↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
351/375

第三百二十八話 Episode:篝【祓い師】


 三日後。

 十哉さんに連れられ、双子は再び僕の前に姿を現した。


 カーテンの隙間から二人が見えた時、

 僕はほんの少しだけ嬉しかった。


 だけど、すぐにその気持ちを引っ込めた。


 二人が、もの凄く暗い顔をしていたから。


「……どうだった?」


「「……」」


 僕の問いに、二人は何も答えなかった。

 

 というより、

 言えなかったのかもしれない。


「今日、葬儀が行われました」


 代わりに十哉さんが言った。


「二人の遺体は、火葬されました」


「……そうなんだ」

 

 自分たちの身体が消える瞬間を見たのだろうか。


 想像するだけで、胸が痛んだ。


「ご両親の霊は見当たりませんでした」


 両親にも会えなかった。

 そして二人は、まだここにいる。


 十哉さんは淡々と続けた。


「明日から、私と一緒に外へ行きましょう」


「……明日からですか?」


 宵くんが小さな声で尋ねる。

 

「そうです。

 生前、二人が見たかったものを見に行くのです」


「……そんな気分にはなれませんわ」


「それでも行くのです」


 十哉さんの声だけが、力強かった。


 未練を抱えてこの世に留まり続けると、

 霊はいずれ霊害になってしまう。


 十哉さんは、それをよく知っている。

 

「ご両親も、もしかしたら見つかるかもしれませんよ」


「……っ会えるはずない!」


 宵くんが声を張り上げた。


「どこにいるかわからないんだ!

 外って言ったって広すぎる!」


「それに、もう成仏していてこの世にいない可能性もあるんですわよね!?」


 二人の目には、涙が浮かんでいた。


「その可能性もありますよ」


「だったら会えないじゃない!」


「だからといって、あなたたちまでここに留まり続ける必要はありません」


「……」


「ご両親は先に還って、二人を待っているかもしれない」


 ——ああ。

 優しいのに、逃げ道がない。


「あなたたち自身のために、明日から外へ行きます」


 十哉さんが振り返って外を見た。

 

 病室の窓から見える空は、分厚い雲に覆われていた。


「もし……僕たちがお父様とお母様を置いて先に成仏してしまったら?」


「できる限り、私がご両親を探します。

 成仏のお手伝いをするのも御影家の仕事ですから」


「世界は広いのに、見つかるのかしら?」


 灯さんが眉をひそめた。


「それでも」


 十哉さんが僕たちの方へ向き直る。


「狭霧様は、私の曖昧な記憶をたよりに、恋人を見つけて下さいました」


 ——恋人。

 十哉さんの、ずっと会いたかった人か。


「私も、時が来たら還るつもりです」


 十哉さんが目を伏せた。


「私も霊になったばかりの時、同じように絶望しました」


「……十哉さん」


 それは、僕も初めて聞く話だった。


「同じ世界にいても、触れられない、話せない。

 いるのに、いないのと同じ」


「いるのに、いない……」


 死んだ後も残っている人が、何を思っているのか。

 

 そんなことを考えたのは、この時が初めてだったかもしれない。


「ですが、この世界には、霊と人を繋いでくれる存在がいました。

 おかげで私は救われたのです」


 十哉さんが僕を見た。

 三人の視線が僕に集まる。


「それが御影家の祓い師。

 篝様もそのお一人なのです」


「いや、僕は——……」


 言いかけて、口をつぐんだ。


 十哉さんが迷わず、

 僕を“祓い師”と呼んだことが、

 

 痛く、嬉しかったから。


「御影家と出会わなければ、私は今この姿を保つことも、こうして二人と話すこともできなかったでしょう」


 十哉さんが双子へ視線を移す。


「だから、絶望することはないんです」


「「……」」


「死んだ後でも、誰かと繋がることはできます」


 ずっと、

 祓い師は家業だと思っていた。


 霊を祓うために、強くなるものだと思っていた。


 僕にも、

 できることがあるのだろうか。

 

「さて、私はそろそろ狭霧様の元へ戻ります」


 十哉さんがカーテンを開いた。


「また明日」


 病室には、僕と双子だけが残った。


 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:9月27日12時

第三百二十九話 Episode:篝【知らない色】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。