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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百四十三話 今はまだ、一緒に


 ——冷たい。


 篝くんの体温は、

 初めて手を握ったあの日と同じだった。


「味方だよ」


 きつく抱きしめた。


 少しでも、

 君の身体が温まるように。


「……柊くん」


 篝くんの額が、僕の胸に触れた。


「僕は、君のことも傷つけるかもしれないよ」


「……うん」


 ゆっくりと身体を離す。


「君の話を聞いて、怖いって改めて思った」


「……え?」


 篝くんが顔を上げた。


「君のことも、僕のことも」


 君の力が怖くないとは言い切れない。

 

「それくらいさ、

 力を使うって簡単なことじゃないんだよね」


『……』


 もしかしたら、

 颯もそう思っているのかもしれない。


「僕は、力がなくても守れるって知ってる」


 前に、颯が僕に教えてくれたように。


「じゃあ、力なんて使わなくてもいいのかって言われると、僕は違うと思うんだ」


 ずっと前に、君が僕に教えてくれたように。


「力がなくちゃ守れないものもあるから」


 君に力がなかったら、

 あの病院で、二人は男に消されていたと思う。


 僕が紫苑さんを止めようとしなかったら、

 颯も消されていたかもしれない。


 ただ。


「考えないといけないんだ。

 力を使ったら、どうなるのか。それでも使うのか」


 自分に言い聞かせるみたいだった。


「……僕は、ちゃんと選べるようになりたい」


 ——紫苑さんは。


 一見、自由にやってるように見えても、

 いつも冷静で、先を見据えて力を使っていた。


 “天才だから”って言葉は、

 あの人なりの覚悟だったのかもしれない。

 

「僕さ、ずっと強くなりたいって思ってた」


「……君は強くなったよ」


「うん」


 力の使い方を間違ったことは、

 反省しなくちゃいけない。


 それでも、俯いてばかりいたくない。


「僕は今の自分を好きでいたい。

 僕を大切だって言ってくれるみんなの言葉を、ちゃんと信じたいから」


 篝くんを真っ直ぐに捉えた。


「君にもそうあってほしい」


「……自分を好きになんて、なれると思わないよ」


「すぐには難しいよね」


 小さく首を振った。


 僕だって、まだ自分の全部を好きなわけじゃない。


「どうしたらいいか、これから一緒に考えよう」


 篝くんに微笑んだ。


「話してくれてありがとう。

 君が何に苦しんでたのか、やっとわかった」


 やっと、

 君の隣に立てた気がした。


 その時。


『……俺もさ、お前のことダチだと思ってるから』


 僕の中から、颯が話した。

 

『光流や奏もそうだろ。じゃなきゃ誕生日祝わねぇよ』


「……颯くん」


『こっちだって、ダチが悩んでんなら助けてぇし。

 ひとりで抱えられる方が俺はムカつくっつぅか……』


 うん。

 颯は、そうだよな。


『ほら!

 お前だって俺らや双子のことほっとけねぇんだろ!?』


「それは……」


『そういうの、こっちも思ってっから!』


 颯の声が低くなる。


『……話してくれよ』


 ——僕もそう思う。


 それに。


「僕も、君に話を聞いてほしいな」


『……俺も話すし』


「そうやって、支え合っていこうよ」


 僕は灯さんと宵くんを見た。


「みんなでさ」


「……はい」


「ええ」


 宵くんと灯さんが笑う。


『友達なんだからよ』


 だけど、

 颯の言葉に篝くんは俯いた。


「友達なら、なおさら。

 僕は、二人を還さなきゃいけないよね」


「篝様……」

 

 灯さんが表情を曇らせる。


「それは……」


 宵くんも言葉を詰まらせた。


 だけど——。


「いつかは、別れなきゃいけない時が来るよね」


 僕ははっきりと言った。

 

「でも、今すぐ別れなきゃってことじゃないと思う」


『てか契約解除したところで、

 こいつらすぐ成仏しそうな感じしねぇじゃん』


 確かに。


 僕は二人に目をやった。

 

 “成仏が近かった”って言っていたけれど、

 僕たちが初めて出会った時から、二人の存在は薄れていない。


 ——それって。


「二人もまだ……この世にやり残したことがあるんだよね」


 たぶん、篝くんが関係してる。


「今はまだ、一緒にいていいんだと思う」


 僕は篝くんへ視線を戻した。


「甘えても、頼っていいんじゃないかな」


 ——いつかその時が来たら、

 

 “もう大丈夫”って、笑顔で別れられるように。


「……そうかな」


「うん」


『そうだろ』


 僕は一歩後ろへ下がった。


「篝様」


 灯さんと宵くんが、

 両側から篝くんを抱きしめた。


「その時が来るまで、僕たちは篝様と一緒にいたいです」


「……」


 篝くんの手がゆっくり動き、

 肩を抱く二人の腕へ重なった。


「……僕も、一緒にいたい」

 

 きっと、

 二人の声は聞こえてる。



読んでくださってありがとうございます。


※10月9日・10日・11日の更新はお休みします。

12日の夜から更新再開予定です。


少し間が空きますが、引き続きよろしくお願いします。

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