第10話「試される力」
王宮を出る頃には、太陽はすでに高く昇っていた。
門を抜け、街を抜ける。
人の視線を感じる。
王宮から出てくる時点で目立つのは当然だが、それ以上に“あの時の噂”が広まっているのか、好奇と警戒が混じった視線が背中に刺さっていた。
「見られてる」
リュナが短く言う。
「分かってます」
苦笑しながら答える。
だが、足は止めない。
やることは一つだ。
結果を出す。
それだけ。
⸻
街を抜け、草原へ出ると、空気が一気に変わる。
静かだ。
人の気配がない。
その代わりに。
「……いますね」
俺は周囲を見る。
リュナはすでに弓を構えている。
視線は一点。
「三体」
小さく呟く。
次の瞬間。
矢が放たれる。
音はほとんどしない。
だが。
確実に命中する。
茂みの中から魔物が飛び出す。
一体、倒れる。
残り二体。
「来る」
リュナの声。
同時に、魔物がこちらへ突進してくる。
速い。
だが。
「やります」
俺は一歩前に出る。
狙う。
一体。
近づく。
距離が詰まる。
その瞬間。
発動。
――ステータス転写。
魔物の動きが鈍る。
明らかに変化した。
「効いてる……!」
その隙に、リュナの矢がもう一体を射抜く。
残り一体。
だが。
鈍った動きでは、もう脅威ではない。
俺は避ける。
通り過ぎる。
その背後から、矢が突き刺さる。
終わりだった。
⸻
静寂。
俺は息を整える。
「……問題ないですね」
リュナは周囲を警戒しながら言う。
「雑魚」
評価は厳しい。
だが。
その通りだ。
今のは肩慣らしにもならない。
⸻
再び歩き出す。
目的地はもう少し先。
王が言っていた“巣”。
そこが本番だ。
歩きながら、俺は考える。
さっきの感覚。
確実に通った。
以前よりも。
「……やっぱり」
小さく呟く。
リュナが見る。
「何」
俺は答える。
「前より、効きやすい気がします」
リュナは少し考える。
そして言う。
「魔力」
それだけで通じる。
俺は頷く。
「15でも変わるんですね」
リュナは短く返す。
「当然」
そして続ける。
「差が縮まる」
シンプルだが、本質だ。
魔力差。
それが全て。
なら。
もっと上げれば。
もっと強い相手にも通じる。
その確信が、少しずつ形になっていく。
⸻
しばらく進むと、空気が変わる。
重い。
淀んでいる。
「……ここですね」
リュナが頷く。
視線の先。
岩場の奥に、黒く口を開けた洞窟があった。
「巣」
短い言葉。
だが圧がある。
中から、微かに気配が漏れている。
一体や二体ではない。
数がいる。
俺は深く息を吸う。
吐く。
「行きます」
リュナはすでに弓を引いている。
準備はできている。
俺も前に出る。
一歩。
踏み込む。
暗闇の中へ…




