↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
離れられない心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
319/373

第二百九十六話 Episode:狛【次】


「は?見舞い?」


 正座する俺と父さんの前で、

 紺士様はソファにふんぞり返って目を細めた。


「はい。

 紫苑様が怪我をしたのは、俺を助けたせいなので」


 紫苑は禁式を使ったあと、病院へ運ばれた。

 俺も意識を失っていて、

 目を覚ました時にはもう紫苑はいなかった。


 どこを、どんなふうに傷ついたのかも、

 俺は何も知らなかった。


 うっすらと記憶にあるのは、

 狼の鳴き声と、柔らかい髪の感触だけ。


 その日のうちに俺は自宅へ戻り、

 翌朝、父さんと一緒に久世家へ謝罪に来ていた。


「いらんいらん!」


 紺士様が顔の前で大袈裟に手を振る。


「ですが紺士様……!」


 父さんが食い下がる。


「別に大したことねぇから!つか謝罪もいらん!」


 紺士様はタバコを取り出して咥えた。


「だって俺損してねぇもん!あはははははは!!」


 部屋に豪快な笑い声が響く。

 

 紺士様がタバコに火をつけた。


「むしろ謝んのは紫苑ちゃんじゃね?

 お前んちの守護霊消えちゃったっしょ⭐︎?」


 紫苑の禁式で、俺の守護霊は消えた。


 今の黒狼と同じ種の、黒い狼の獣霊。

 祖父から譲り受けたものだった。


「とんでもございません」


 父さんは深く頭を下げた。

 俺も急いで畳に頭をつける。


「紫苑くんのおかげで、狛は助かりました」


「あーまあそうねー?」


「ジャーキーも悔いはないと思います」


「は!?ジャーキーって何!?」


「……俺の守護霊の名前です」


 ……祖父がつけた名前だ。


「センス悪!!あはははははは!!

 お前酒飲みだったっけ!?」


 紺士様はタバコを深く吸い込んで吐き出した。

 煙が部屋に広がっていく。


「ん〜。まあどうしても謝罪したいっつーならさぁ」


 紺士様がにっこりと笑う。


「紫苑ちゃんのこと預かってよ⭐︎」


「え?」


 父さんが視線を上げて聞き返した。


「いやあいつ禁式使ってっから破門になるし⭐︎

 うちには置いとけねぇもん」


「……破門……」


 やっぱり、免れないか。


 俺は眉をひそめた。


「中坊は一人暮らしできねぇだろ?

 施設にぶち込むわけにもいかねぇし」


 紺士様は他人事みたいに軽々しく話した。

 仮にも、紫苑の叔父なのに。


「中学卒業するまででいいよ。金は婆さんが出すだろ」


「……よろしいのですか?」


「よろしいよろしい⭐︎

 あ、あいつ食細いからそんな金かかんねぇと思うぞ!

 浮いた金で酒でも飲めば⭐︎?」


 俺は視線を上げて父さんを見た。

 父さんと目が合う。


「……」


 父さんは笑った。


「喜んでお預かりさせて頂きます」


「お!マジで!?助かる!!」


 ——紫苑が、うちに来る。

 

 まだ一緒にいられる。


「でもさ〜」


 紺士様が俺を見た。


「あいつ歪んでっから大変だよ?」


「いえ」


 ——俺は。


「そうは思いません」


「あー、あれね!」


 紺士様が人差し指を斜めに立てる。


「ピサの斜塔!!」


「はい……?」


「真っ直ぐだったら誰も見に行かねぇもんな⭐︎!」

 

 十二歳の俺には、よくわからない話だった。


 ただ、

 まだ次があることだけはわかった。

 

 もう二度と守れないのはごめんだ。


 ——あの時、確かにそう誓ったのに。


 五年後、常夜の研究所で。

 紫苑は二度目の禁式を使った。


 また、俺を助けるために。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:9月2日21時

第二百九十七話 Episode:狛【同じ】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。