表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの心音――弟が守護霊になって帰ってきた  作者: しょう
交錯する心音

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
184/276

第百六十一話 Episode:光流【本音】


 *

 

「……帰れって!」


 叫んだ瞬間、自分でもわかった。

 俺はもう、限界だった。


 *


 一年前。

 俺は瑞峰学園に入学した。


 実は、

 柊の存在に、すぐ気づいてた。

 

 変な霊力持ちだったから。

 強いのに、何かに押さえつけられてる感じ。

 しかも不安定。


 それだけじゃない。

 理由はわからないけど、つい目で追ってしまう。

 誰かに似た、懐かしさがあった。

 

 だけど、柊はこっちの世界に関わりたくない人間だって見てわかった。


「力の扱い知らないんじゃ、ただの見える子だもんね」

 

 入学式の次の日。

 あの教師に声をかけられた。


「理科教師の斎賀です。

 霧島家の出身……って言えば、話早いよね?」


 斎賀先生は胡散臭かったけど、警察と知り合いだった。

 信用して良いのかもって、ちょっとだけ思えてきた。


 東雲警部に繋がって、俺は見習い祓い師になった。


 ……そこで思い知った。

 この世界、化け物みたいな奴らが普通にいる。


 紫苑さんに、狛さん。

 一歳違うだけなのに、格が違った。


 ――ここでも、いらない子になりたくない。


 ふと、ネガティブな考えが頭を過った。

 

 でも。


「アタシたちも、もっと鍛えなきゃねェ〜!

 光流!トレーニングして帰りましょ!」


 俺はもう一人じゃなかったから、保てた。


 強くなりたい。

 

 そうすればいつかまた、

 芽衣さんにも会える気がしてた。


 *


 前よりも充実した、穏やかな日々がしばらく続いた。


「光流くん!お願いがあるんです!!」


 高二になって数日後、

 斎賀先生が焦燥し切った声で電話してきた。


 事故に遭って颯が半霊になったこと、

 柊と颯が守護契約を結んでいること。


 何でそこまで先生が知ってんの?

 

 って、正直思ったけど。

 

 ……それでも、

 協力しない理由にはならなかった。


 本当は、ずっと話してみたかったし。


「僕は、白瀬柊です」


 柊は、優しくて、真っ直ぐで、純粋で。

 見てると、目が痛くなるくらい眩しかった。

 

 だから時々、

 柊の存在は俺の神経をヒリつかせた。


 多分、俺の方の問題なんだけどね。


 しかも、柊の成長はめざましかった。


 こいつは多分、紫苑さんや篝くんと同じだ。

 ――最初から、選ばれてる側。

 

 俺とは、生まれた時から違う。

 

 柊みたいにはなれない。

 そうなろうと努力しても、届かなかった。


 周りは強い奴らばっかりだ。

 敵も、仲間も。


 置いていかれる。


 また、

 俺だけ何もないままになる。


 黒い感情が、俺の中で渦を巻き始めた。


 そんな時だった。

 ハルちゃんから連絡が来たのは。


 そろそろ、

 こっちとも向き合わなきゃいけない。


 ――だけど。


 今、麗子を失ったらどうなんの?


 姉ちゃんと母さん喧嘩してるし、

 また、家族が壊れるかもしんないよ?


 そもそも、

 麗子なしの俺って、いらなくない?

 

 そういうの、全部かき消すみたいに、

 俺は無理やり、ハルちゃんに会いに行った。


 だってさ。

 会いに行かなかったら、俺卑怯じゃん。


 ――『娘に会わせる!代わりに俺のこと守って!!』

 

 あの約束、守らないわけにいかないでしょ?


 俺の願い通り、

 麗子はハルちゃんのところに行った。


 俺だけじゃない。

 みんなが、麗子が()()()()に会えるのを願ってた。

 

 だから、これで良かった。


 なのに。


 ――『もう貴方を必要としてる人、いないでしょう?』


 喝采の言葉が、何度も頭の中で響いた。

 どうしようもなく、イラついた。


 ……イラついてたんじゃない。


 ただ、傷ついてたんだ。


 何で、俺は特別になれないの?


 何で俺には――

 何にもないの?


 いつもみたいに、もう笑顔で隠せなかった。


「……っ帰れって!」


 自分でも驚くくらい大きな声が出た。


 ごめんな、柊。

 あんな顔、させたかったわけじゃない。


 ただ、

 お前みたいになりたかっただけなんだ。


 俺のせいで、みんな苦しむ。

 

 俺なんか、

 やっぱり生まれてこなきゃ良かったんだ。

 

読んでくださってありがとうございます。

※次回更新:5月13日21時

第百六十二話 言葉にならないもの

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ