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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
ほどける心音

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第三百九話 二人だけで


『おはようございます』


「おはよー!!」


 光流くんがスピーカーボタンを押した。


『朝から元気ですね……』


「そう?ありがと!!」


『別に褒められてねぇだろ』


 颯が呟いた。


『それで、何かあったんですか?』


「奏ちゃんに聞きたいことあって〜!」


 一瞬、光流くんの視線が僕をとらえる。


「柊と颯が、篝くんのとこ行きたいんだって!」


『……篝くんですか?』


「そ!」


『紺士様ではなくて?』


「うん!篝くんが心配だからって!」


「……あ」


 ……どう思われただろう。


『……柊くんらしいですね』


「だよね!」


 光流くんが笑った。


 その笑顔に、

 少しだけ胸が軽くなる。

 

「でも、今どこにいるかわかんないからさ〜。

 霧島家の人ならわかるかなーと思って!」


『どうでしょう……?』


「……」


 わずかな沈黙が流れる。


 僕は拳を握りしめた。


「奏さん。

 僕の母さんと深雪さん、それから詠慈さんは高校の時の同級生だったらしいんだ」


『え?』


『仲良かったんだってよ。

 だから詠慈ってやつなら、深雪さんが行きそうなとこ知ってるかもしんねぇだろ』


「深雪さんの実家とか〜?」


 光流くんが首を傾げた。


『……可能性はあると思いますが。

 昨日の今日で、詠慈様が教えてくれるかわかりませんよ?』


「御影家が久世家についたから〜?」


 だけど、

 狭霧さんたちは久世家に同意したわけじゃない。


 ……仕方なかったんだ。


「御影家は味方のままだと思うけど……」


『それは私もわかりますよ』


 奏さんの口調が少しだけキツくなる。


『だけど御影家が久世家に従う以上、

 情報は流れると思った方がいいんじゃないですか?』


「……うん。そうだね」


 奏さんは霧島家の人間だから。


 僕たち以上に、

 家同士のことを考えなきゃいけないんだ。


 それもわかるけど……。


「篝くんに会いに行くだけでしょ?」


 光流くんが眉をひそめた。


「別に俺ら、詠慈さんたちがどこにいるかを久世家側にバラすわけじゃないし。な?」


「うん」


『おう』

 

『それでも、話す内容には十分気をつける必要があるかと。久世家は常夜とも繋がってますから』


「でも、俺らを狙う理由って今までより減ってない?

 こっちに紫苑さんいないし」


『……常夜が私たちを執拗に狙っていたのは、紫苑さんがいたからだけなのでしょうか』


 その時。


『あのさぁ!』


 颯が声を上げた。


『んなこといちいち言い出したら、何もできねぇだろ!』


「……颯」


『何かやってきたら、その時はぶっ飛ばせばいいだけだろ!?』


 やっぱり、颯は強い。


「まあ確かに〜?

 篝くんの後にはボスとのご対面も控えてるしね」


 光流くんが苦笑いした。


「奏ちゃん。

 お願いしちゃって悪いんだけど、聞くだけ聞いてみてよ」


『……わかりましたよ』


 スマホの向こう側から、

 奏さんのため息が漏れた。


『響に連絡してみます。少し待っていてください』


「奏さん、ありがとう」


 ——プツッ。


 奏さんが僕の言葉に答えることはなく、電話が切れた。


『奏、イラついてんな』


「状況が状況だからね〜……ってヤバ」


 スマホを触る光流くんの指が止まった。


「通知めちゃ溜まってる〜」


「何の?」


「クラスのグルチャ!」


 光流くんがスマホの画面をスワイプする。


「斎賀先生、しばらく謹慎だってよ。

 “担任不在やばくね?”って話になってるわ」


『F組ってメガネが担任だったな』


「“俺今日休む”っと……」


 光流くんが返信を送ってすぐ。


「うわ!電話かかってきた!!」


 光流くんがスマホを耳に当てる。


『おい光流〜!!』


 スマホから男子生徒の声が響いた。

 スピーカーにしてないのに。


『お前まで休むのはなしだわ!!

 文化祭は置いといても明日体育祭な!?』


「……明日、体育祭か……」


 ぽつりと呟いた。


『文化祭終わったら、最後の練習あるから!!』


 そう言えば、光流くんは応援団だったな。


「いや雨止まないし、たぶん体育祭延期じゃん?

 体育館も使用禁止だしさ〜」


『晴れにすんだよ!!』


「……」


 バン!!


 突然、部屋の扉が勢いよく開いた。


「だからうっせぇんだよ!てめぇら!!」


「うわっ!姉ちゃん!!」


 ……デジャヴだ。


「朝っぱらから騒ぐんじゃねぇ!……っ、おぇっ……」


 光知瑠さんが口元を押さえる。


「あらあら。みっちー、大丈夫ゥ?」


 麗子さんが現れ、光知瑠さんの背中をさすった。


「……トイレ……おぇっ……」


「昨日から酷いわねェ」


 光知瑠さんがお手洗いの方へ走って行く。


「ごめん、後でLINEするー!」


『とにかく休むなよ!!』


「考えとく!!」


 光流くんは通話終了ボタンをタップすると、麗子さんを見上げた。


「姉ちゃん大丈夫そ?」


「どうかしらねェ……」


 麗子さんは片手を頬に添え、お手洗いの方を見ていた。


「ママも昨日の営業で飲みすぎて潰れてんのよ。

 アタシ、しばらく二人についててあげたいんだけど〜」


「そうして〜」


「……あ」


 麗子さんは動けない。


 光流くんも学校に呼ばれてる。


「光流くん」


 僕は光流くんを真っ直ぐ見た。


「今日は、僕と颯で行くよ」


「いやいや俺も行くよ!!」


『んでもお前学校行かなきゃなんだろ?』


「それもそうだけど〜……あ!奏ちゃんからDM!」


 光流くんがスマホの画面を見ながら、内容を読み上げた。

 

「【響と連絡がとれました。詠慈様に会えるとのことです】」


「……!」


『よかったな』


 会えるんだ。

 身体の奥が熱くなる。

 

 ……今度こそ、

 目を見て話してくれるだろうか。

 

 光流くんが続きを読む。


「【ただし、柊くんと颯くんの二人だけで来て欲しいそうです】」

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:9月12日15時

第三百十話 家族だもの

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