第二百三十話 信じません
「紫苑さん!?」
「はいはーい⭐︎」
ガシャン!!
「!?」
振り返ると、
体育館の扉がひとりでに閉まっていた。
「邪魔者が来ると困るからね〜⭐︎」
「あれは……!?」
扉に、円状の模様が浮かび上がる。
……封印?いや、結界か?
「ま、時間の問題かもだけど⭐︎」
紫苑さんの肩には、鉄槌が担がれていた。
その表情は暗くてよく見えない。
僕は目を細めた。
この人は、
文化祭を楽しみに来たわけじゃない。
「一体、何をしに来たんですか……?」
「壊しにきてあげたの⭐︎」
答えは早かった。
「壊す……?」
「そう」
少しずつ目が慣れてきて、
紫苑さんの表情が見えてくる。
「お前のこと⭐︎」
紫苑さんが、笑った。
ドゴォォン!!
鉄槌が床を砕く。
体育館の床板が吹き飛んだ。
「……っ!」
「今のお前はただのゴミだし〜⭐︎」
紫苑さんは鉄槌を右手で軽々と回した。
「んで、お前の次は篝だな⭐︎」
紫苑さんが左手の指を折る。
「あと桃華?
奏と光流は雑魚だからいつでも良いし⭐︎」
「……僕たちを潰しに来たんですか?」
「そうだよ⭐︎」
——本当に?
「そこのうるさい雑魚霊が、”お前やっぱり寝返ったのか”とか言ってるけど〜⭐︎
僕は元々久世の人間だから⭐︎」
「……信じません」
「お前、これまで見てきたでしょ⭐︎?」
紫苑さんはため息を吐いた。
「弱い奴が下、強い奴が上〜⭐︎
使えない奴は切り捨てる⭐︎」
「……っ……」
「それが僕だろ?」
確かに、
初めは仲間だと思えなかった。
……それでも。
「……違う」
今は、知ってる。
商店街でも。
研究所でも。
福くんと別れた、あの日も。
この人は、皮肉を言いながら。
いつも、
僕たちを守ってくれていた。
「僕は好きに動くって言ったじゃん⭐︎」
言葉が、全てじゃないんだ。
特に、この人は。
僕は拳を握りしめた。
「仲間ですよね?」
「どういう文脈でそうなんの⭐︎」
「言葉じゃないです」
真っ直ぐに、紫苑さんを捉えた。
「あなたを見ていて、そう思ったから」
紫苑さんが瞬きする。
「きしょ⭐︎」
「何かあるんですよね!?」
「……」
紫苑さんは鉄槌を構えた。
「お喋りタイム終わりで良い〜⭐︎?」
「何かを守ってるんじゃないんですか!?」
「だから黙れって⭐︎」
一瞬。
もう、僕の目の前にいた。
防げない。
逃げられない。
——やられる。
紫苑さんが鉄槌を振り下ろす。
その風が僕の顔をかすめた。
なのに——。
「……?」
……痛くない。
「邪魔だよ雑魚霊」
低い声が落ちた。
「颯!?」
心臓が止まりそうになった。
あの攻撃を受けたのか。
「良かったね⭐︎半霊で」
紫苑さんは体育館の端を見ながら言った。
「じゃなかったら消えてたね〜⭐︎」
紫苑さんの視線の先を振り返る。
あそこに、
颯が吹き飛ばされたんだ。
「ま、補給役もいないし⭐︎?
もう僕には触れられないだろうけど⭐︎」
ドクン……ドクン……。
心臓が音を立てる。
握りしめた拳が震えた。
「紫苑さん」
「何⭐︎?」
「颯に手を出すな」
「……」
にやり、と紫苑さんが口の端を上げる。
「封印されてるんでしょ⭐︎?」
「……っ……」
言葉に詰まる。
「今のお前に何ができるの?」
僕は無意識に、ヘソの上のアザを押さえていた。
——熱い。
「弱い奴には誰も守れないよ〜⭐︎?」
紫苑さんが嘲笑う。
だけど。
「……守ります」
僕は紫苑さんを睨み返した。
次の瞬間。
紫苑さんの姿が消えた。
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:7月5日12時
第二百三十一話 大丈夫?




