第三百四十八話 もっと、強くなる
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「御影が落ちたな」
常夜ノ会本部。
今日も蝋燭の灯りが暗闇に揺れる。
「そんなことより」
ミラは腕を組み、ソファに腰掛ける“あの方”を見下ろしていた。
「お主、わしに隠しておったな」
その顔つきは、明らかに不機嫌だった。
「……何のことだ?」
「はっ!とぼけおって。
前から知っておったのじゃろう?」
「……」
“あの方”は何も答えない。
「霧島詠慈に息子がおった。
あの女との間の子なのじゃろう?」
ミラは捲し立てるように続けた。
「お主が異様にあの小僧にこだわる理由がわかったわい。
あの小僧がわしらの計画を潰すことを恐れておったのじゃな」
「……違う」
「じゃあ何じゃ?
あの小僧があの女の成仏に関わっておるからか?」
ミラが嘲笑う。
「あの女に消えてもらっては困るからのう」
「……初めは確かにそうだった」
「初めは?」
ミラの眉がぴくりと動く。
「今は違うと言うのか?」
「ああ」
「それなら何が目的か言うてみよ」
「……お前、本当に気づいていないのか?」
「は?」
「それもそうか。
お前は第一研究所へはほとんど足を運んでいないからな」
「何が言いたい?」
「霊の霊力は、この世への未練や恨みの強さで変わる」
「そんなことはわかっておるわ!」
ミラが声を荒げる。
それでも、“あの方”は顔色ひとつ変えなかった。
「……そういうことだ」
「はぁ?未練と恨みが何じゃと——」
ミラは目を見開いた。
「……」
暗い部屋に沈黙が流れる。
窓から風が吹き抜け、蝋燭の灯りが揺らめいた。
「……なるほどな」
「ようやく理解したか」
「ならば早く始末してしまえば良いじゃろう」
「いや。もっとだ」
“あの方”の口元が歪む。
「もっと、あの人は強くなる」
「……全く。欲深い男じゃな」
ミラは“あの方”へ背を向けた。
「ミラ」
「何じゃ?」
「第二研究所へ行ってくれ」
「はあ?」
ミラが振り返る。
「わしは装置の管理などしとうないと言ったはずじゃが?」
「違う。猫が一匹忍び込んだんだ」
「駒が足らぬからそういうことになるのじゃろう」
「いや。すでに配置してある。猫も捕獲済みだ」
「配置?誰を?」
「お前もよく知っているやつだ」
ミラは目を細めた。
「……ほう?ならば問題なかろう」
「もうじき、飼い主が猫を迎えに来る」
「既に駒がおるんじゃろう?」
「白瀬柊も来るだろう。今の配置では心許ない」
「……わしにやれと?」
「ああ。だが殺すな」
「注文の多いやつじゃ。
わしは早う霧島家を潰したくてうずうずしておるのに」
ミラは再び“あの方”に背を向けると、
部屋の出口へ向かって歩き始めた。
「で?
何人来るのか知らんが、その駒とわしだけで足りるのか?」
「喝采を連れて行け」
「……喝采?」
ミラの足が止まる。
「完成したのか?」
「ああ。お前の指示には従うよう調整してある」
「……はは!
記憶のない人間は扱いやすくて良いのう」
カツン……カツン……。
「間違えて殺してしまったらすまんな」
「ミラ」
ミラの背中が暗闇に消えていく。
「見くびるなよ」
“あの方”の声が落ちた。
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※次回更新:10月17日12時
第三百四十九話 正直、怖い




