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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
聞こえない心音

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第二百四十三話 だから僕も君を守るよ


 ***


 Side:柊


 僕と篝くんは覆面パトカーの中にいた。


 ハンドルを握るのは若い警察官。

 学園の後処理と狠くんの事情聴取で“僕は動けないから”と、三岳警部補が呼んでくれた人だ。


「岸です」


 それだけ名乗ると、警察官は前を向いた。


 エンジン音が唸る。

 車は学園の門を潜り抜け、表通りへ出た。

 

 学祭ライブの音が遠くなっていく。


「柊くん」


 後部座席。

 

 僕の隣で、

 篝くんは前を見たまま話した。


「僕が実家へ君を連れて行くのは、

 共霊した君を匿うためだけじゃない」


「……うん」


 つまりそこは——御影本家。


『話があんだろ』


 答えたのは颯だった。


 きっと、

 僕たちは知ることになる。


「これから行く場所は」


 窓の外から差し込んだ夕陽が、

 篝くんの白い頬を照らした。


「君のお母さん——白瀬綾さんの実家でもあるんだ」


「……っ!」


 母さんの。


『母さん……』


 僕だけじゃない。

 

 僕の中で、

 颯の感情が動くのがわかった。


「……篝くん。いつから知ってたの?」


「ずっと前だよ」


『だから俺らの前に現れたのかよ?』


「それは違う。だけど——」

 

 わずかな沈黙が流れた。


「……全く関係ないとも、言えない」


 篝くんの首が僕の方へ動く。


 ぱちりと、目が合った。


「君と僕は同じでもあるからね」


「あ……」


「前にも言ったけれど、

 僕は僕の目的のために、君たちを見てきた」


 ——『共霊が破滅なのか、救いなのか。君たちの答えを、僕に見せて』


 あの夜の君の言葉。

 忘れるはずがない。

 

「僕が動き始めた時、まさかこんなことになるとは思ってもいなかったし。

 だから僕は君の秘密を明らかにするつもりなんてなかった」


「……うん」


「それを知って救われる人もいないと思っていたし」


 篝くんが再び前を向く。


「だけど君は自分で真実に辿り着いた」


 僕だけが、

 篝くんの横顔から目を逸させなかった。


「そして、さっきの君の姿を見て思ったんだ」


 赤信号で車が止まる。


「君が覚悟を決めたなら、僕も君のために話そうって」


 篝くんは困ったように笑った。


「……君は、僕にとって観察対象だったはずなんだけどね」


 午後六時十五分。

 

 夏より少しだけ早く、

 陽が沈んでいく。


「困ったことに、そう思えなくなっていたみたいだ」


 世界が、夜に飲まれていく。

 

「だから僕も君を守るよ」


 運転席では、

 岸さんがバックミラーへ視線を向けていた。


 車はそのまま、夕暮れの街を走り続ける。


 車の上空では二匹の蝶が舞い、

 緋と蒼の光を撒き散らしていた。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:7月15日21時

第二百四十四話 俺は?

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