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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百二十一話 本当に、変わらない?


「……本当に?」


 篝くんが振り返った。


「僕は、君が思っているような人間じゃないよ」


 目が合う。


「……篝くんが思ってる僕だって、違うかもしれないよ?」


 僕は篝くんに微笑んだ。


「“事実は変わらない”って言ったよね?」


「……うん」


「これまで僕が見てきた君も、変わらないよ」


 君がどんな過去を抱えていたとしても。


「僕たちが友達なのも、変わらない」


『そうだぞ。舐めんなよ』


 篝くんが目を見開く。


「……本当に、変わらない?」


「うん」


 君を一人にしない。


「篝くんもさ」


 僕だけじゃなくて。


「これからも、友達でいてくれる?」


 ——『だから僕も君を守るよ』


 あの日、君はそう言ってくれた。


 僕も、君に一緒にいてほしい。


「……わかった」


 篝くんは窓の方を向くと、

 カーテンへ手を伸ばした。


 シャッ。


 カーテンを開く。


 陽の光が、部屋の中に差し込んだ。


 ——眩しい。


「僕も君たちに、聞いてほしい」


 篝くんは布団を退けて、

 ベッドに座り直した。


 ……僕の方を向いて。


「だけど」


 その瞳が揺れる。


「うまく話せるか、わからない」


「ゆっくりでいいよ」


「……ゴホッ、ゴホッ」


 篝くんが咳き込んだ、その時。


 ひらりと、窓の向こうから二匹の蝶が姿を現した。


「篝様」


 窓をすり抜けて篝くんの両隣に来る。


「あ……」


 蝶は淡い光を弾けさせ、人間の姿に変わった。


 ——宵くんと、灯さん。


「大丈夫ですか?」


 灯さんが篝くんの膝に両手を乗せる。


「うん。ありがとう」


「篝様」


 宵くんは篝くんの肩を抱きながら、

 僕たちの方を向いた。


「僕たちが話してもいいでしょうか」


 覚悟を決めた目だった。


「あの事故は、僕たちにも責任がありますから」


「そんなことない。

 あれは、僕の意思でやったことだ」


「僕たちの意思でもありました」


 宵くんの手に力が籠った。


「白瀬柊、颯」


「……はい」


「さっきの君たちの話、聞かせてもらった」


「盗み聞きしたみたいでごめんなさい」


 灯さんも僕たちを見る。


「篝様だけに、話させたくありませんの」


「……あの日」


 宵くんが眉をひそめた。


「僕たちもそこにいたから」


「篝様、よろしいですか?」


 灯さんの問いに、篝くんは静かに頷いた。


「違うところがあったら、言ってくださいね」


「……今から、五年前」


 宵くんが静かに口を開いた。


「篝様は、あの病院に入院していました」


 誰かが階段を登ってくる音に、

 僕たちは気づかなかった。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:9月21日21時

第三百二十二話 Episode:篝

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