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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
離れられない心音

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第二百六十一話 俺たちの力


 ***


 Side:颯


「兄弟だからな」

 

 バキィッ!!


 受け止めていた紫苑の鉄槌を、力任せに弾き返した。


「わお⭐︎」


「……すげぇな」


 指先から溢れる霊力を見つめた。


 でも、これは俺たちの力だから。


 俺だって使いこなしてやる。


 俺は拳を握りしめた。

 

 ——ずっと。

 よくわかんねぇイライラが胸んとこにあった。


 柊を困らせてぇわけじゃねぇ。

 それでも、自分の気持ちを言葉にできなくて、怒鳴ることしかできなかった。


 よく考えりゃ、

 お前だっていっぱいいっぱいだったのにな。


 また、自分の気持ちばっかぶつけてた。


 ——『君を信じてる』


 お前は、お前なりに答えを出した。


 俺は、ちゃんと受け取った。


 だから今度は俺の番だ。


 血筋とか才能とか、そんなん関係ねぇ。

 

 俺も兄貴を信じる。


『颯、来る!』


 紫苑の鉄槌が迫る。


「……っ!」


 相変わらず、クソ速ぇ!


 上体を反らしながら、一歩後ろへ下がる。


 すぐにもう一撃。


 だけど——見える。


「オラァ!!」


 鉄槌目掛けて足を振り抜いた。


 ガキィン!!


「……硬っ……!」

 

「ひっこめよ雑魚霊⭐︎」


「うるせぇ!!」


『颯!』


 足に青白い霊力が集まる。


 ——柊だ。


 鉄槌と靴底の間で、火花が弾けた。


『押し切れ!!』


 ググッ……!


 紫苑の鉄槌が、わずかに後ろへ沈む。


 ——いける!


『颯!罠だ!』


「罠!?」


 鉄槌から、急に力が抜けた。


「っ!?」


 俺はバランスを崩して前へ傾いた。


 ——さっき柊がやられたやつ!


「クソが!!」


 足を地面へ踏み下ろして軸にする。

 

 身体を一気に捻った。


 ——柊、合わせろ。


「旋霊脚——」


 足元から、風が渦巻く。

 青白い霊力が、もう片方の脚を螺旋状に包み込む。


「天廻!!」


 ドガァッ!!


 回し蹴りが、紫苑の脇腹を捉えた。


 風が爆ぜ、庭の水が円状に吹き飛ぶ。


「……っ⭐︎」


 それでも、紫苑の身体はわずかに浮いただけだった。


 風まで乗せてんのに飛ばねぇ……!?


 その一瞬の隙を、紫苑は見逃さなかった。


 ガシッ!


「なっ!?」


 紫苑の左手が俺の足首を掴んでいた。


「捕まえた⭐︎」


「このヤロ……!」


 そのまま身体を引かれる。


『颯!!』


 視界が反転した。


 ダァァンッ!!


 背中に衝撃が走る。


「……ってぇ……うっ!」


 みぞおちに硬い靴底が食い込んだ。


「だから雑魚は引っ込んでろよ」


「……かっ……」


 ぐり、と踏み込まれる。

 肺の中の空気が搾り出された。


「柊に代わったら?」


「……っせぇな……!」


 ブワァッ!!


 突風を巻き起こす。


「わあ⭐︎」


 紫苑の足が、わずかに浮いた。


 その隙に横へ転がる。


 立ち上がろうと顔を上げた瞬間——


 紫苑が、俺へ人差し指を向けていた。


 その先に、圧縮された霊力が瞬く。


 やられる!!


 咄嗟に両腕を交差して頭を守った。


「ばーん⭐︎」


 ガキィン!!


 ……!?


 腕に、わずかな衝撃。

 

 痛みはある。

 だけど、大したことねぇ。


 ミスったか!?

 いや、紫苑が失敗するわけねぇ!


「柊の力だよ⭐︎」


「は!?」


 鉄槌が迫る。

 急いで立ち上がった。


 やばい、間に合わねぇ!


 再び左腕で頭を庇った。


 ガキンッ!!


 まただ。

 硬い何かに鉄槌がぶつかる音。


 攻撃が当たってんのに、衝撃が薄い。


 ——膜みてぇなのに守られてる……!?


『颯!霊力だ!』


「霊力!?」


『受ける瞬間だけ霊力を纏うんだ!』


「んだそれ!?」


「お喋りしてる余裕あんの〜⭐︎?」


 ミシ……。


 紫苑が鉄槌に力を込めた。

 左腕が押される。


「……っ!」


 俺は後ろへ飛んで距離をとった。


『旋回の応用だ!僕にもできる!

 だから守りは任せて!』


「……マジかよ……!」


『颯は思いっきりやって!!』


 理屈はわかんねぇけどよ……!


「——上等だ!!」


 俺は地面を蹴った。


 やってやるよ。

 思いっきり。


 紫苑目掛けて、一直線に駆ける。


「正面から来るんだ⭐︎」


 拳に力を込める。

 青白い霊力が集まっていく。


 紫苑が鉄槌を振りかぶった。


「お前が守ってくれるんだろ!?」


『守る!!』


 俺は、一歩も引かなかった。


「旋霊拳——!」


 拳を前へ突き出した。


 霊力が旋回する。


「祓撃!!」

 


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:8月5日21時

第二百六十二話 突破

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