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ポンコツ転生公女は実は最強の魔術師です~元悪役令嬢だった公女は二度目の人生でもふもふたちとスローライフを謳歌したい~  作者: 雪野みゆ
第二部

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50.身長差は十五センチで

 迷惑なことにラシードたちが私の部屋を陣取って神獣同士のお茶会を始めてしまったので、ベルンが夜の散歩にと、庭園へ連れ出してくれた。


「今日はいろいろあって疲れただろう? 別に部屋を用意されるゆえ、そちらで休むとよい」


「ありがとう。そうさせてもらうわ」


 ラシードたちは盛り上がっているし、お茶会がいつ終わるか分からないので、ベルンの厚意をありがたく受けることにする。


 ベルンと定期的にお茶会をする四阿(あずまや)に行くと、飲み物と軽食が用意されていた。


 ベルンの従者であるアロイスとソフィアが四阿のそばに控えているので、二人が気を利かせてくれたのだろう。


「しかし、ルナの母親が娘を探していたとはな。てっきり捨て猫、いや、騶吾だから捨て騶吾かと思った」


「私はルナの境遇がルリアに似ていて驚いたわ。神獣って子供をうっかり落としてしまうものなのかしら?」


 ラシードはルリアが卵の中にいた頃、うっかり落としたのだ。


 ちなみにルリアを拾った経緯は前にベルンに話したことがある。


「ラシードはアホだからな」


 先ほどラシードもベルンのことをアホと言っていたな。俺様系男子は似た者をディスるものなのか? 


 同族嫌悪というやつだろうか?


「でも、お母さんがここにいることを認めてくれた時、ルナは嬉しそうだったわね」


 ユエが私の下にいることを許してくれた際に、それまでそっぽを向いていたルナは「みゃあん!」と嬉しそうに鳴いて、ユエに飛びついたのだ。


「ユエは嬉しそうだったな」


 飛びついてきたルナを愛しそうに抱きしめていたユエは、母親の顔をしていた。


「ルナも本当はお母さんに会えて嬉しいのよ。たまには里帰りしてもいいのよって後で言ってあげないと」


 ルリアは里帰りしていないけれど、それは頻繁に親の方から会いにくるからだ。


「話は変わるが、明後日の入学式の支度は万全か?」


「ええ。制服のサイズ調整もできているし、学用品も準備万端よ」


 アーデン校の制服は黒のワンピースに同色のボレロというシンプルなものだ。


「そうか。俺はアーデン校の生徒ではないから同行できないが、リーンが同じ学科にいるからな。しばらくはリーンと行動をともにするといいだろう」


 アーデン校にはいろいろな学科があるが、私は魔法科を選択した。リーンもベルンほどではないが魔法が使えるらしく、私と同じ魔法科に通うらしい。


 カルクシュタイン王国とは違い、クリュタリオン帝国は魔法を使える者が少ない。


 おかげで他の学科とは違い、魔法科は1クラスだけなのだ。


 つまり、リーンとは必然的に同じクラスになる。


「こちらではまだ友人がいないし、心強いわ。でも、リーンにも親しい友人がいるだろうし、私も早く友人を作るつもりよ」


「リーンの友人か。いたかな? あいつは変わっているからな。いたとしても、幼馴染のヒルダくらいではないか?」


 ベルンが首を捻っている。確かにリーンは変わっているが……。


「そのヒルダという方はどなたなの?」


「ああ。オーベルシュタット公爵家の令嬢でヒルデガルドという。俺たちの婚約式で会ったと思うが……」


「最初に挨拶に来てくれた方ね」


 オーベルシュタット公爵家はクリュタリオン帝国の筆頭公爵家だ。一番身分が高い貴族なので、最初に挨拶してくれた令嬢がヒルデガルド嬢だろう。


 確か暗い金髪に緑の瞳をした少女だ。筆頭公爵家の令嬢らしく、きれいなカーテシーをしていたので、印象に残っている。


「ヒルダもマリエと同じ年でアーデン校に入学するはずだ。あらためてリーンに紹介してもらうといい」


「どんな方かしら? 婚約式で受けた印象は良かったけれど……。仲良くなれるといいな」


「そうだな。俺はあまりヒルダと話したことはないが、彼女はリーンの婚約者候補だ。仲良くしておくと良いだろう」


「えっ! リーンの婚約者候補なの?」


「筆頭公爵家の令嬢だし、何しろリーンと一番仲が良いからな。両親もオーベルシュタット公爵夫妻も乗り気だ。近々、婚約が決まるのではないか?」


 リーンは皇位継承権第二位だ。ベルンに何かあった場合は皇太子になる立場にいる。それは有力貴族の令嬢が婚約者の方がいいだろう。


「夜も更けてきたな。そろそろ戻るか?」


「そうね」


 ベルンが立ち上がり、手を差し出す。私よりも大きな手。手のひらには剣の稽古でできたであろうたことペンだこもある。


 背も伸びたが、手も大きくなっている。じっと見つめていると、ベルンが苦笑した。


「俺の手に何かついているか?」


「ううん。ベルンは背も伸びて手も大きくなったなと思ったの」


「まだ大きくなるぞ。背も手も。成長途中だからな」


「あまり伸びないでね。私との身長差が開いてしまうから」


 一度目の人生の時、私の身長は日本のものさしで一六五センチくらいだったはずだ。成長は一度目の時と変わらないから、たぶん今度もそのくらいの身長になるだろう。


「別に身長差があっても構わないだろう? 俺はマリエが小人でも愛せるぞ」


「どうして私が小さい感じなの? ベルンより大きくなるかもしれないじゃない」


「ハハハ。マリエが巨人でも愛せる自信があるから大丈夫だ」


 完全にからかわれている。


「男女の身長差の理想は一五センチなの!」


 まあ、それも古い考えなのかもしれないが……。


「何だ? それは……。相変わらずマリエは面白いことを言う。その一五センチの身長差が理想なのはなぜだ?」


 うっ! 言えない。キスやハグがしやすいとか……。


「そ、そそそれは……。その……女性が高い靴を履いた時にバランスがいいからよ」


 言い淀んでしまったが、そういう説もある。


「なるほど。では俺がマリエより一五センチ以上大きくなってしまったら、マリエにはかなり高い靴を作らねばなるまい」


「もう! だからどうして私が小さい前提なのよ!」


「すまない。マリエが可愛いから、つい、いじめたくなってしまうのだ」



 心底おかしそうにベルンは笑う。


 これだから俺様系男子は苦手だ。

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