侵略!アルバン独裁王国!その26
お疲れ様でございます
大雨の日に、ビチョ濡れになりながら嬉しそうに散歩しているワンコ ―――
ウン…
それでも行きたかったんだね…
残念ながら、君の気持は分からない…
私は濡れるのが嫌いなので、いくつか前の前世はきっと雨に打たれて死んだ羽虫か何かだったのでしょう
まさか蚊だったって事は無いと思いますが
さておき、本日のキララ、どうぞ
「ウーム…産業…新しい産業か…」
机に積まれた資料とにらめっこした後、天井を見上げてフェルナンドは一つ溜め息をついた ―――
こちらはナイジャン、改めて新フェルナンド城 ―――
意気揚々と国家運営を始めてみた彼であるが思いの外障害が多く、悩んでばっかりである
海に面したナイジャンの主要産業は、やはり漁業しかない
だが魚を馬車に積んで他所の国に売りに行っても、道すがら何日か経つと腐ってしまう
魚介類はたくさん獲れるが、これでは売り物にならない
「ハァ…考えてどうにかなるってものでも無さそうだな…大体、ちょっと考えたくらいでなんとかなるんなら先代や先々代の王達がとっくに何とかしてる筈なんだ。何ともならなかったから今こうなっているって事なんだろう…」
手にしていた資料をペシッと机に投げ捨て、解決の糸口が見えない問題に、もうヤダー、と天を仰いだまま首を左右に振っていたフェルナンドの耳に、コンコンというノックの音が響いた ―――
「入るがよい」
スクッと姿勢を正すフェルナンド ―――
「失礼致します。アルバン王国宰相ダリ様と、アキラという方がお見えです」
「おお、ここに通してくれ」
「はい」
メイドが退室すると、数分後ダリとアキラが部屋に来た ―――
「失礼致します、フェルナンド国王」
「おお、これはダリ殿、アキラ殿。一見以来です」
差し当たって二人と握手を交わし、椅子へと促すフェルナンド
渡されたお土産はアキラ謹製、魔族向けブレンドの紅茶とロールケーキであった
早速一杯淹れて貰い、紅茶を啜る三人 ―――
「…ほう…これは?」
その薫り高さと味わいに目を見張るフェルナンド ―――
「ええ、アキラさんがブレンドした紅茶です。美味しいので是非フェルナンド殿にも、と」
「ありがとう、ダリ殿。久方ぶりに人心地が着いた気がする…紅茶か…ナイジャンでは採れまいな…」
置いたカップをじっと見ながら、フェルナンドは溜め息をついた ―――
「何かお悩み事でも?本日参りましたのは、そういうご相談があれば乗る為なのです。我々に出来る事でしたらお手伝い致します」
ダリがそう水を向けると、フェルナンドはナイジャンの現状をぽつりぽつりと語り出した ―――
「…なるほど、そういう事でしたか」
「ああ、仕事がなくて国民は出て行くし、新しい産業になりそうなものも見つからない…このままでは人口も経済も良くならないままだ…」
「ウーン…」
そう言われてみても、ダリにだってアイディアなど思い浮かばない
だがしかし、アキラの反応は少し違っていた
このナイジャンの気候というか空気が、なんだか身に覚えがあったのである
母の実家のイタリア南部に近い
「オリーブを植えてみたらどうだ?実が成ったらそれから油を搾るんだ」
ナイジャンの平年気温は、地上のギリシャとほぼ同程度である
「オリーブ?何ですかそれは?」
「ウン、ちょっとウチに行こう。説明する」
言われてフェルナンドがアキラ、ダリに続いてゲートを潜ってみると、アキラん家だった ―――
なんだここは…
高い建物ばっかりだ…
馬ナシで馬車が走っている…どういう事だ?…
フェルナンドが窓に両手を着いて外を眺めている間に、PCを起動して検索を始めたアキラ ―――
「ン、これだ。こっちがその木で、こっちがその実だ。で、これがその油」
アキラが画面を指差した後に台所からオリーブオイルの瓶を取って来て見せると、フェルナンドは不思議そうに瓶を傾けながら中の油を見始めた ―――
「…ほう…油と言うか、水と言うか…サラサラしていますな。何に使う油なのですか?」
「料理に使うんだ。パスタとかアヒージョとかな。あと魚介類を保存したり」
ン?…
「その魚介類の保存というのはどうやって?」
「ああ、オリーブオイルと一緒に瓶に詰めてからお湯でしばらく煮るんだ。こうしてやると何年でも保つ。瓶詰めってヤツだ」
「ちょっとその辺、詳しく教えて頂けませんでしょうか?」
アキラのその言葉にナイジャンの活路を見出したフェルナンドは、ガッツリ食いついてきた ―――
「ンー、ちょっと待っててくれ。オリーブオイルと食材が足りない。買い物行って来る」
アキラはゲートを開き、速攻でスーパーに行ってきた
「ただいま。じゃあ今から作るぞ」
これからアキラが作るのは、オイルサーディン ―――
まず小イワシの頭とワタ、中骨と尻尾を取り除いてバットに並べていき、軽く塩を振る
その間、ガラス瓶に半分ほどのオリーブオイルとスパイスを入れ、鍋に瓶を入れて温めておく
イワシから水分が出たらキッチンペーパーでまとめて押して拭き取り、瓶に入れてしばらく煮たら完成である
あとは蓋をして、出来上がり
「良し、こんなもんだろう。このまま蓋を開けなければ何年でも保つ」
「ちょっと待って下さい」
ダリに書く物をオーダーし、メモ帳にボールペンでシャカシャカとメモを取っているフェルナンド ―――
「はい、次にそのオリーブなんですが、どうすれば我が国で生産出来るのでしょう?」
「オリーブの木を生やせば秋には実が収穫出来る。どれ、ちょっと取りに行こう」
またもやゲートを潜り、アキラ達が向かった先はギリシャ ―――
「この木がそうだ。実が成っているのが見えるか?」
「はい」
「あれが落ちたのを集めて搾ると、さっきの油が出来るんだ。その辺に小さい木が生えてるだろう?そいつを頂こう。どうせ収穫前には邪魔だから踏まれるか抜いて捨てられるんだ。貰ったって構わないだろう」
「タダなんですか?」
「そうだ。そもそも勝手に生えてる木から勝手に実を集めているだけだしな」
そういう事なら遠慮なく、と若木を引っこ抜き始めたフェルナンド ―――
しばらく頑張っていたが、コレちょっと3人じゃやってられんな、と思い立ち、アキラに城へのゲートをオーダーして人手を集めて来た
数時間後、トラック3杯分ちょっとの若木が集まり、今度はゲートでナイジャンへの搬送が始まった
「本日はお世話になりました、アキラ殿、ダリ殿。これが上手くいけばナイジャンは変わるでしょう。では、私はこれからこの木を植えて参ります。ではいずれまた」
手を挙げて、意気揚々とフェルナンドは帰って行った ―――
後にナイジャン名物はオイルサーディンのパスタ、エビと貝のアヒージョ、オイルマッサージとなり、旅館やレストランに観光客が集まると共に、魚介類の保存と輸出が可能となるのであった ―――
後日譚・ワオンとコリーヌ達 ―――
「そのう…実は…」
「どうしたペロリ。ハッキリしないな」
こちらは犬小屋の外でお話し中の、コリーヌとペロリ
「はい…その…出来ちゃったみたいなんです…」
コリーヌに激震、走る ―――
コイツら出来てるとは思っていたが、そっちも出来ちゃったのか…
いかん…出遅れた…
魔犬とは、より大きく強い家族を持つ者が偉い、という種族だったりします
「…それはおめでとう、ペロリ…」
口ではこう言っているコリーヌですが、内心焦っています




