戦え!アルバン義賊団!その5
お疲れ様でございます
なんか私のお友達が網戸の外側につかまってウロウロしています
今日も居留守なので帰って貰えませんかね
あとアナタ達、一体どこから入って来るんでしょう?
さておき、本日のキララ、どうぞ
「ちょっと場所を変えて話しましょう…ここだと店の誰かが来るかも知れません…」
「そうだな。じゃあ着いて来てくれ」
そうして乗り込んだのは、いつもの乗り合い馬車 ―――
一度発車してしまえば、次の馬車停までは完全な密会場所となる
「手を貸すって、私に何をしろと仰るのですか?後ろに手が回る話は勘弁ですよ?」
「なに、ちょっと噂を流してくれればそれで十分だ。出来る限り大勢にな。内容はこの紙に書いてある通りだ」
渡された紙にはアルバン義賊団のマークが入っており、裏返すとその内容が書かれてあった
「なになに?…来たる5月11日の建国祭の日、我々アルバン義賊団はベルモント城前にて現王政を打ち倒すべく革命を起こします…ベルモントとかいうクソ野郎にご不満をお持ちの方は、石などお持ちになってお集まり下さい…国王の首から下を埋めて、投石会を開催致します…」
まじか…
頭取が顔を上げてゴリオスの方を向くと、読んでいた紙を胸元に押し付けられた
「それが部屋に入っていた、って事にしてくれ。こんな物がありました、って周りに言うだけだ。別に手が後ろに回るような話じゃないだろう?一応2枚渡しておく」
「…分かりました…ところで色々考えて下さる、というお話でしたが…具体的にはどんな?」
ごくナチュラルに揉み手を始め、首の傾げ角度80度でほっこり微笑む頭取 ―――
「もう憲兵がショバ代を取りに来る事は無い。お前達が何かやらかしても軽い刑で済ませてやる。家族がいじめられたら俺に言え。自分が何をしたのか思い知らせてやる。あと先に言っておくが、革命が成れば次の国王は俺だ」
ハイ、ゴリオス様…OK了解です…
その後速攻で帰った頭取は、これでもかって位に噂を流して回った ―――
「まじかよ…アルバン義賊団、やる気らしいぜ…」
「ざまあみろだ…俺も黙っちゃいられねえ。石持って行くぞ。帰って投石練習だ。目ん玉潰してやる」
他にも各所を回り、次々と噂を広めていったゴリオス ―――
2、3日もすると、5月11日は決起の日、という認識が国内中へと広がっていった
「いいかお前達、怪しい奴を見つけたら片っ端から捕まえて尋問しろ。アルバン義賊団は今日必ず現れる。ヤツらの出鼻をくじいて何としてでも革命を阻止するんだ。これは王命だ、いいな?」
「「ハッ!」」
当日、5月11日 ―――
ゴリオスに代わって憲兵隊長となった元副隊長から、隊員達に号令が下った
敬礼でその言葉に応える憲兵隊員達
早速町中に散り、怪しい奴を見つけては尋問を開始した ―――
建国祭のパレードが始まり、楽隊の音楽と共に正装のアルバン兵達が町中を行進する ―――
パレードが町中を一通り行進し終わると、今度は城の前に集まった国民に対しアルバン国王がお祝いの言葉を述べ始めた
「…では以上を以って、今日の祝いの言葉とする。これからも皆が幸せに暮らせるよう、私も尽力しよう」
国王がそう締めくくろうとしたその時、広場にいたその男は声を上げた ―――
「ウソこけええええええええええ、ボケぇえええええええええええええ!!何が尽力だ、不幸になるように搾取しとるやないかーーーーーーー!!!」
ざわ…
形だけ拍手して終わり、と思っていた周囲の民衆達はその声に凍りついた
みんな思っている事は同じだが、それを言ってしまえば憲兵隊に連れ去られて帰って来る事は無い
それ言っちまったらお終いだろ…頭おかしいんじゃないか?…
いや、ひょっとしたらこの男は…
「どけ!お前ら!憲兵隊だ!!貴様、アルバン義賊団か!!?」
人混みをかき分けて前に出て来た憲兵達が目にした男は、ゴリオスその人だった ―――
「アッ!隊長…」
「元、な。今はアルバン義賊団の団長だ。ちょっとこの国をひっくり返しに来てやった」
「…つ、捕まえろー!コイツを捕まえろーーー!!」
悲鳴と怒号で周囲は騒然とし始め、逃げ惑う民衆達 ―――
グルリとゴリオスを取り囲んだ憲兵達の後ろからは、またもやアルバン義賊団がさらに取り囲んでいた
「さて、始まったな。行こうかはっちゃん」
「…」
この二人組は国王拉致チームである
先程、国王が立っていたテラスから侵入し、国王を追う
「何だ貴様はーーー!!」
バァン!! ―――
声を上げた衛兵が、アキラのビンタ一発で壁に頭を突っ込んで失神する
「この部屋だな」
国王が隠れていた部屋に着くとアキラ達は問答無用で国王を拘束し、風が去るように拉致って行った ―――
外に出てみると、どうやら憲兵隊はアルバン義賊団に制圧されたようである
パレードに出ていた兵士達も駆けつけたが、どうやら国王が拘束されて人質っぽくなっているという事を知り、身動きが取れなくなっていた
「さて、お集まりの諸君!私がアルバン義賊団の団長、ゴリオスだ!この男をどうするかは、皆の声を聞いて決める!石を投げたいと思う者は私の拍手に続け!!」
パン!パン!パン!パン! ―――
頭の上に両手を掲げ、一定のリズムで叩き始めるゴリオス
一人…二人…
その数は次第に増えていき、やがて広場全体がそのリズムの拍手に満ちていった
よく見ると兵士まで一緒になって拍手している
「アキラ、頼む」
「OK了解」
拍手の間にアキラが掘っていた穴に国王を突っ込んで埋めると、ゴリオスの石を投げるムーブの合図でお待ちかねの投石会が始まった ―――
「「ワァアアアアアアアアアアアアア!!」」
怒号とも歓声ともつかない会場の声に包まれ、無数の石が国王の頭めがけて飛んでいく ―――
ちなみに兵士達まで、オラァ!とか言いつつ投げている
しばらく経つと国王の頭は周辺の石で埋まり、そこで投石会はお開きとなった
「皆の気持ちは良く分かった!この石塚がその答えだ!アルバンを良い国にしたいと思う者はあるかーーーーーー!!?」
「「オオオオオオオオオオオオオオオ!!」」
「ならば私に続けぇえええええええい!!この国を変えるぞーーーーーーーー!!」
「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」
アルバン革命(アルバン歴1026.5.11) ―――
この日起きた出来事は、それまでの王政を覆した
他国にとっては遠くで起きた小さな出来事に過ぎなかったが、ここに全ての起点である大きな一石が打たれた事は、まだ誰も知る由もない ―――
後日譚・カンナとマティス ―――
「また遊ぼうね」
「うん!」
人生終わったと思っていたマティス君でしたが、魔犬に食われる事もなく無事に家に帰りました
それからは二人してガルル、ペロリの背中に乗り、お花畑に行ったりキノコ狩りやベリー採取をしたりしていました
かわいい…
マティス君が初めて覚えた感情
それはきっと恋でした




