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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百四十八話 もっと、強くなる


 ***


「御影が落ちたな」


 常夜ノ会本部。

 今日も蝋燭の灯りが暗闇に揺れる。


「そんなことより」


 ミラは腕を組み、ソファに腰掛ける“あの方”を見下ろしていた。


「お主、わしに隠しておったな」


 その顔つきは、明らかに不機嫌だった。


「……何のことだ?」


「はっ!とぼけおって。

 前から知っておったのじゃろう?」


「……」


 “あの方”は何も答えない。


「霧島詠慈に息子がおった。

 あの女との間の子なのじゃろう?」


 ミラは捲し立てるように続けた。


「お主が異様にあの小僧にこだわる理由がわかったわい。

 あの小僧がわしらの計画を潰すことを恐れておったのじゃな」


「……違う」


「じゃあ何じゃ?

 あの小僧があの女の成仏に関わっておるからか?」


 ミラが嘲笑う。

 

「あの女に消えてもらっては困るからのう」


「……初めは確かにそうだった」


「初めは?」


 ミラの眉がぴくりと動く。


「今は違うと言うのか?」


「ああ」


「それなら何が目的か言うてみよ」


「……お前、本当に気づいていないのか?」


「は?」


「それもそうか。

 お前は第一研究所へはほとんど足を運んでいないからな」


「何が言いたい?」


「霊の霊力は、この世への未練や恨みの強さで変わる」


「そんなことはわかっておるわ!」


 ミラが声を荒げる。


 それでも、“あの方”は顔色ひとつ変えなかった。


「……そういうことだ」


「はぁ?未練と恨みが何じゃと——」


 ミラは目を見開いた。


「……」


 暗い部屋に沈黙が流れる。


 窓から風が吹き抜け、蝋燭の灯りが揺らめいた。


「……なるほどな」


「ようやく理解したか」


「ならば早く始末してしまえば良いじゃろう」


「いや。もっとだ」


 “あの方”の口元が歪む。


「もっと、あの人は強くなる」


「……全く。欲深い男じゃな」


 ミラは“あの方”へ背を向けた。


「ミラ」


「何じゃ?」


「第二研究所へ行ってくれ」


「はあ?」


 ミラが振り返る。


「わしは装置の管理などしとうないと言ったはずじゃが?」


「違う。猫が一匹忍び込んだんだ」


「駒が足らぬからそういうことになるのじゃろう」


「いや。すでに配置してある。猫も捕獲済みだ」


「配置?誰を?」


「お前もよく知っているやつだ」


 ミラは目を細めた。


「……ほう?ならば問題なかろう」


「もうじき、飼い主が猫を迎えに来る」


「既に駒がおるんじゃろう?」

 

「白瀬柊も来るだろう。今の配置では心許ない」


「……わしにやれと?」


「ああ。だが殺すな」


「注文の多いやつじゃ。

 わしは早う霧島家を潰したくてうずうずしておるのに」


 ミラは再び“あの方”に背を向けると、

 部屋の出口へ向かって歩き始めた。


「で?

 何人来るのか知らんが、その駒とわしだけで足りるのか?」


「喝采を連れて行け」


「……喝采?」


 ミラの足が止まる。


「完成したのか?」


「ああ。お前の指示には従うよう調整してある」


「……はは!

 記憶のない人間は扱いやすくて良いのう」


 カツン……カツン……。


「間違えて殺してしまったらすまんな」


「ミラ」


 ミラの背中が暗闇に消えていく。


「見くびるなよ」


 “あの方”の声が落ちた。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:10月17日12時

第三百四十九話 正直、怖い

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