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奴隷転生の俺、最弱ステータスを敵にコピーできるチート能力で王国最強へ  作者: 賢い兄者
第一章 最強に満たぬ器

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第16話「限界の向こう側」

「……殺します」


その言葉を聞いた瞬間、メルセデスは愉快そうに肩を震わせながら笑い、まるで待っていたかのように一歩踏み込んできた。


速い。


だがさっきまでとは違う。


見える。


読める。


そう思った瞬間、腹に衝撃が走り、視界が一瞬で白く弾けた。


「がっ……!」


体が浮き、そのまま壁に叩きつけられると背中に鈍い痛みが走るが、今はそれどころじゃないと無理やり足に力を込めて立ち上がる。


息が荒い。


肺が焼けるように痛い。


そしてそれ以上に。


「……っ」


身体の内側が、熱い。


いや、違う。


痺れている。


さっきの毒。


血を通って、確実に回っている。


指先の感覚が鈍い。


足の踏ん張りも甘い。


時間がない。


明確に。




「どうしたぁ?」


メルセデスがゆっくり歩いてくるが、その足取りには余裕しかなく、俺が削れていくのを楽しんでいるのが分かる。


「もう終わりか?」


挑発。


だが乗るしかない。


時間をかければ、毒で終わる。


なら。


短期で仕留めるしかない。




踏み込む。


自分から。


メルセデスの目が僅かに細くなる。


次の瞬間、拳が飛んでくる。


だが避けない。


肩で受ける。


肉が裂ける。


だがそのまま距離を詰める。


腕を掴む。


「――転写」


発動。


だが。


手応えがない。


メルセデスが笑う。


「効かねぇって言ったろ?」


魔力差。


通らない。


分かっていた。


それでも。


確認した。




なら。


やることは一つ。




至近距離。


そのまま頭突きを叩き込む。


鈍い音。


だがメルセデスは微動だにしないどころか、逆に膝を腹に突き上げてきて、内臓がひっくり返るような衝撃に思わず膝をつく。


「遅ぇ」


そのまま掴まれる。


持ち上げられる。


首。


締まる。


呼吸が奪われる。


「根性は認めてやるよ」


顔を近づけてくる。


「でもな」


にやりと笑う。


「それだけじゃ勝てねぇ」


そのまま地面に叩きつけられ、後頭部に衝撃が走り視界が揺れるが、それでも意識だけは繋ぎ止める。




立て。


まだだ。


終わるな。




体が言うことを聞かない。


痺れが広がる。


視界の端が暗くなる。


それでも。


動く。


腕を動かす。


床に手をつく。


血で滑る。


それでも。


立つ。




「……まだ立つか」


メルセデスが少しだけ感心したように言う。


だがその目は冷たい。


次で終わらせるつもりだ。




足音。


近づく。


遅い。


避けられない。


分かっている。


なら。


合わせる。




踏み込まれる瞬間に、こちらも踏み込む。


真正面。


ぶつかる。


拳が顔に入る。


歯が折れる感触。


血が飛ぶ。


だが。


その内側へ。


さらに一歩。


入り込む。




「……なっ」


メルセデスの声が初めて揺れる。


至近距離。


ゼロ距離。


ここなら。




もう一度。


「――転写」


無駄だと分かっている。


だが違う。


狙いは。


“本体じゃない”




視線を落とす。


地面。


黒く変色した血。


毒。


そして。


そこに突き刺さった、あの歪な刃。




「――そこか」




発動。


対象。


刃。


“形あるもの”


影縫で作られたものと同じ。


なら。


通る。




次の瞬間、手応えが変わる。


確かに。


通った。




「は?」


メルセデスの表情が歪む。


初めて。


明確に。




刃が、揺れる。


黒く変色していた血の流れが、一瞬だけ止まる。


ほんの僅か。


だが確実に。


“制御”が乱れる。




その隙で十分だった。




俺は全力で体をぶつける。


バランスを崩す。


メルセデスの体勢が一瞬だけ揺れる。


そのまま。


掴む。


押し倒す。




「――ッ!」


初めて、メルセデスが力を込める。


だが遅い。




もう一度。


「転写」




今度は。


“自分の弱さ”を。


直接。


押し付ける。




もちろん通らない。


だが。


ゼロ距離。


崩れた体勢。


刃の制御が乱れた一瞬。


すべてが重なる。




そのほんの僅かな“隙”に。


俺は。


拳を叩き込む。




顔面。


一発。


二発。


三発。


血が飛ぶ。


骨が軋む。


止まらない。


止めない。




毒で意識が飛びそうになる。


視界が歪む。


それでも。


腕を振るう。



「――終わ……れぇ!!」


最後の一撃を、全力で叩き込む。



その瞬間、洞窟の中に鈍い衝撃音が響き、すべての力を出し切ったレオンの身体はそのまま崩れ落ちるが、それでもなお目だけは閉じず、倒れたメルセデスの先を見据え続けていた。

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