↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
離れられない心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
317/370

第二百九十四話 Episode:狛【友達】


 五年前。春。

 春風に桜が舞う中、俺は紫苑に出会った。


「……初めまして」


「は?」


 正直、驚いた。


 ——小さい。

 

 俺の頭ひとつ分小さい。

 学ランの袖も裾も余っている。


 だけど霊力は本物だった。


 最初のうちは、リムジンの中でも学校でも、

 身体が震えないよう必死に耐えていたことをよく覚えている。


 ……護衛役が震えてるなんて、洒落にならないからな。


「東雲狛です」


 自然と紫苑を見下ろす形になった。


 もっと、

 ゴツくてデカいやつだと勝手に思っていた。


 大きくて丸い目が俺を捉える。

 白い頬には、さらりとした紫の髪がかかっていた。


 ……綺麗な顔だと思った。


「今日から、あなたをお守りします」


「……」


 この子が、久世紫苑。

 

 強いのはわかった。

 孤独かどうかはまだわからない。


 だけど、

 瞳は人形みたいに虚だ。


 綺麗な紫色なのに。


 *


「どう見ても僕より強そうに思えないんだけど」


 あの頃から、紫苑は口が悪かった。

 

 暴言を吐くわけじゃない。

 言っていることは理に適っている。

 

 ……言い方だろうか?

 遠慮がないと言うか、何と言うか。


 そんな感じだったから、

 紫苑はいつもクラスで一人だった。


 ——確かに孤独な子だ。


 最初は、

 紫苑の振る舞い方にも問題があると思った。


 相手が紫苑じゃなかったら、

 “もっと気遣えよ”とか“言い方考えろ”とか、

 俺はきっと説教していただろう。


 まあ、今ならするんだが。


 しばらく一緒にいて、何となくわかった。


 紫苑は、人が嫌いなんじゃない。


 最初から、近づかないようにしているだけだった。


 ——『生まれた時から命を狙われている』


 そんな環境で育ったなら、

 そうなるのも無理はないと思った。


 それでも紫苑は、

 

 挨拶を無視しない。

 

 時間を守る。

 

 くだらないと言いながらも、

 人の話はいつも最後まで聞いている。


「そこの答え間違ってますけど」

 

 ……教師のミスを指摘するくらいに。


 だから、

 本当に人が嫌いなわけじゃない。


 そして——


「ずっと僕の近くにいなくてもいいって言ってんの」


 言い方は乱暴だったけど、

 紫苑は俺のことを心配しているのだと思った。


 俺の教科書がなくなった、あの日。


「あげる」


 紫苑は自分の教科書を俺に差し出した。


「花曇りの向こう——」


 何も見ないで、あの物語を読み上げた。


 春。

 新しい場所で出会った二人が、少しずつ言葉を交わしていく話。


 最初は互いのことなんて、ほとんど知らない。


 ……何となく、俺たちみたいだと思った。


 久世とか後継者とか、

 そういうのは関係なくて、


 友達になりたいと思った。


 あの時、

 

 護衛だからじゃなく、

 俺自身が紫苑を守りたくなった。


 ——敵ばかりじゃないんだと、

 紫苑に知ってほしかった。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:8月31日21時

第二百九十五話 Episode:狛【鈴の音】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。