表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
聞こえない心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
250/257

第二百二十七話 本当のこと


 ***


 化学準備室。

 斎賀先生は、既に疲弊していた。


「あの、篝くん……」


「?はい」


 パイプ椅子に腰掛けた篝が微笑む。


「何をしてるんですか?」


「文化祭を見に来ました」


「……そうですよね」


 先生は力無く頷いた。


「いやね、良いんですよ。

 君がうちの生徒であることは知っていましたし、

 通信制の生徒にも文化祭に参加する権利はありますから」


「ふふ……」


「——だけど」


 先生は、ビシッと化学準備室の入り口を指差した。


 扉の向こうで——


「イケメンどこ行った!?」


「絶対捕まえろ!!」


 女子生徒の声と、廊下を走る足音。


「ほら!!聞こえた!?

 君は目立つんだから!!自覚して下さい!!」


「僕は地味な方なんだけどなあ」


「顔が派手なんですよ!顔が!!」


 次の瞬間。


 ジュッ。


 先生の髪が、小さく燃えた。


「あちー!!」

 

 先生が焔を手で叩き、慌てて消火する。


「ちょっと、何するんですか!?」


「僕は何もしてませんよ」


 ふわりと降り立つ——宵と灯。


「無礼者に罰を与えただけだ」


「篝様を侮辱するなんて許せませんわ!」


「こらこら。宵、灯」


 篝は眉を寄せて微笑んだ。


「燃やしちゃ駄目だよ。学校なんだから」


「……申し訳ありません」


「失礼しましたわ」


「もっとちゃんと怒ってね!?

 僕、髪燃えてるからね!?」


「そんなことより、先生」


「そんなこと!?」


「久世颯紫は、一体何者なんですか?」


 篝の低い声に、

 空気が張り詰める。


「……っ」


 先生の顔つきが変わった。


「……僕の古い友人ですよ」


「それだけですか?」


「ええ」


「ふふ……。

 先生、何か知っていますよね」


「……何のことでしょう?」


 篝は、先生を真っ直ぐに見た。


「綾さんの死について」


 部屋に重い沈黙が落ちた。


「……」

 

 先生の視線が逃げる。


 篝の瞳が細められた。

 ……何かを確信したように。


 また、

 廊下を走る足音が聞こえる。


「来ますね」


「え?」


「ふふ……」


 篝が微笑んだ瞬間——


 ガチャガチャッ!!


「先生ー!!」


 化学準備室の扉が開き、

 あの明るすぎる声が響いた。


「ちょっと光流くーん!」


 光流の背後から伊吹が顔を出す。


「返してよー!」


 光流の手には、伊吹のニット帽とサングラス。

 

「篝くん、これ貸すー!変装用!

 んで、伊吹さんと狠くんが一緒に文化祭回ってくれるってー!」


「ボク一言も良いって言ってないんだけど〜!!」


 騒ぎながら化学準備室へ入ってくる二人。

 その後ろから来た狠が、扉の鍵を閉めた。


「狠くん!?」


 斎賀先生が声を上げる。


「狛くんは!?どうなったんですか!?」


「あ、そうだ。俺も聞こうと思ってた」


 光流は篝へニット帽とサングラスを手渡すと、パイプ椅子に腰掛けた。

 

 伊吹が狠を見上げる。


「……狠ちゃん」


 狠は一度だけ伊吹を見た。


「兄さんは——」


 狠の視線が床へ落ちる。


「まだ、謹慎中です。

 兄さんがやったという決定的な証拠が見つかっていないので、調査は難航しています」


「そうなんだ〜」

 

「そうですか……」


「君のお兄さんが、本当にそんなことをするのかな」


 尋ねたのは、篝だった。


「拳銃を作ったり、人を傷つけたり」


「それは——」


「君に秘密を負わせるとも思えないし」


「篝くん……!」


 伊吹が思わず狠の前へ出た。


「お兄さんにも何か事情があるんだろうけど」


 篝は構わず続けた。

 

「真実を明らかにすることと、約束に従うこと。

 どちらが大切なんだろうね?」


「……」


 狠は拳を握りしめた。

 篝が椅子から立ち上がる。


「何て、僕が言えたことじゃないけど」


 小さく呟いた。


 光流が篝に指ピストルを向ける。


「なんか知ってる風の口ぶりだよね?」


「ふふ……。本当のことは何も知らないよ」


 篝はニット帽を被った。


「文化祭、案内してくれるんだよね?」


 オレンジ色のニット帽の下、

 サングラスの奥で灰色の瞳が細められる。


 伊吹は唇を尖らせた。


「一緒に回るのは良いけど、

 ボクたちも校内よくわかってないよ〜?」


「ふふ……。

 柊くんたちのお化け屋敷に行ければ良いから」


「ダメダメ!」


 光流が腕を交差させてバツを作る。


「お化け屋敷はサングラス禁止だから行っちゃダメー!」


「……がーん」


「その顔でがーんって言うのやめて!」


 光流の笑い声につられ、伊吹も苦笑する。


 場の空気が柔らかくなる中で、

 狠だけが唇を噛み締めていた。


 まるで、何かに耐えるみたいに。


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:7月3日21時

第二百二十八話 本物

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ