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奴隷転生の俺、最弱ステータスを敵にコピーできるチート能力で王国最強へ  作者: 賢い兄者
第一章 最強に満たぬ器

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第12話「覚悟の重さ」

メルセデスは、こちらの動きを見て楽しそうに笑っていたが、その目の奥には確かな確信が宿っており、まるで最初から結果が決まっているかのような余裕があった。


「無駄だぜ」


軽く首を鳴らしながらそう言われた瞬間、俺の中に嫌な予感が走る。


「お前の能力、聞いてる」


その一言で理解した。


「魔力差がある相手には効かないんだろ?」


図星だった。


思わず言葉が詰まると、メルセデスは肩をすくめて笑う。


「王様直々の言伝だ、ありがたいだろ?」


つまり、完全に対策されている。


こちらの切り札は、最初から封じられているということだ。




次の瞬間、近衛兵たちが一斉に動いた。


統率の取れた動きで間合いを詰めてくるその様子は、明らかに素人ではなく、個々の力量も高い上に連携まで完成されており、まともに相手をすれば一瞬で押し潰されると直感する。


俺は即座に後方へ跳び、迫る刃を紙一重で避けながら距離を取るが、それでも次の攻撃はすぐに飛んできて、考える暇すら与えてくれない。


「……速いな」


小さく呟きながらも、足を止めることはできない。


避ける、躱す、逃げる、その繰り返しで時間を稼ぎながら、頭の中では必死に打開策を探していた。



「どうしたどうしたぁ? 逃げてばっかじゃ終わるぞ?」


メルセデスの軽い声が響くが、そんなことは言われなくても分かっている。


だが、今はそれしか選べない。




一瞬だけ視線を横に向けると、倒れたまま動かないリュナの姿が目に入り、呼吸があることに僅かな安堵を覚えるものの、同時に現実を突きつけられる。


守りながら、この数を相手にするのは無理だと。


理屈では完全に詰んでいる。


それでも思考だけは止めなかった。




兵士には効かない。


魔力差。


能力は通じない。


なら対象を変えるかと考えるが、周囲に魔物はいないため転写できる相手も存在せず、自分に使っても意味はない以上、今の状況では能力はほぼ封じられているに等しい。




刃が迫る。


避ける。


次が来る。


躱す。


だが徐々に追いつかれ、ついに腕を掠めて血が滲むと、余裕が確実に削られていることを嫌でも実感する。


「……ちっ」


このままでは削り切られて終わる。




「なあ」


メルセデスの声がまた響く。


「まだ迷ってんだろ?」


その言葉に、動きながらも一瞬だけ思考が揺れる。


見抜かれている。


完全に。


「殺せば楽だぜ?」


軽い口調のまま核心を突かれ、胸の奥がざわつく。



そう、分かっている。


一番簡単なのは、殺すことだ。


一人でも倒せば穴ができるし、そこから抜け出せる可能性もある。


だが、それは――



一瞬の躊躇。


その隙を敵が見逃すはずもなく、刃が目前まで迫るが、咄嗟に腕を掴んで軌道を逸らし、そのまま力任せに押し返して体勢を崩させる。


視線が交差する。


ほんの一瞬。


そこにあったのは敵意ではなく、迷いのようなものだった。


だが、それは相手ではなく、自分自身の中にあるものだとすぐに理解する。


次の攻撃が来る。


今度は避けきれない。


ならばと踏み込み、相手の懐に入り込んで体ごとぶつかることで無理やり崩し、そのまま距離を取ると、荒くなった呼吸が自分の限界を告げていた。



「……まだ甘いなぁ」


メルセデスの声が、楽しそうに響く。


「殺す気ねぇだろ?」


図星だった。


俺は息を整えながら、はっきりと言う。


「……当たり前です」


その言葉に、メルセデスは笑みを深める。


「だよなぁ、だから詰んでる」


そう言って一歩前に出た瞬間、空気が変わった。


それまでとは比べ物にならない圧が空間を満たし、本能が危険を告げる。




「俺が相手してやるよ」


軽い動作で構えるその姿には隙がなく、兵士とは明らかに格が違うと一目で分かるほどの強さがあった。




俺は一瞬だけリュナを見るが、当然動かない。


守れない。


このままでは、二人とも終わる。




なら、どうする。




息を吸い、ゆっくりと吐くと、頭の中で何かが切り替わり、迷いが少しずつ形を変えていく。


守るために、生きるために、必要なことは分かっている。




俺は静かに構え、メルセデスを見据える。


「……やります」


短い言葉だったが、その中に迷いはなかった。




守るためには同じだけの覚悟が必要であり、その覚悟が“奪うこと”と隣り合わせであると知った時、人は初めて戦う理由を自分の中で定義するのだと、レオンはようやく理解し始めていた。

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