第二百十六話 気付いた者
*
瑞峰学園。
非常階段の踊り場に、僕と奏さんはいた。
先ほどあった出来事を説明すると、
奏さんは目を見開いた。
「霊害が出たんですか!?」
「……うん」
「それで、“颯紫さん”という方が助けて下さったと?」
「そう」
奏さんが眉を寄せる。
「前に河川敷でも名前を聞きましたが。
一体誰なんですか、その方」
「僕も一回会っただけでよく知らないんだけど……。
斎賀先生の高校時代の友達らしい」
「斎賀先生の?」
「うん」
奏さんは腕を組み、踊り場の手すりにもたれかかった。
「味方なんですか?
半霊のこと、気付かれた可能性があるんですよね?」
奏さんの指先がトントンと肘を叩いていた。
「……わからない」
僕は奏さんから視線を逸らした。
奏さんが大きくため息を吐く。
「しかも、死ぬとこだったんですよね?」
「……」
言い返せなかった。
もし颯がいなかったら。
もし颯紫さんが通りかからなかったら。
僕は今ここにいない。
「……ごめんなさい」
それしか言えなかった。
「とにかく颯紫さんについては、斎賀先生に聞いてみましょう。
先生の友人なら、颯くんのことも内緒にしてくれるかもしれません」
「……あ」
あの日の河川敷。
颯紫さんの話をした時の、先生の顔を思い出した。
先生は、颯紫さんと仲が良いわけじゃない気がする。
僕は唇を開きかけて閉じた。
言えない。
……奏さんに、また怒られると思ったから。
踊り場に風が吹き抜け、
奏さんの切り揃えられた黒い髪が揺れた。
「……柊くんは常夜に顔が割れていると言うのに」
奏さんが独り言みたいに呟く。
「どうして詠慈様は力を封じ込めたりしたんでしょうね」
そうだ。封印。
「あの、奏さん。本家に電話って……」
「繋がりましたよ」
奏さんが僕の目を捉えた。
「響と話ができました」
「本当に!?」
「警察の取り調べが続いているようです。
しばらくは誰にも会えないと」
「そんな……」
「響は加害者ではなく、むしろ被害者として見られているそうです」
奏さんが空を見上げた。
「だから、取り調べも長くは続かないだろうと」
僕もつられて顔を上げると、
夏の青空に、白い飛行機が見えた。
「夏休み中には何とかします」
奏さんの視線は、
真っ直ぐ飛んでいく飛行機を追っていた。
——その日は。
文化祭の準備は昼前に終わり、
コンビニでお昼ご飯を買って河川敷に向かった。
河川敷で光流くんと麗子さんと合流した。
伊吹さんも、今日はもう来ていた。
みんなが特訓している様子を、
僕が高架下の日陰に座って眺めてた時。
地面に置いていたスマホが浮いた。
「……颯?」
スマホの画面を覗き込む。
【あいつ】
「誰?」
【颯紫】
胸がざわついた。
【多分俺のこと気づいてる】
読んでくださってありがとうございます。
※次回更新:6月24日21時
第二百十七話 静養中




