を穿った。
バキ……バキバキバキッ!!
蔦の鞭が砕けていく。
「……ほう?」
ミラが、初めて眉をひそめた。
うまくいった。
颯のおかげだ。
——『怖ぇって思うのは、別に悪くねぇ!』
——『失敗したって、俺がいる!!』
いつも、颯の言葉は僕を安心させてくれる。
言葉だけじゃない。
君が隣にいてくれることが、こんなにも心強い。
「柊!」
それに、君は変わった。
幼い頃から、颯はいつも僕の前にいて、
僕の手を引いて先へ連れて行ってくれた。
だけど今は。
——『お前が好きに決めりゃいいんだよ!』
僕と同じ場所で、
僕の言葉に耳を傾けようとしてくれる。
僕の選択を、待ってくれている。
シュルルッ!!
「……チッ!」
颯が迫る蔦を風で弾く。
それでも僕の意識は、違うところにあった。
「おい柊!」
……じゃあ、僕は?
颯の言葉に耳を傾けられてる?
また、勝手に決めつけてない?
颯は、どうしたいって思ってる?
——『早く出せよ』
……それって、本当に?
「柊!!」
『……あっ』
「ぼーっとすんな!まだ一発当てただけだ!」
『う、うん!』
——集中しろ。
さっきのは、まぐれだったかもしれない。
颯が前へ出てくれている分、
頭を動かして霊力を練るのが僕の役目だ。
「はぁ……はぁ……」
『……颯!』
息が上がっている。
時間がない。
消耗する霊力量も考えてやらないと。
せめて解毒できればいいのに……!
シュルルルッ!!
「……っ!」
身体が横へ跳んだ。
さっきまで僕たちが立っていた場所を、蔦が突き抜ける。
「ふん」
ミラが右手を持ち上げた。
シュルシュルシュルッ!!
地面から三本の蔦が伸びる。
「柊!」
『わかった!』
右腕に霊力を流す。
迫ってきた一本目を、腕で弾いた。
ガキィンッ!!
「……っ!」
残りの二本が足元へ伸びた。
「旋霊風——払!」
ビュオッ!!
蔦が横へ流れる。
その隙間を抜け、颯が踏み込んだ。
「……ほう」
ミラの表情が変わった。
カツンッ!!
ハイヒールが地面を蹴る。
——来る!
『颯!左から!』
「わかってる!」
ミラの脚が跳ね上がった。
ヒュッ!!
「……っ!」
颯が上体を反らす。
目の前を細い踵が通り過ぎた。
「いくぞ!」
『うん!』
右拳に霊力を集める。
——大丈夫。
ちゃんと、調整できてる。
「おらぁっ!!」
ドゴッ!!
「……っ!」
僕たちの拳が、ミラの脇腹を捉えた。
ミラの身体が横へ流れる。
カツン、カツンッ!!
ヒールを滑らせ、数歩後退した。
「……おのれ」
ミラが脇腹へ手を当てた。
当たった……!
さっきまで、あんなに速く感じていたのに。
「やっぱできんじゃねぇか!」
『……うん!』
力任せじゃなくて。
ちゃんと、考えて——。
「……わしを殴ったな」
ミラの瞳が、僕たちを捉えた。
「調子に乗るなよ」
シュル……。
砕け散った蔦が、地面の上で動き始める。
「多少、霊力の扱いが変わっただけじゃろう」
ミラが指先を持ち上げた。
シュルルルルッ!!
周囲の蔦が、一斉に蠢く。
「それで、わしに勝てると思うたか?」
ブワッ!!
頭上の薔薇が揺れた。
「……!?」
香りが……急に濃く……!?
ドクン!!
「……あ……!」
胸の奥が締めつけられる。
指先が痺れて動かない。
『颯!!』
「……っ、くそ……!」
颯が右手を持ち上げる。
だけど。
ブル……。
腕が震えていた。
「……はぁ……はぁ……!」
息が、苦しい。
さっきよりも、ずっと。
霊力はまだある。
それでも、毒が身体の自由を奪う。
「……畜生……!」
颯が歯を食いしばった。
「先ほどより、動きが鈍いのう」
カツン。
ミラが、一歩踏み出す。
「さて、どこまで持つか」
「……っ!」
颯が構えた。
シュルッ!!
右から蔦が迫る。
ガキィンッ!!
右腕で蔦を弾いた。
だけど——。
シュルッ!!
二本目が迫る。
「柊!左!」
『……っ、うん!』
左腕へ霊力を移す。
しかし。
『颯!』
颯の動きが、間に合わない。
「……っ!!」
ガッ!!
蔦が左腕へ絡みついた。
「くそっ!柊!」
『うん!』
颯が巻き起こした風に、霊力を乗せた。
「旋霊風——爆!!」
バァンッ!!
圧縮された風が、一気に弾けた。
腕を締めつけていた蔦が、粉々に砕け散る。
「……よし!」
——できた。
だけど。
「……っ、はぁ……!」
颯が、肩で息をした。
身体が、ふらつく。
——おかしい。
霊力は、まだある。
技だって、ちゃんと出せた。
なのに——。
シュルルルッ!!
「……っ!?」
足元から、新たな蔦が伸びた。
颯が避けようとする。
だけど、足が動かない。
『颯!?』
僕が叫んだ時には、もう遅かった。
ドゴォッ!!
「ぐあっ!!」
蔦が、僕たちの身体を横殴りにした。
ドサッ!!
地面に叩きつけられる。
痛い。
一瞬、僕の意識まで揺れた。
「……っ、はぁ……!」
颯が地面に手をついて立ち上がろうとする。
ガクッ!!
「……っ!?」
膝が折れた。
『颯!』
「……っ、大丈夫だ……!」
大丈夫じゃない。
僕にはわかる。
颯が、どれだけ無理をしているのか。
颯が前に出てくれたからって、身体の状態が変わるわけじゃない。
僕たちは、同じ身体を使っているんだから。
「……しぶといのう」
ミラが首を傾げた。
シュルシュル……。
僕たちの周囲で、蔦が持ち上がる。
……まずい。
このままじゃ。
「柊……!」
『……うん!』
意識を集中させる。
もう一度。
——あと一回だけでも!
颯が顔を上げる。
「……っ、旋霊——」
シュルルルッ!!
蔦が迫った。
「……くそっ!!」
颯が右拳を突き出した。
その瞬間。
ドクン!!
「……あ……っ!」
颯の身体が、大きく揺れた。
——え?
胸が、締めつけられる。
指先の感覚が、薄れていく。
僕は、霊力を集めている。
だけど、颯の意識が朦朧としている。
——風が、起きない。
「……ぐっ……っ!」
颯が胸を押さえた。
身体が、地面に崩れ落ちる。
「……終わりじゃな」
ミラが指を曲げる。
シュルルルルッ!!
無数の蔦が、僕たちへ向かってくる。
避けなきゃ。
颯!!
「……っ!!」
身体が動かない。
——間に合わない。
その時。
シュピィンッ!!
「……え?」
鋭い音が響いた。
「……何じゃ?」
ミラが顔を上げた。
目の前の蔦が、ぴたりと動きを止める。
シュピピピンッ!!
立て続けに、斬撃の音が響く。
ピシッ……!
ドームを覆う蔦に、切れ目が浮かび上がった。
次の瞬間。
ドサァッ!!
切り取られた蔦が、薔薇の花ごと内側へ崩れ落ちた。
「……あっ!」
ドームの壁に、人が通れるほどの四角い穴が開いていた。
その向こうから、冷たい風が吹き込んでくる。
——斬られた……?
「……誰じゃ?」
ミラが、穴の向こうを睨みつけた。
僕たちも、そちらへ視線を向ける。
一つの人影が立っていた。
その手には、霊力を帯びた刀が握られている。
『……あ!』
見覚えのある霊刀。
まさか——。
「……まったく」
聞き覚えのある声がした。
「完全に読み違いじゃないの」
人影の隣から、桃色の髪が見えた。
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:10月25日12時
第三百五十八話 タイトル未定




