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会議

インタリー王国の王都ロメル。大国インタリー王国の王都に相応しい伝統と歴史を持つ大都市である。

 毎日多くの人と物がこの都市を行き来し、この都市で手に入らない物はないと言われるほど栄えていた。

 その中心に聳え立つ王城の一室に王国の貴族達が集められていた。

 ただの貴族ではない。魔法によってこの国の軍事に貢献してきた魔法使いの一族である。

 この部屋には王城に直ぐに駆け付けられる魔法使いが殆ど集められていた。これはただ事ではないと魔法使い達は確信していた。

 しかしそこは貴族のプライドがある。恥ずかしげもなく慌てたりせず如何にも冷静沈着である事を周囲にアピールするように堂々としていた。

 これ見よがしに煌びやかな指輪を拭いたり、近日中に晩餐会があると触れ回ったりとそれなりに忙しくしている。

 そんな中ある太った貴族が集められた貴族の中でも一際若く涼しい顔をしている男に目をつけた。

「おや?マジョルカニス伯爵ではなくその息子かね?伯爵は何故来ないのかな?」

 マジョルカニス伯爵の息子と言われた男は銀髪に赤い瞳の青年である。名をシリウス・マジョルカニスという。

 シリウスは嫌味ったらしく聞いてきた太った貴族に淡々と答えた。

「父は療養中ですので私が代理で参りました」

「そんな話聞いた事がないがね」

「国防に関わるゆえにこれまで秘匿とさせていただきました。この事は国王陛下もガルバル将軍も知っておられます」

 軍事の中枢にいる者の健康状態は重要事項である。特に王都の防衛を任されているマジョルカニス家の当主の健康状態となれば尚更である。

「ふん、まあいい、大人しく座っていろよ」

 太った貴族はシリウスの気に食わない回答に苛立ったがそれ以上は何も言ってこなかった。国王が知っているのであればこれ以上突っつこうものなら逆に自分が不利な立場になるのは明白だからだ。

 しばらくすると部屋の扉が開かれた。軍服の上からでも分かる巨大な筋肉、そして胸に下げられた多くの勲章。入ってきたのはこの国の軍事を総括するガルバル将軍である。

 ガルバル将軍は真ん中の空いている席にドンと座り参加者を見回し口を開いた。

「集まったようだな。急な召集に応えてくれ感謝する」

 貴族相手にこの態度であるが将軍も魔法は使えないが貴族の出である。この失礼な態度について言及する者は誰もいなかった。

 しかし急遽集められ不機嫌な貴族はいた。

「そんな事より要件を言え、この後用事があるのだ」

 不機嫌な貴族の要求に周りの貴族も賛同する。それを確認した将軍は咳払いをすると口を開いた。

「なら早速本題に入ろう。ミラン辺境伯が戦死した」

 将軍のまさかの言葉にその場にいた貴族達に動揺が走った。

「なんだと」「戦争なんて起きていたのか」「聞いていないぞ」「戦死しただと!」「何が起きている!」

 先程まで余裕そうな態度をとっていた貴族達は将軍に詰め寄る勢いで口々に質問を浴びせた。不機嫌だった貴族も次の用事などすっかり忘れて将軍に向かって叫んでいる。

 将軍はそんな貴族達を宥めるように落ち着いた声で説明を始めた。

「先程入ってきた情報なので無理もない。相手はスウィストフ王国の兵である。ミラン伯爵は領内に入ってきた敵兵を殲滅しに向かったところ討たれたらしい。そこで先程伯爵夫人から救援要請が届いた」

 信じられない情報をもたらされた貴族達は絶句した。国境に領地を持つという事はそれ相応の軍事力を持つ事になる。ミラン伯爵も例外ではない。それが小国であるスウィストフに呆気なく討たれるとは考えづらかった。

 黙ってしまった貴族を無視して将軍は続けた。

「残念ながら敵の数は判明していない。しかし多くの魔法使いを目撃したと報告がある」

 その将軍の言葉にある貴族が机を叩いた。

「あの国に魔法使いなどいる筈ないだろう!それも何人も!馬鹿な!」

「私も疑っているが、生き残った兵が杖から魔法を出しているのを目撃しているらしい。というより相手は魔法使いしかいなかったと証言している」

 この将軍の言葉に貴族達は怒りを露わにした。

「そんな馬鹿な事があるか」

「可能性があるなら幻を見せられたのでは?」

「そんな高度な魔法をスウィストフの連中が使えるものか!」

「そうだ!そうだ!あんな低俗な連中に魔法を使えるわけがない!」

「魔法は選ばれた我々だけが使えるのだ!」

 貴族達は会議の内容そっちのけで好き勝手に喋り始めた。いかに我々が素晴らしいか。魔法を使える事がどれほど偉大な事かを。

 そんな騒ぎ立てる貴族達を将軍は変わらず無視して話を続けた。

「それも含めて何も分からないのが現状だ。なにせ魔法を使えたミラン辺境伯は現場で亡くなっているのだ。彼の証言があればもう少し判明した事があったろうが」

 魔法に精通するミランが生きていればそれが何の魔法なのか少しは手掛かりがあったであろう。しかし生き残ったのは魔法を使えない兵士であり、詳しく聞いても杖から石が飛んできた以上の事は何も分からなかった。

「そこでミラン領からの救助要請に騎士団を派遣するが魔法使いも調査の為同行して欲しい」

 しかし将軍の要請に即答する者はいなかった。先程まであんなにベラベラ喋っていた貴族達は合わせたかのように口を閉ざし将軍から目を逸らした。

 明らかな情報不足による未知の兵士。更にミラン領という王都から遠く離れた辺境の地。この二つが貴族達の返事を鈍らせる大きな要因であった。

 ここに集まっているのは魔法を使える事でその地位に胡座をかいている傲慢な貴族達ばかり。誰もこんな面倒臭い事をやりたがらなかった。

 誰も快い返事をしない中、太った貴族が口を開いた。

「それなら実践経験の無いマジョルカニス家の子息が行けばいい。いずれは次期当主になるのだ良い経験になる」

 その言葉を聞き他の貴族達も次々に声を上げ始めた。

「そうだな、相手は所詮スウィストフだ、簡単な戦だ」「それがいい」「実に名案だ」

 皆が当の本人であるシリウスに目を合わせず勝手なことを言う。しかしシリウスそれに反論する事はできない。ここには当主の代理で来ただけでありシリアスには何の権限も影響力もないのである。

「君はどう思う」

 将軍は申し訳なさそうに一応尋ねてみたがシリウスがこの場で断る事はできない。

「分かりましたその任務引き受けましょう」

 シリウスは表情を変える事なくそう淡々と答えた。シリウスの返事に貴族達もようやく安心したようで安堵のため息を吐いた。

「はっはそうだろう、しっかりと経験を積んできたまえ。お父上の顔に泥を塗らないようにな」

 太った貴族は調子に乗りシリウスに絡んでいるがシリウスは相手にしない。

 将軍もそんな嫌味を無視してシリウスと話している。

「では直ぐに向かってもらう。屋敷に迎えを出すからそれまでに準備を済ませてくれ。詳しい事は迎えに伝えておく」

「分かりました。それでは失礼致します」

 シリウスは立ち上がると一礼して部屋から出て行った。面倒ごとを押し付けられたのに表示一つ変えずに出ていく姿を太った貴族は睨みつけていた。

「父親と同じでいけすかない奴だ」

 太った貴族はシリウスが出て行った扉を見ながらフンっと鼻息を鳴らした。

 部屋から出てシリウスは振り返る事なく歩いていく。

「全く貴族というのは下らない奴らばかりだ……魔法が高尚なものか……」

 シリウスは会議で溜め込んだ不快感を誰もいない廊下で吐き捨てる様に呟いた。

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