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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百十五話 俺がいれば


 ***


 Side:颯


 霧島詠慈に会った。


 門前ですれ違った、あの日以来。

 

 三度目だった。


 ドクン……ドクン……。

 

 民宿に着く少し前から、

 柊の心臓はやたらうるさかった。


 だから俺も勝手に構えちまってた。


 会ったら何か起こるような気がしたんだ。


「どこまで知った?」


『……』


 いざ会ってみると、

 急に頭が冷えた。

 

 冷静でいたかったのかもしれねぇ。


 だってよ。


「僕に封印をかけたのも……

 十七年間……一度も僕に会いに来なかったのも……

 僕を守るためだったんですよね」


 兄貴の声、震えてたから。


「やっと会えたね」


 霧島詠慈が半面を外した。


『……似てんな』


 声も、顔も、

 まとっている雰囲気も。


 ああ。


 こいつら、

 血のつながった親子なんだな。


 何ていう感情なのかも、

 どっちの感情なのかも、

 正直よくわからなかった。


「全て、君を守るためだった」


 守るために、

 封印をかけて柊の前から消えた父親。


 柊の望んだことじゃねぇ。


 正しい選択じゃなかったかもしれねぇ。

 

 それでも。


『覚悟してたからだろ』


 霧島詠慈は、

 この方法で柊を守ることを選んだんだ。


 柊も、自分で選べばいい。


 ——じゃあ、俺は?


 元の身体に戻りてぇ。


 そのために、

 俺たちは祓い師の世界に踏み込んだ。


 俺一人じゃ、柊みたいには戦えねぇ。

 今こうして戦えるのだって、柊の力があるからだ。


 だったら、俺は柊を支えたい。

 

 危険から遠ざける方法じゃなくて、

 そばで力になりたい。


 そのために、

 誰かを殴る覚悟はできてる。


 ——柊は?


 ——『守る奴が一番暴力的なんだって⭐︎』


 強くなっても、

 紫苑のあの言葉を気にしてる。


 力の使い方だって、

 迷ってるように見える。


 また誰かを傷つけるのが、怖ぇんだろう。


 ——『君を信じてる』


 柊はもう、

 俺を“守ってやらなきゃいけないやつ”だとは思ってねぇ。


 じゃあ何で、

 俺たちの共霊は解けねぇんだ。


 俺がいれば、

 お前は大丈夫だろ。


 たとえ暴走したって、

 俺が止めればいい。


 ——『柊!落ち着け!!』


『……』


 いや。

 

 あの時も、俺はいた。

 

 何度も呼んだ。

 

 それでも柊は止まらなかった。


 止めたのは、狛さんだった。


 また、ああなったらどうする?


 俺が止められなかったら?


 篝みたいに、

 力を抑えられなくなったら——。


『……あ』


 俺。


 柊がまた暴走するのが、

 怖ぇのか。


 こいつはそんな奴じゃねぇ。


 ——『みんなを守るために使うよ』


 わかってる。


 ドクン……。


 柊の心臓が鳴った。


 ——『本当は颯が柊から出たくないんじゃね!?』


『……』


 あの時は、何言ってんだって思った。


 俺だって、さっさと共霊解きてぇ。


 だけど——。


『……もしかして』


 柊が俺を手放せねぇんじゃねぇ。


 俺が、

 柊を一人にできねぇのか?


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:9月17日21時

第三百十六話 タイトル未定

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