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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百四十二話 友達なんだから


「篝様は僕たちを守るために守護契約を結んでくれたのです」


「そのおかげで、私たちは消されることなく、ここへ残れたのですわ」


 そうだよね。

 

 君も、

 二人を守りたかったんだよね。


「……違う」


 篝くんが顔を上げた。


「あの契約は、僕が強制したものだ」


 僕を見て言った。


「僕は、二人を縛りつけた」


「……っ」


 そんなはずない。

 二人だって選んでる。


 ……何度もそう言ってるのに。


「その力を使って、僕が病院を焼き尽くした」


 どうして、届かないんだ。

 

 相手の言葉に耳を傾けること。

 自分の思い込みで完結しないこと。


 僕たちに教えてくれたのは君なのに。


『篝』


 僕の中から、颯の声が響いた。


『お前さ、前に友達いたことねぇっつってたけどよ』


「……颯」


『あれ、嘘じゃん』


「……え?」


 篝くんが眉を寄せた。


『こいつら、ずっといたんじゃん』


「……それは僕が契約を強制したから」


『契約したら友達じゃねぇの?

 じゃあ、俺と柊は何?』


 ……僕と、颯は。


『契約したって兄弟だよ』


 そうだ。


 変わらないよ。


『メガネは、俺たちの契約も、柊の願いが結んだんじゃねぇかっつってた』


 僕たちの始まりも、

 

 “いなくならないで”っていう、

 僕の願いからだった。


『実際、そうだったのかもしんねぇ。

 でも別に俺は強制されたとも縛られたとも思ってねぇ』


 窓の向こうで雲が動く。

 日差しが、強くなった。


『あれは、柊が俺を守ってくれただけの話だと思ってる』


 ——やっぱり、眩しい。


『こいつらもそうだろ?』


「……はい」


「ええ」


 宵くんと灯さんは、静かに頷いた。


「あの時、私は願いました。篝様のお側にいたいと」


 灯さんが顔を上げる。


「宵もそうでしょ?」


「……もちろん」


 二人の視線が、篝くんを捉えた。


「僕たちは、自分たちで選びました」


『ほらな』


「……」


『友達なら、お前もちゃんと見てやれよ』


 篝くんは、

 困った顔のままだった。


「……あの日、僕は、自分のために二人を巻き込んだ」


 ——まただ。


「その後も、五年間ずっと……手放せなかった。

 二人は成仏するべきなのに、後継者でいるために利用してきた」


『それ、二人がそう言ったのかよ?』


「……二人は、優しいから」


 ああ、そうか。


『だからそう言われたわけじゃ——』


「篝くん」


 颯の言葉を遮る。


 僕は前へ出た。


「病院が燃えたことも、誰かを傷つけたことも、なくならないよ」


「……っ」


 篝くんの肩が揺れた。


「でも」


 ——君が、契約を結んだのはさ。


「守りたかったんだよね」


 篝くんを見た。


「僕は、君が二人を守りたいって思ったことまで、間違いだったとは思わない」


「……」


「二人も、自分で選んだって言ってる」


 君に、

 二人の声を受け取ってほしい。


「相手の言葉をちゃんと聞けって、僕に教えてくれたじゃん」


「……僕のせいなんだよ」


「うん。篝くんに責任がないとは言わない」


 だから、

 僕たちは考えないといけない。


 力の使い方も、

 守ることの意味も。


「——でも」


「……?」


「全部が篝くんだけのせいでもない。

 庇ってるんじゃない。僕には、そう見える」


『……柊』


「ひとりで抱え込むとさ、

 本当のこと……見えなくなっちゃうから」

 

 ——以前、僕がそうだったように。


「全部ひとりで決めないでよ」


 もう一歩、前へ出る。

 

「僕たち、友達なんだから」


「……」


 篝くんは何か言おうとして、口を閉じた。


 両手を伸ばす。


「……僕はさ」


 篝くんを抱きしめた。


「君にも、笑っていてほしいんだ」

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:10月8日21時

第三百四十三話 タイトル未定

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