第三百十五話 俺がいれば
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Side:颯
霧島詠慈に会った。
門前ですれ違った、あの日以来。
三度目だった。
ドクン……ドクン……。
民宿に着く少し前から、
柊の心臓はやたらうるさかった。
だから俺も勝手に構えちまってた。
会ったら何か起こるような気がしたんだ。
「どこまで知った?」
『……』
いざ会ってみると、
急に頭が冷えた。
冷静でいたかったのかもしれねぇ。
だってよ。
「僕に封印をかけたのも……
十七年間……一度も僕に会いに来なかったのも……
僕を守るためだったんですよね」
兄貴の声、震えてたから。
「やっと会えたね」
霧島詠慈が半面を外した。
『……似てんな』
声も、顔も、
まとっている雰囲気も。
ああ。
こいつら、
血のつながった親子なんだな。
何ていう感情なのかも、
どっちの感情なのかも、
正直よくわからなかった。
「全て、君を守るためだった」
守るために、
封印をかけて柊の前から消えた父親。
柊の望んだことじゃねぇ。
正しい選択じゃなかったかもしれねぇ。
それでも。
『覚悟してたからだろ』
霧島詠慈は、
この方法で柊を守ることを選んだんだ。
柊も、自分で選べばいい。
——じゃあ、俺は?
元の身体に戻りてぇ。
そのために、
俺たちは祓い師の世界に踏み込んだ。
俺一人じゃ、柊みたいには戦えねぇ。
今こうして戦えるのだって、柊の力があるからだ。
だったら、俺は柊を支えたい。
危険から遠ざける方法じゃなくて、
そばで力になりたい。
そのために、
誰かを殴る覚悟はできてる。
——柊は?
——『守る奴が一番暴力的なんだって⭐︎』
強くなっても、
紫苑のあの言葉を気にしてる。
力の使い方だって、
迷ってるように見える。
また誰かを傷つけるのが、怖ぇんだろう。
——『君を信じてる』
柊はもう、
俺を“守ってやらなきゃいけないやつ”だとは思ってねぇ。
じゃあ何で、
俺たちの共霊は解けねぇんだ。
俺がいれば、
お前は大丈夫だろ。
たとえ暴走したって、
俺が止めればいい。
——『柊!落ち着け!!』
『……』
いや。
あの時も、俺はいた。
何度も呼んだ。
それでも柊は止まらなかった。
止めたのは、狛さんだった。
また、ああなったらどうする?
俺が止められなかったら?
篝みたいに、
力を抑えられなくなったら——。
『……あ』
俺。
柊がまた暴走するのが、
怖ぇのか。
こいつはそんな奴じゃねぇ。
——『みんなを守るために使うよ』
わかってる。
ドクン……。
柊の心臓が鳴った。
——『本当は颯が柊から出たくないんじゃね!?』
『……』
あの時は、何言ってんだって思った。
俺だって、さっさと共霊解きてぇ。
だけど——。
『……もしかして』
柊が俺を手放せねぇんじゃねぇ。
俺が、
柊を一人にできねぇのか?
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:9月17日21時
第三百十六話 タイトル未定




