閑話休題!冥界サッカー!(練習編 その2
お疲れ様でございます
やっぱりこの野郎、閑話休題に走りやがった…
そう思いの皆さん、違うんです
本編の方でちょっと時間が経った感が要るんです
決してワールドカップに触発されたなどといった理由ではありません
さておき、本日のキララ、どうぞ
Aチーム、作戦タイム中 ―――
現在円陣を組んで、どうやったらキュイから得点出来るかを相談しているところである ―――
「一人で正面から行ったんじゃ多分ダメだ。こうやって、左右の斜めからFW2人が同時にゴールに向かうんだ。どっちかを向けば、反対側の角度に隙が出来る。そこにパスを出して、空いた隙を狙うんだ」
「なるほど…」
最初は嫌がっていたポチだが、始めてみるとわりと熱中している
サッカーは好きであり、負けるのは嫌いなのだ
「ボールを取ったら疾風さんか氷雨さんに回してくれ。二人はライン際を駆け上がって、FWにセンタリングを上げて下さい」
「…承知した…」
腕を組んだまま直立している疾風、コクリと頷く氷雨 ―――
Aチーム、作戦タイム終了 ―――
その間、試合を見に来ていたベルタはキュイちゃんに紹介されていた ―――
でかい…
生まれて初めて見る生の怪獣を見上げるベルタ ―――
キュイからして見ると、ベルタはハッキリ言って一口サイズである
だが兵舎での暮らしで、人を噛んだり食べたりしてはいけないという事をキュイは覚えている
固まっているベルタに対し、キュイは伏せて背中に乗るよう促して来た
「ベルタちゃん、キュイちゃんが乗せてあげるって」
よっこいしょ、とベルタを持ち上げ、キュイに乗せるキュレーネ ―――
「大丈夫、キュレーネ?落ちたりしない?」
心配げなザムダにサムズアップし、自分もキュイの背に乗るキュレーネ
「大丈夫ですよ。私もいますから」
羽ばたきながら駆け出すと、キュレーネ達はどこかに飛んで行ってしまった ―――
選手が…2人飛んで行ってしまった…
呆然と眺めているアスモデウス
そういえば、子供の頃やってたサッカーでも夕方になると帰っちゃうヤツいたな…
アキラは昔を思い出して感慨に耽っていた
急遽、交代要員としてザムダとローザが指名され、試合は再開された
ザムダは左のMF、ローザはGKである
折角立てた作戦はふいになってしまったが、GKが普通の人になってAチームは安心した ―――
審判バゲンの笛の合図 ―――
ボールはAチームで、コーナーキックから再開される
BチームのDF陣の実力は未知数だが、イシュヴァルドはそもそもボールに触れるかどうかも怪しいし、アムストラウスは普通のおっさんで突然爆発されるのが怖いだけだ
フィッツとサリーナは少し後ろに下げ、こぼれ球が出たらゴールに蹴り込む役である
本命は奥側のゴール端付近にいる疾風、彼が跳べる高さに合わせてボールを送り込み、ヘディングシュートを狙う
コーナーにボールを置いたポチは、二歩走ってボールを蹴った ―――
狙い通りボールは飛んで行き、高々と跳び上がる疾風 ―――
「トゥッ!!」
GKローザが横っ飛びした手の僅かな先を通り抜け、疾風のヘディングはゴールネットを揺らした ―――
「ゴォオーーーーーーーーーーーーーーール!!」
審判バゲン、ゴールを宣言 ―――
ザッ、ザッ、と小走りでポジションに戻る間に、ポチと疾風がハイタッチを交わす
この忍者師弟は目配せで色々伝える事ができ、組ませると強い
「先に1点取られちまったか。やるな、純平」
「なに、この後2点取れば良いだけの事じゃ。行くぞアキラ」
1点先制され、俄かにやる気を出し始めたBチーム ―――
バゲンの笛でアスモデウスがチョンとボールを蹴ると、アバンテが猛烈なドリブルを始めた ―――
上がりながら良い位置を探すアキラとアルクだが、速攻でマークが着いた
防御的MFのアランとガベルである
どう動いてもパスコースを塞いでくる二人だが、その実アキラとアルクはアスモデウス達の道を開ける為の囮であった
グングンと上がってAチームの注意を引きつけ、囲まれる寸前に左のアスモデウスへと爆速のパスを出すアバンテ ―――
これをジャンプしながら柔らかく受けたアスモデウスは、着地と同時にロングシュートの体勢に入った ―――
まさか…ここから撃つのか?…
驚愕のロングシュート ―――
アスモデウスにとって、距離は問題ではない
問題はゴールを奪えるコースが見えたかどうかである
恐ろしい速度で飛んで来たボールはDFヤヌスの顔面に当たって跳ね返り、そっちに飛んでいたGKエドガルドの反対側のゴールネットを揺らした ―――
「ゴォオーーーーーーーーーーーーーーール!!」
「流石です、アスモデウス殿」
「ナイスパス、アバンテ殿」
ザッ、ザッ、と小走りに戻りながら、ハイタッチを交わす二人 ―――
現在救護班アキラが蘇生の杖でヤヌスを復活させている
GKキュイちゃんがいなくなったからこれで勝てると思っていたAチームは、そこで考えを改めた ―――
強え…
あの人にシュートさせたら負ける…
もうアイツを出すしかない…
司令塔ポチは、DFの一人を抜いてアスモデウスにマークを着ける事を決めた ―――
「キャーーーーーーーーッ!!」
一方その頃、遥か彼方の上空で、笑顔のベルタとキュレーネ、キュイは楽しそうだった ―――
後日譚・ワオンとコリーヌ ―――
犬小屋に帰って来て、いつものポジションに炭火焼きチキンが置かれているのを見たワオン
振り返ってコリーヌの方を見てみると、寝たフリをしていました
よく見てみると、まだヨダレが垂れていました
自分が食いたかっただろうに…
オレに持って来てくれたのか…
手羽先の片方だけ、ゆっくり齧り始めるワオン ―――
ああ…私も食べたかった…
薄目を開けて、その様を眺めているコリーヌ
手羽先を食べ終えたワオンは、ガップリとチキンを咥えてコリーヌの目の前に置きました
「今はハラが減っていないんでな。気持ちだけ貰っておいた」
そう告げて元のポジションに戻り、横になるワオン
本当は食べたかったコリーヌ ―――
あんまり気配を立てないように、少しずつ齧り始めました
互いの気持ちが、ちょっと通じ始めた瞬間です




