第三百五十六話 失敗したって、俺がいる
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Side:颯
「……っ、はぁ……はぁ……!」
身体の主導権は、俺に移っていた。
シュルルルッ!!
「うおっ!?」
身体を捻り、迫ってきた蔦をかわした。
重い。
身体が、思うように動かねぇ。
「……チッ」
さっきまで柊が受けていた痛みも、そのまま残ってやがる。
『颯!大丈夫!?』
「問題ねぇ!」
足元に風を巻き起こす。
ビュオッ!!
蔦を吹き飛ばし、ミラから距離を取った。
「柊!お前は霊力の方に集中しろ!」
俺が前に出ていれば、できるはずだ。
「身体は俺に任せていい!!」
『……わかった!』
——頼むぞ。
お前なら、使いこなせる。
篝の話を聞いた後だから、不安になんのもわかる。
また暴走したら、どうする?
俺だって、
そんなこと、考えねぇわけじゃねぇ。
だけど、今は信じる。
お前の力は傷つけるためにあるんじゃない。
誰かを守るためにあるんだって。
「……ふぅ」
息を吸った。
胸が痛ぇ。
視界の端がぼやける。
カツン。
ミラが、ゆっくりと一歩踏み出した。
「意識を代えたか」
「だからなんだよ」
「霊に身体の主導権を握らせるとは、馬鹿げた話じゃな」
ミラが嘲笑う。
「霊など、力を得るための道具でしかないのに」
「……は?」
俺が眉をひそめた、その時。
シュルシュルシュルッ!!
「うおっ!?」
左右から蔦が迫った。
左の蔦を避ける。
「柊!!」
『……っ、うん!』
右手に霊力が灯った。
少し強いか?
いや——。
「旋霊拳」
右手を振り抜く。
「祓撃!!」
バキッ!!
右から迫ってきた蔦を砕いた。
「今の、悪くねぇ!」
『違う!強すぎる!』
納得してねぇってか。
俺が姿勢を戻そうとした瞬間、
「……っ!?」
身体がふらついた。
「はぁ……!」
毒で霊力を削られてる上に、身体が言うことを聞かねぇ……!
シュルッ!!
「っと!」
風を巻き起こし、横から伸びた蔦を弾く。
その直後。
ドゴッ!!
「ぐあっ!!」
脇腹に衝撃が走った。
ミラの蹴りだ。
——速ぇ!!
地面を滑りながら、どうにか踏みとどまる。
「意識を変えて、何か意味があったのか?」
ミラが首を傾げた。
「退屈じゃな」
「……っ、うるせぇ!」
右手を突き出す。
ビュオッ!!
風がミラへ向かって走った。
しかし。
カツン。
ミラが軽く身体を傾けただけで、風は空を切った。
「こそばゆいな」
シュルルッ!!
「……っ!」
足元から蔦が伸びる。
飛び退こうとした瞬間、膝ががくりと折れた。
「……くそっ!」
『颯!!霊力乗せる!』
「頼む!」
左手を地面に叩きつける。
「旋霊風——払!」
ゴオッ!!
風圧で蔦を押し返そうとした。
「弱いな」
シュルシュルシュル!
——霊力が、足りねぇ!
蔦が俺の足へ絡みつこうとしていた。
「柊!!」
『ごめん!!』
硬化された霊力が足を覆った。
ガキィンッ!!
伸びた蔦が弾かれる。
俺は後方へ飛んで、距離を取った。
「……はぁ……はぁ……!」
なんとか防いだ。
けど——。
まずいな。
このままじゃ、柊が霊力を使いこなせるようになる前に、俺が潰される。
『……颯』
「あ?」
『僕……失敗するのが怖い』
「……っ」
強すぎたら、想定外に被害を出しちまうかもしんねぇ。
だけど、弱すぎたらこちらがやられちまう。
だから、ちゃんと考えて使わなきゃいけねぇ。
「怖ぇって思うのは、別に悪くねぇ!」
そりゃ怖くて当然だろ。
それだけのモン使うんだから。
「怖ぇって思いながらやるから、気ぃつけられんだろ!?」
シュルッ!!
迫る蔦を、風で切り裂く。
「……っ、はぁ……!」
視界が揺れた。
くそっ。
あんまり時間がねぇ。
「柊!!」
内側の柊へ向かって叫んだ。
「失敗したって、俺がいる!!」
——お前と俺なら、さ。
「やらずにやられる方が、嫌だろ!!」
『颯……』
「落ち着いて考えろ!
力が強くなったって、基礎は変わってねぇはずだ!」
俺たちは、これまで何度も訓練を重ねた。
いろんなやつらと戦ってきた。
だからこそ、
今は感覚でやっちまってるとこも多いのかもしれねぇ。
「光流とか奏とか、狛さんに教わったこと、
もっかい思い出すんだよ!」
『……基礎を、思い出す……』
「何度も、俺と一緒にやってきただろ!?」
初めから、上手くいくことなんか少ねぇ。
それでも、
どうせできねぇなんて決めつけたこともねぇだろ。
『……うん!』
柊の声が、胸の奥に響いた。
『もう一回、やってみる!』
「おう!!」
シュルッ!!
ミラの背後から伸びた蔦が、俺の右側へ回り込んできた。
「……っ!」
避けるか?
いや、弾く!
「柊——!」
『……』
集中しているのがわかった。
じわっ……。
右腕に霊力が滲む。
……お?
さっきより少ねぇ。
だけど、足りなくもねぇ。
シュルッ!!
柊の霊力で硬化した腕が、右から迫る蔦を弾いた。
ガキィンッ!!
「……よし!」
『……颯!』
「その調子だ!!」
シュル……シュルシュル……。
「何を喜んでおるのやら」
ミラの蔦が絡まり合い、
一本の巨大な鞭を形成していく。
その鞭の先端に、無数の棘が生えた。
「柊!やるぞ!」
拳を構える。
『颯!』
「風だろ!?」
任せろ。
「旋霊拳——」
グワッ!!
蔦の鞭が迫る。
右拳に、柊の霊力と俺の風が重なった。
——そうだ。それでいい。
「疾風!!」
拳を振り抜く。
バァァァンッ!!
青い光と風が、混じり合って爆ぜた。
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:10月23日21時
第三百五十七話 タイトル未定




