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二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
聞こえない心音

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第二百三十四話 信用されてねぇみてぇだろうが


 ***


 Side:颯


 伊吹の霊力が俺に流れた。


 柊のものとはまた違う。

 だけど、力がみなぎる感じは同じだ。


「今紫苑くんと戦えるのは、君たちしかいないよ!!」


 伊吹が叫んだ。


「……んなこと、わかってるよ!!」


「雑魚が敵うわけなくない⭐︎?」


 紫苑が鉄槌を肩に乗せた。


「雑魚じゃねぇよ」


 伊吹の力を借りても、

 紫苑とは圧倒的な霊力差がある。


 そんなんはハナからわかってる。


 ——『頭使いなさいよォ』

 

 弱いからって勝てないわけじゃない。


 これまで麗子に散々教わってきたからな……!


「颯!!」


 柊が俺を呼んだ。


 ちらりと目をやる。

 ……視線は合わねぇ。


 不安そうに眉を寄せる顔だけが見えた。


「危ねぇのは俺じゃなくてお前だろ……!」


 だから。


 守る。


 拳を構えた。


「秒殺だね⭐︎」


 紫苑の影が動く。


 ——来る!


 ブンッ!!


 鉄槌が振り下ろされる。


「……っ!」


 咄嗟に横に飛んだ。

 鉄槌を纏う霊力が頬をかすめる。


 速っ……。


 視界の端に、鉄槌の影。


「うおっ!」


 両足で飛び上がる。

 

 下からまた鉄槌。


 空中で身体を捻ると、

 ギリギリで避けた。


「へぇ⭐︎?」


 紫苑が片眉を上げる。


「見えてんの⭐︎?」


「見えてねぇよ」


 紫苑の背後へ着地すると——


「勘!!」


 背中へ、拳を振るった。


「馬鹿じゃん⭐︎」


 スカッ!


「!?」


 消えた。


「遅い⭐︎」


 左から——


 ドゴッ!!


 鉄槌が肩に入った。


「ぐっ……!」


 吹き飛ばされる。


 床に転がった。


 痛ぇ……!


 でも。

 見えなくても避けられた。


 勘は通じる。


「颯!?」


 柊の声が聞こえた。


 心配すんなよ。


「信用されてねぇみてぇだろうが……!」


 立ち上がった。

 

 だけど——

 輪郭が薄くなってやがる。


 たった一発食らっただけだろ……!?


「颯くん!!」


 伊吹の声。

 暖かい霊力が流れ、輪郭が戻った。


「……死ねないって厄介だよね〜⭐︎」


 もう、目前。


「!?」


 身体を逸らす。


 もう一発来る。


 ブンッ!!


 しゃがみ込んで避けると、

 転がるようにその場を離れた。


「本当に見えてないんだ⭐︎?」


 ——考えろ。

 俺に、できること。


 正面からじゃ無理だ。


 一瞬でいい。


 視界の端で、転がったパイプ椅子が目に入った。


「……風……!」


「雑魚のくせにしぶとくてウザ〜⭐︎」


 紫苑が地面を蹴る。


 ブワァッ!!


 ——風。

 

 装飾とパイプ椅子が勢いよく舞い上がり、

 紫苑の視界を塞いだ。


「うわ⭐︎」


 一瞬。

 

 鉄槌が止まった。


 その瞬間——


「うおおおお!!」


 左側から突っ込んだ。


 拳を振るう。


 紫苑の顔面へ。


 ——スカッ。


「は!?」


「僕に効くわけないだろ⭐︎」


 その声は、

 もう背後。

 

「そんな子供騙し⭐︎」


 ドガッ!!


 背中へ鉄槌がめり込んだ。


「がっ……!?」


 肺の空気が抜ける。


 身体が宙に浮いた。


 そのまま、

 壁へ叩きつけられる。


 ドガァンッ!!


「……く……っ!」


 身体中痛ぇ。

 

 また、霊力が切れる……!


「……クソッ!!」


「食霊法!!」


 青白い光が俺へ流れ、

 身体に力が戻った。


 紫苑が振り返る。


「だから邪魔すんな⭐︎」


 紫苑が指を伸ばした。

 

 その先に——伊吹。


「……っ!」


 やべぇ!


 バシュッ!!


 青い光が弾丸みたいに飛んだ。


「あ——」


 伊吹が目を見開く。


「伊吹!!」


 俺は伊吹の前へ飛び込んだ。


 ズバッ!!


 光の弾丸が、俺の胸を穿つ。


「……っつ……!!」


 ——激痛。


 視界が白む。

 息が吸えねぇ。


 身体が透けていく。


「……はぁ……はぁ……」


 それでも。


「……残念だな……」


「は⭐︎?」


 紫苑が眉をひそめた。


「……俺は」


 消えねぇ。


「半霊だからな」


「知ってるけど⭐︎」


「簡単には、終わらねぇよ」

 

 紫苑が嘲笑う。


「ドMなの⭐︎?続けても痛いだけだよ⭐︎?」


「うるせぇ!」


 拳を握り締めた。


「おい柊⭐︎」


 紫苑が柊を見る。


「お前の弟、ボコボコだけど〜⭐︎?

 そこで突っ立ってるだけで良いわけ〜⭐︎?」


「……っ!」


 柊は左右を見渡していた。


 必死に俺を探してやがる。


 ……共霊してぇんだよな?


 俺だって、お前の力が欲しいよ。


 だけど——

 

「俺もお前の音、聞こえねぇんだよ……!」


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:7月8日21時

第二百三十五話 二人で

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