表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
交錯する心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
185/276

第百六十二話 言葉にならないもの


 ***


 Side:柊

 

「んじゃ、ウチ家に戻るから!これで払っといて!」


 光知瑠さんは、千円札を乱暴に押し付けてファミレスを去った。


「お釣り、後で返さないとね」


「……おー」

 

 窓ガラスを揺らす風と、

 アスファルトを叩く雨音がうるさい。

 

 僕と颯は、動けないままだった。

 

 光知瑠さん、

 光流くんと上手く話せるのだろうか。


「人って、わかんねぇもんだな」


 弱々しい声で、颯が呟く。


「……うん」


 僕は、息を吸って吐いた。


「……僕は、一人で決めつけて、

 勝手に動くところがあるじゃん?」


「昔からな」


「最近はさ、

 ちゃんと話し合わなきゃって思ってたんだけど……」


 自分の気持ちを伝えること。

 相手の気持ちを知ろうとすること。


 その大切さを、

 僕は颯と一緒に戦う中で知った。

 

 だけど。


「“話さない”んじゃなくて、

 “話したくても話せない”人もいるんだよね」


 ――光流くんみたいに。


「なんつーかさ」


 颯はテーブルに頬杖をつきながら、隣の僕を覗き込むように見た。


「そりゃ、話した方がわかり合えるけどよ。

 話せねぇ時もあるだろ。

 

 だったら、その奥にある気持ちくらい、

 わかってやれば良かったな」


「え……?」


「前にさ、母さんが死んで……

 お前が俺を避けてた時な?

 

 俺、お前の態度にムカついてたけど、

 お前の傷ついてた気持ちも、

 多分、わかってたんだよな」


 颯の視線が逸れる。

 どこか遠いところを見ているみたいだった。


「あ……」


 僕は唇を開いたけど、言葉が上手く出てこなかった。

 

「だからよー。

 あの時、俺もお前の気持ち、

 汲んでやれば良かったんだろうなって」


「……」

 

「“お前だって辛いんだろ?わかるよ”っつってさ。

 言葉にするかしないかは別として」


 ……それはきっと、僕もだ。


「ま、結局俺がイラついてたから、

 お前のこと無視してたんだけどよ。


 俺は何だかんだ、いつも――

 自分の気持ち優先で動いちまうんだよな」


 颯は卓上のペーパーナプキンをちぎりながら話した。


「さっきも光流のためだとか思いながら、

 自分の気持ちぶつけてたしな。


 この間……研究所で

 俺、気をつけようって思ったばっかだったのに」


 颯がまた、僕を見た。


「お前は、自分より人のこと考えて動けるやつだよ。

 でも、たまにズレて独りよがりになるだろ。

 

 だから動く前に、ちゃんと相手に聞いた方が良いぞ」


「……だよね」


「まあ聞いたって、教えてくれねぇやつもいるけどな」


 颯が肩をすくめた。


「……あ」


 また、光流くんの笑顔が浮かぶ。


 言葉にしない人もいる。

 言葉にできない人もいる。


 だったら――


「表情とか行動とか……

 そういうところも、ちゃんと見ないといけないのかも」


 光流くんがやけに元気に笑う時は、

 本当は“辛い”ってサインなのかもしれない。


 そう言えば、

 光流くんの香りも、誕生日の日から変わっていた。


「……颯って、すごいよね」


「いやお前だろ」


 颯が僕の額を、人差し指で小突いた。


「いてっ」

 

「お前は、たとえ間違っててもさ、

 相手の気持ち、汲もうとはしてるじゃん。


 俺は、まずそっからだわ」


 僕は額を手で押さえた。


 ……颯は、

 こういう時、本質を見抜くのが上手い。


 僕は、

 まだ見えてないものが多いのかもしれない。

 

 ヴヴヴー!!


 テーブルの上でスマホが振動した。


「光知瑠さんだ!」


 急いでスマホを耳に当てる。

 颯も顔を寄せた。


「もしも――」


『どうしよう!!』


 動揺した声。


『光流がいないの!!』


「え……!?」


『しかも光流の部屋、窓割れてて!

 これ何か事件だよね!?』


「颯、どうしよう!」


 颯を見る。


「探しに行くしかねぇだろ!!」


『待って!ウチも行く!!』


読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:5月14日21時

第百六十三話 待ってて

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ