第二百二十九話 フィナーレ
***
Side:柊
気付けば午後の当番も終わっていた。
途中、光流くんのお母さんと光知瑠さんが来てくれた。
やはり麗子さんも一緒だったらしく、
その時間だけ、中から異常に悲鳴が響いていた。
だけど。
紫苑さんも、あの青髪の少女も、
姿を見せなかった。
『これより文化祭一日目フィナーレを開始します!
全校生徒は速やかに校庭へ集合してください!』
「おつかれーい」
「ミスターコンどうなったかな〜!?」
校内放送で、生徒たちが動き始める。
「奏さん、校庭行く?」
営業を終え、電気がついたお化け屋敷は、
段ボールや百均の小道具だらけで。
さっきまで怖かった場所とは思えないくらい、手作り感満載だった。
「私はメイクを落としてから行きます……」
奏さんは疲れ切っていた。
真面目な奏さんだから、
不本意でも最後まで役目をやり切ったんだと思う。
「柊くんは先にどうぞ。
最初はミスターコンの結果発表でしょうし」
「あ……」
光流くん、それから篝くんたちは。
あれから会わなかったけど、どうだったんだろう。
ミスターコンの結果発表か……。
——『柊くーん』
また、ステージ上から名前を呼ばれる予感がした。
「……僕も後で行こうかな。待ってていい?」
「構いませんが、少し時間かかりますよ?」
「大丈夫。ゆっくり落としてきて」
「ありがとうございます」
奏さんがそっと空中へ手をかざした。
「今は、誰もいませんから」
クラスメイトは皆すでに校庭へ向かっている。
「颯くんと話せますよ」
奏さんはそれだけ言って、お手洗いへ向かった。
「……颯」
ブレザーのポケットからスマホを取り出すと、すぐに颯に取られた。
【お前、女の趣味悪い】
「え、何の話?」
【青髪の女だよ!見惚れてただろ!】
「いや見惚れてないよ!!」
【声でけぇ!】
「あっ!」
慌てて口を押さえた。
【あいつも俺のこと見えてたぞ】
声を潜める。
「……だよね」
あの子。
本当に、
紫苑さんと何か関係があるのかも。
カチカチッ!
「!?」
突然、教室の電気が消えた。
他には誰もいないのに。
【おい!】
ガラッ!
教室のドアが開く音。
やっぱり人の気配はない。
【霊害!】
「え?」
次の瞬間だった。
スマホが勢いよく廊下へ飛び出した。
颯が追う気だ。
「ちょっと……!」
僕は慌ててスマホの後を追った。
廊下に出る。
幸い、校舎にはほとんど人が残っていない。
「……どこまで行くの!?」
スマホは止まらない。
階段を一気に駆け降りた。
一階の廊下を走り抜け、渡り廊下に出る。
この先は——体育館だ。
「今年のミスター瑞峰は——!」
校庭からミスターコンの声が響く中、
渡り廊下を飛ぶように走った。
ガンッ!
スマホが体育館の扉に当たって落ちた。
「中だよね!?」
スマホを拾い上げて扉を開く。
——暗い。
照明は落ちている。
暗幕を完全に締め切った体育館は、
まるで闇の中にいるみたいだった。
「霊害は!?」
何も見えない。
だけど——。
ゾワッ!!
鳥肌が立った。
足がすくむ。
何かが、起きている。
僕の手からスマホが離れた。
【霊害、消えた】
【あいつだ】
ギシ……。
木の床が軋む。
足音が、近づいてくる。
暗闇の向こうで、
誰かが立ち止まった。
「——久しぶり」
馴染みのある声が響いた。
「凡才⭐︎」
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:7月4日15時
第二百三十話 信じません




