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ポンコツ転生公女は実は最強の魔術師です~元悪役令嬢だった公女は二度目の人生でもふもふたちとスローライフを謳歌したい~  作者: 雪野みゆ
第二部

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62.魔力暴走

 ベルンの後をついていくと、開けた場所に出た。

 

 円形状の広場の真ん中には噴水が設置されている。


 そして、噴水の前には見慣れた少女の姿があった。


 少女の前には自分の目を手で覆い、尻もちをついた少年の姿もある。クルトだ。


「いやあ! 何これ!? クルト、助けてよ!」


「ダメだ! 眩しくて目が開けられない!」


 心愛の体からは光が迸り、収まる気配がない。


「何をしているの!? 早く魔力を抑えなさい!」


「どうやるのよ! 分からないわ!」


 咄嗟に心愛に呼びかけるが、彼女は魔力の使い方が分からないらしい。


「魔力暴走だな」


「やはりそうなのかしら」


 心愛はこちらに来たばかりで、まだ魔力の何たるかが分かっていないようだった。


 魔法科の授業もついていけなかったようだ。


 なぜ魔法を使おうとしたのかは分からないが、魔力の使い方が分からないまま使ったところ、魔力暴走を起こしてしまったのだろう。


「止めるぞ。マリエ、援護を頼む」


「分かったわ」


 ベルンは聖女だった初代皇后の血を濃く受け継いでいる『魔人』なのだ。


『魔人』というのは、本人だけがそのことを知っている特別な存在だ。周りはベルンに魔力があることも認識していない。


 ベルンが無詠唱で心愛の『聖魔法』を相殺していく。


「『無限魔法術式』展開!」


 私が日本語で詠唱すると、空中に無数の魔法陣が現れる。


 この魔法を使うと心愛は魔力が使えなくなってしまうが、どうせ元の世界にお帰りいただくのだ。遠慮することはない。


「『魔力無効化』!」


 心愛の周りの眩い光は消えて、やがて周りに迸っていた光も収束していく。


「終わったようだな」


 魔法陣を消すとベルンが私に歩み寄ってくる。


「やれやれだわ」


「ちょっと怪しいヤツ! 誰よ、あんた!? ってか! 日本語?」


 魔力暴走が収まった途端、心愛が叫ぶ。


 変装しているうえにサングラスをかけているので、心愛は私が誰か分かっていないようだ。


「通りすがりの魔法少女セトウチです」


「そしてその助手のハルトだ」


 ベルンが私の悪ふざけにのってくるので、笑いを堪えるのが大変だった。 


「はあ? 魔法少女とその助手?」


 訳が分からないといった感じの心愛は、頭に疑問符を浮かべている。


 そうこうするうちに騎士たちが駆けつけてきた。


 ベルンは騎士たちに何事か指示を出している。


 騎士たちは驚いていたようだが、クルトと心愛を保護すると、そのままどこかに連行していく。


 心愛は「何するのよ! 放しなさい! あたしは聖女よ!」と最後まで抵抗して騒いでいた。だが、騎士の力に敵うはずもなく、引きずられるようにして連れて行かれたのである。


「彼らをどうするの?」


「とりあえず、皇宮に連れていって軟禁しておけと言っておいた。ここのところ、神殿の力が増していて少々厄介だったからな。粛清するのにちょうどいい材料だ」


 くくくと悪そうな笑みを浮かべるベルン。


 元悪役令嬢の私より悪そうだ。


「そんなことよりデートの続きをしよう。行くぞ、マリエ」


「あっ! 待って、ベルン」


 何事もなかったようにデートを再開しようとするベルンに苦笑しながら、後を追った。


◇◇◇


 建国祭最終日。


 国をあげてのお祭りもいよいよ今日で終わりだ。街では盛大なフィナーレを迎えていることだろう。


 夜、私はルリアたちとのんびり過ごしていた。


「ルリア、カヌレを作ってもらったの。はい! あ~ん」


 一口大のカヌレをルリアの口元に持っていくと嬉しそうに口を大きく開ける。その仕草が何とも愛らしい。


「きゅい~」


 美味しそうにモグモグと口を動かしている。可愛い。


「ルリアは甘い物が好きね。レイリさんに似たのかしら?」


「きゅっ!」


 ルリアを眺めていると、ルナとシルヴァーが私の前で目をうるうるとさせている。


「ああ。ごめんね。ルナ、シルヴァー。貴方たちも食べる?」


「みゃあん!」


「くうん!」


 二匹ともうんうんと頷いている。


 犬と猫って甘い物をあげても大丈夫かしら? でもルナもシルヴァーも神獣だから大丈夫なのかな? ルナのお母さんであるユエさんはお菓子を食べていたし、きっと大丈夫ね。


 二匹にも同じようにカヌレをあげると、嬉しそうだ。


 よし! 大丈夫!


 勝手に自己完結していると、扉をノックする音が聞こえる。


「どうぞ。開いているわ」


 入室を許可すると、訪問者はアロイスだった。


「あら? アロイス、どうしたの?」


「夜分遅く失礼いたします、大公女殿下。火急の知らせがございまして、このような時間に訪問することをお許しください」


「火急の知らせ? 何かしら?」


 次にアロイスから聞いたのは耳を疑いたくなるようなことだった。


「『渡り人』の少女が軟禁していた部屋から逃げ出しました。いまだに皇宮内を逃げ回っている様子です。皇太子宮も厳戒態勢を敷いておりますが、大公女殿下も十分にご注意ください」


 何だと!? 心愛め。何を考えている?


「部屋の前には騎士を配置しております。部屋には鍵をかけて、外には出られませんように」


「……分かりました。貴方たちも気をつけてください」


「承知いたしました」と頷くと、アロイスは部屋を退室していった。


 私は鍵をかけてルリアたちのところに戻ろうとして、まだブランを外に出したままだということに気づく。


「そうだわ。ブランを呼び戻さないと!」


 窓を開けてバルコニーに出ると、ブランを呼び戻すために指笛を吹く。


「ホッホー!」と一声鳴いてこちらに戻ってきたブランを部屋に招き入れて、窓を閉めようとする。


 しかし、窓は閉まらなかった。

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