表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
交錯する心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
189/271

第百六十六話 あなたが光


 ***


 Side:麗子


 暗黒の中、

 光流の声だけが頭に流れ込んでくる。

 

 ――『もう、疲れた』


 喉元が、締め付けられた。


「……良いのよ、光流」


 アタシが全部、受け止めるわ。


 ――『そんなの嘘でしょ。信じられない』


 ――『明るく笑ってる俺も、全部ハリボテ』


 ――『本当の俺なんて、誰も必要としてない』

 

 光流。


 きっとアンタのことだから、

 そんな風に考えてしまう自分も、嫌になったのよね。


 ……アタシね。

 

 晴信のおかげで、少しずつ記憶を取り戻してきたの。


 生前、どんな人間だったのか。

 

 何故、霊になったのか。


 それから――

 アンタに出会った、あの雪の日のこと。


 *


 一年半前。


 アタシは、常夜ノ会から逃げ出した。

 ……正確には、()()()()


 もう、霊害になる寸前だったの。


 痛くて、苦しくて。

 冷たい暗闇だった。

 

 気づいたら、あのコンビニの裏にうずくまっていた。


 もう身体は動かなくって、

 輪郭が黒いモヤに溶け出してた。


 終わりだと思った。

 そしたら、怒りと憎しみが湧いてきたの。


 なぜ、アタシがこんな目に遭わなきゃならないの?


 アタシが何をしたっていうの?


 ただ、娘に会いたかっただけなのに。


 もう死んだって言うのに、

 まだ、神はアタシを苦しめる。


 誰も、助けてくれなかった。


 ――違うわ。

 

 神も仏も、いなかったのよ。


 生まれた時から、

 アタシは“普通”じゃなかった。


『気持ち悪い』

『おかしい』


 何度、言われたことかしら。


 そうやっていつも、

 

 ……踏みつけられてきた。


 世界は、最初から腐ってた。


 ブワァァァッ!!


 吹き出した黒い影が、アタシを侵食していった。

 

 ――どうせ堕ちるなら。

 この世界ごと、呪ってやるわ。


 ……そう思いかけた時だったの。


「俺の守護霊になってよ!!」


 光流が、現れたのは。


 弾けるみたいな青白い光が、アタシを包み込んだ。


 光流の霊力はすごく温かくて、

 まるで、生き返ったみたいに思えたわ。


「……俺、困ってる女性は放っておけないんだよね!」


 アンタ、迷わず“女性”って言ったのよ。

 

 本当、出会った時から良い男。

 

 アンタみたいな人間がいるなら、

 

 この世界、まだ捨てたもんじゃないわね。

 

 *


「アタシにとっては、アンタが神様なのよ」


 だからお願い。

 

 アタシが……いいえ、

 アタシ()()が大好きな朝倉光流を、

 あなた自身が嫌いにならないで。


 願いを込めて。

 アタシはただ、光流を抱きしめた。


 言葉は、いらない気がしたの。


「光……流……」


 アタシの腕の中で、みっちが動いた。

 みっちは光流に手を伸ばし、ぎゅっと引き寄せた。


「ウチも一緒に……受け止める」


 それ以上、みっちは何も言わなかった。


 ただ、静かに――

 

 アタシたちは、

 光流を抱きしめ続けた。

 

 光流の瞳に、わずかに光が灯る。


「――俺、ここにいて、良いの?」


「……っ!いてくれなきゃダメなの……!」


 嗚咽混じりの、みっちの声。

 

 アタシは、光流の目をしっかりと見て言った。


「光流に、いてほしいのよ」


 指先に、力を込めた。


「……あ……ああ……」


 霊害が、光流の背中から顔を出す。

 光流の中から抜け出ようとしていた。


 光流の体温が、わずかに戻る。


「光流!そいつを追い出すの!!」


 アタシが叫んだ、その時。


 ――ピシッ!


 光が、星を描くように走った。


「……君を失うわけにはいかない」


 大人の声。


 軌跡が光を帯び、

 光流の身体から霊害が剥がれ落ちる。


 ――この術を使えるのは……!


「……君は、光ですから」


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:5月17日12時

第百六十七話 言葉じゃなくても

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ