第二百四十三話 だから僕も君を守るよ
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Side:柊
僕と篝くんは覆面パトカーの中にいた。
ハンドルを握るのは若い警察官。
学園の後処理と狠くんの事情聴取で“僕は動けないから”と、三岳警部補が呼んでくれた人だ。
「岸です」
それだけ名乗ると、警察官は前を向いた。
エンジン音が唸る。
車は学園の門を潜り抜け、表通りへ出た。
学祭ライブの音が遠くなっていく。
「柊くん」
後部座席。
僕の隣で、
篝くんは前を見たまま話した。
「僕が実家へ君を連れて行くのは、
共霊した君を匿うためだけじゃない」
「……うん」
つまりそこは——御影本家。
『話があんだろ』
答えたのは颯だった。
きっと、
僕たちは知ることになる。
「これから行く場所は」
窓の外から差し込んだ夕陽が、
篝くんの白い頬を照らした。
「君のお母さん——白瀬綾さんの実家でもあるんだ」
「……っ!」
母さんの。
『母さん……』
僕だけじゃない。
僕の中で、
颯の感情が動くのがわかった。
「……篝くん。いつから知ってたの?」
「ずっと前だよ」
『だから俺らの前に現れたのかよ?』
「それは違う。だけど——」
わずかな沈黙が流れた。
「……全く関係ないとも、言えない」
篝くんの首が僕の方へ動く。
ぱちりと、目が合った。
「君と僕は同じでもあるからね」
「あ……」
「前にも言ったけれど、
僕は僕の目的のために、君たちを見てきた」
——『共霊が破滅なのか、救いなのか。君たちの答えを、僕に見せて』
あの夜の君の言葉。
忘れるはずがない。
「僕が動き始めた時、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったし。
だから僕は君の秘密を明らかにするつもりなんてなかった」
「……うん」
「それを知って救われる人もいないと思っていたし」
篝くんが再び前を向く。
「だけど君は自分で真実に辿り着いた」
僕だけが、
篝くんの横顔から目を逸させなかった。
「そして、さっきの君の姿を見て思ったんだ」
赤信号で車が止まる。
「君が覚悟を決めたなら、僕も君のために話そうって」
篝くんは困ったように笑った。
「……君は、僕にとって観察対象だったはずなんだけどね」
午後六時十五分。
夏より少しだけ早く、
陽が沈んでいく。
「困ったことに、そう思えなくなっていたみたいだ」
世界が、夜に飲まれていく。
「だから僕も君を守るよ」
運転席では、
岸さんがバックミラーへ視線を向けていた。
車はそのまま、夕暮れの街を走り続ける。
車の上空では二匹の蝶が舞い、
緋と蒼の光を撒き散らしていた。
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:7月15日21時
第二百四十四話 俺は?




