↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
聞こえない心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
272/339

第二百四十九話 知らない時間


 颯紫さんは、

 母さんのことを慕っていた。


 ——芽衣さん以上に。


 ——『今日で丸五年ですか。……早い』


 母さんの命日。墓石の前。


「……白い彼岸花」


 小さく呟いた。


 あの花は、まるで。

 “連れて帰る”ための花みたいだった。


 背筋がぞくりと冷えた。


「……だからね」


 深雪さんが指先で涙を拭う。

 

「颯紫くんが綾ちゃんを傷つけるとは考えにくいのよ」


 深雪さんは肩掛けポーチからスマホを取り出すと、

 座卓の上に置いて僕たちに画面を見せた。


「あ……」


 ——写真。

 

 少しだけ画質が荒くて、

 数年前のものだとわかった。


「綾ちゃんも、教え子の三人をとても信頼していたわ」


 画面の中で微笑む、

 母さんと制服を着た男女。


 緊張した顔つきの斎賀先生の左隣に、

 笑顔でピースする芽衣姉さん。


 芽衣さんの右手は、

 隣に立つ母さんの腕をしっかり掴んでいた。


 それから、

 母さんの隣で腕を組んで立つ、颯紫さん。

 

 ——僕たちの知らない時間。


「十年前の写真だよ」


 狭霧さんの両手が、顔から離れる。

 

 狭霧さんは微笑んでいた。


 僕の隣で、篝くんも。


「……良い写真だね」


『全然知らなかったな』


「うん。僕も聞いたことなかった」


 母さんは使い分けていたんだ。


 母親としての顔と、

 祓い師としての顔を。


「三人は十年前から……」


 狭霧さんは一呼吸置いて言った。

 

「綾が御影家出身であることも、

 柊くんと颯くんの存在も知っているんだ」


「え……!?」


 母さんが御影の人間ってことも……?


『あのメガネ!やっぱ知ってたのかよ!!』


「だけど、三人ともずっと黙ってくれていた」


 狭霧さんが僕を見る。


「だから君たちも、今日まで知らなかったんだろう?」


「……はい」


 斎賀先生も。


「君たち家族を、祓い師の世界に巻き込まないこと。

 それが、綾の願いだったんだよ」


 母さんの願いを叶えるために。


 僕たち家族を守るために。


「綾の願いを、三人とも守ろうとしてた」


『ウソじゃなさそうだな』


「……うん」


 ——なのに。


「でも、今……。

 斎賀先生と颯紫さんは仲が良くないみたいでした」


 あの河川敷で、斎賀先生は。

 

 明らかに颯紫さんに怒っていたから。


「……そうなんだね」


 狭霧さんは顎に右手を添えた。


「今はわからないけれど、

 綾が亡くなる前までは、本当に仲が良かったんだよ」


 関係が動いたのは——母さんの死後。


 この五年間。


 芽衣さんの失踪。


 斎賀先生と颯紫さんの亀裂。


 一体、何が。


「……私はね、芽衣ちゃんの失踪と綾ちゃんの死が無関係だとは思えないの」


 深雪さんはスマホをポーチに戻した。


「だけど、芽衣ちゃんとも颯紫くんとも連絡がつかない」


「……斎賀先生は?」


「聞いたことはあるわ。

 それでも、何も答えてくれなかった」


『知らねぇわけねぇだろ』


「——だけど」


 篝くんの手が僕から離れた。


「今なら何か教えてくれるのかもしれない」


 隣を向くと、

 篝くんは僕を見て言った。


「君たちはもう、真実を知り始めているのだから」


 母さんの死には、何か隠されていた。


 そして、

 鍵を握っているのは斎賀先生だ。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:7月19日15時

第二百五十話 あの日の事故

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。