第27話 快光の誘い
ダンジョンの奥。
戦いの余韻がまだ残っている。
ゼイルが剣を鞘に収めた。
「さて」
大剣の男が肩を回す。
「終わったな」
双剣の女は影が消えた床を確認している。
魔法使いは周囲の魔力を探っていた。
ゼイルがこちらへ歩いてくる。
「兄ちゃん」
俺は顔を上げる。
「はい」
ゼイルは笑う。
「さっきの魔法」
「面白すぎる」
カイルが横で腕を組む。
「レオンの魔法だ」
ゼイルが頷く。
「わかってる」
そして言った。
「だから誘いに来た」
俺は首を傾げる。
「誘い?」
ゼイルが親指で後ろを指す。
「俺たちのパーティ」
「快光」
そしてメンバーを見る。
「改めて紹介しとくか」
大剣の男が前に出る。
「ガルド」
身長は二メートル近い。
巨大な剣を背負っている。
「前衛、破壊担当だ」
双剣の女が短く言う。
「ミア」
小柄だが動きが鋭い。
「遊撃」
最後にローブの男。
「レクト」
眼鏡を押し上げる。
「魔術担当です」
ゼイルが肩をすくめる。
「そして俺」
剣を軽く振る。
「リーダーのゼイル」
快光の四人。
隣国最強ギルド。
ゼイルが俺を見る。
「どうだ」
「うち来ないか?」
一瞬。
空気が止まる。
次の瞬間。
「ダメです!」
エリシア王女の声が響いた。
ゼイルが振り向く。
王女は怒っていた。
「彼は王国の人材です!」
ゼイルが笑う。
「まあそう言うな」
王女は続ける。
「レオンは王都へ連れて帰ります!」
ゼイルは肩をすくめる。
「別に今すぐとは言ってない」
そして俺を見る。
「提案だ」
少し間を置く。
「困ったことがあれば呼べ」
「今回みたいにな」
俺は首を傾げる。
ゼイルは続ける。
「最優先で駆けつける」
ガルドが笑う。
「面白い戦いならな」
ミアが言う。
「借り」
レクトが頷く。
「悪くない提案でしょう」
ゼイルが言う。
「その代わり」
「いつか快光に入るか考えてくれ」
王女が怒る。
「ダメです!」
ゼイルが笑った。
「まあゆっくり考えろ」
ダンジョン探索は終わり。
俺たちは地上へ向かうことになった。
⸻
帰り道。
王女が横を歩く。
そして何度も聞く。
「レオン」
「はい」
「本当に行く気はないですよね?」
俺は苦笑する。
「いやまだ何も」
王女が食い気味に言う。
「ダメです」
少し歩く。
また聞かれる。
「本当に?」
「いやだから」
また聞かれる。
「本当に?」
俺は思わず言う。
「王女様、三回目です」
王女は頬を膨らませる。
「大事なことです」
カイルが小さく笑う。
リュナは静かに歩いていた。
しばらくして。
リュナが俺を見る。
「レオン」
「何」
リュナは言う。
「一つ聞く」
「うん」
リュナが続ける。
「ステータス転写」
「魔力はコピーしなかったよね」
俺は立ち止まった。
「……あ」
カイルが振り向く。
「どうした」
俺は考える。
今までコピーしたのは
筋力
敏捷
耐久
全部肉体ステータスだ。
でも。
魔力はやってない。
リュナが言う。
「もし」
「魔力を転写したら」
俺はゆっくり言う。
「俺の魔力が基準になる」
カイルが理解する。
「つまり」
俺は言った。
「魔力が高い相手でも」
「俺の魔力まで落ちる」
沈黙。
そして俺は気付く。
もし。
俺の魔力が――
めちゃくちゃ高かったら?
リュナが小さく言う。
「魔力を上げれば」
俺は続ける。
「どんな敵でも」
カイルが言う。
「最弱にできる」
俺は空を見上げる。
つまり。
この魔法は
弱いんじゃない。
俺が弱いだけだった。
王女が言う。
「レオン?」
俺は笑った。
「ちょっと」
「やること見つかりました」
遠くに王都が見えてくる。
俺は思う。
もっと強くなればいい。
魔力を上げればいい。
そうすれば。
どんな敵でも。
――最弱にできる。
こうして。
俺の異世界の冒険は新しい幕を開けた。




