表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
交錯する心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
192/265

第百六十九話 本物は誰だ


 雨雲は晴れ、

 輝きを取り戻した太陽が、河川敷を照らす。


 ――舞台は、取り替えられた。


 光流くんが指を鳴らす。


 ブワッ!


 彼の幻影が、いくつも現れた。


「うぇーい!」


「やってやるぜー!」


「行くぞ麗子〜!!」


 幻影の光流くんたちが口々に話し、

 明るい声が空間を埋め尽くす。


『す、すごい……』


 でも……なんて言うか……


「うるせぇ!!」


 僕の代わりに、颯が叫んでいた。

 

「ふざけた真似を……!」


 喝采がナイフを一斉に投げる。


 ドガン!

 ドガンッ!!


 光流くんの幻影に触れ、

 ナイフが次々と破裂した。


「……きゃ!」

 

 衝撃波に、

 光知瑠さんが腕を顔の前で交差させた。


 巻き上がる土煙の中、


「――ちゃんと見てないと、本物はわからないよ」


 喝采の頭上。


 光流くんらしき影が、

 笑いながら落下する。


 喝采が見上げた。


「見えてるんですよ!」


 ナイフが投げられる。


 ドガァンッ!!


 ナイフが爆ぜ、光流くんの姿が消える。

 ――あれも、光流くんの幻影だった。


「……チッ!」

 

 喝采が舌打ちした、次の瞬間。

 背後から――


「こっちよォ……」


 ドゴォォォンッ!!


 麗子さんの拳が、打ち込まれた。


「……かっ、は……」


 ドォォォン!!


 喝采が吹き飛び、河川敷に打ち付けられる。


「……姉ちゃん、大丈夫?」


 本物の光流くんは、

 光知瑠さんを庇うように前へ立っていた。


「下がってて。もう一人の身体じゃないんだから」


 ギプスのない左手を広げ、

 光流くんが口の端を上げる。


「生まれてくるの、楽しみにしてる」


「……っ」


 光知瑠さんの瞳が潤む。


 きっともう、偽りの言葉じゃない。


 喝采が立ち上がる。

 

 颯が叫んだ。


「光流!来るぞ!」


「颯、柊!

 “今!”って思った時に、風やって!」


『え!?』


「言わなくても、もう俺ら通じ合えるっしょ?」


 光流くんは、笑った。


「本当の俺、見つけてね」


 光流くんが駆け出す。

 麗子さんがそれに続いた。


 ヒュンッ!!


 何十ものナイフが光流くんに向かって飛ぶ。

 同時に、喝采の幻影が河川敷を埋め尽くす。

 

幻影(イリュージョン)対決か」


 光流くんの目が、鋭く細まった。


 ――直後。


 ブワァッ!!


 今度は光流くんの幻影が、真正面からぶつかった。


 ナイフが飛び交い、

 麗子さんの拳が薙ぎ払う。


 その間を、

 幻影と幻影が激しく交錯した。


 ドガァン!

 ドガァンッ!!


 破裂音が響き続ける。


 僕と颯は、光流くんに変わって、

 光知瑠さんの前へ立っていた。


『……押されてる』


 光流くんの幻影の方が、消えるのが早い。


 ……だけど、

 “本物”を見失っているようには見えなかった。


「……甘いですねぇ」


 喝采の声が、重なって響く。


「幻影が脆すぎます。

 所詮、真似っこのハリボテですから、仕方ないですね」


 麗子さんが、光流くんの視線を追うように、

 一体の喝采の背後へ回り込んだ。


「うるさいのよォ!!」


 組まれた拳が、

 巨大なハンマーみたいに振り下ろされる。


 だが。


「……No.8を強化する余裕もないみたいですね」


 喝采は片手で、その拳を受け止めていた。


「……ッ!」


 次の瞬間。


 喝采の拳から、赤い霊力が爆ぜる。


「が……っ!」


 至近距離での衝撃波に、

 麗子さんの巨体が吹き飛ばされた。


 喝采が両手を広げる。


「新しく幻影を作り出す霊力も、

 もう残っていないんでしょう?」


 光流くんの幻影は、残り三体。


「全て壊せば、本物は見えますからねぇ……」


 喝采の幻影が、

 一体の喝采を守るみたいに集まり始める。


 おそらく、本物は中心。


 その時。


「――真似するだけじゃないよ」

 

 喝采の幻影の中、

 光流くんの声が聞こえた。


 あれは、

 “喝采の複製”じゃない。


 ――『本当の俺、見つけてね』


 ……まさか。


 その一体だけ、

 霊力の気配が違う。

 

 ――光流くんだ!


 喝采の姿をした光流くんが、

 にやりと笑った。

 

 その足が、ゆらりと動く。


 ――今。


 合図しなくても、

 颯は両手をかざしていた。


「旋霊嵐!!」


 ブワァァァッ!!


 僕の霊力を込めた颯の風が、

 喝采の姿をした――光流くんの足首へ渦を巻く。


「見つけてくれて、ありがとな」


 行け、光流くん。


閃光(せんこう)!!」


 青白い光が、

 視界を焼くみたいに瞬いた。


 ドガァァァン!!


 蹴りが腹部へ捩じ込まれ、

 喝采が吹き飛ぶ。


「……かっ……!」


 ザバァァァン!!


 そのまま、濁流へ落下した。


 幻影の群れが姿を消し、


 残った喝采の姿が、

 蜃気楼みたいに揺らいだ。


 現れたのは、


 見慣れた黒いヘアバンド。

 胸元に、あの十字架が光る。


「俺、お前にも成れちゃうみたい」


 ――『霊力も、もう残っていないんでしょう?』


 ……違う。


 光流くんが、

 そんなミスをするはずない。


 喝采に成りきり、

 この一撃のための力を、

 ずっと隠していたんだ。


 ――これが、

 朝倉光流の戦い方だ。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:5月19日21時

第百七十話 帰れなかった男

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ