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18話 想いのあるリボンとミサンガ

「さて、ではさっそくショッピングに行きましょうか」

 

 朝食を済ませた私と凜ちゃんは食堂から出た刹那、ラウンジのソファに座っていた師匠から声がかかる。

 

 師匠は私たちの方に接近すると、さっそく買い物に出かけようと促した。


「「……」」


「? どうしました、お二方とも」


「師匠、その恰好で行くんですか?」


「そうですが、何か問題でも?」


 学園指定の紺色のジャージ姿のまま、何の疑いもなく街へ出ようとする師匠。


 そのあまりの無頓着さに私たちは言葉を失い、ただ“本気なのか、この人は”という思いを込めて、しげしげと見つめていた。


「いや、別に問題は無いんですが。無いんですが……やっぱり乙女として少しはおしゃれに気を使ってもいいのでは?」


「むっ。先ほどの水無月さんもそうですが、乙女、乙女って。別に乙女だからと言って、おしゃれに興味関心が無い人だってこの世にはいると思いますけど……自分の価値観を相手に押し付けるのって少々傲慢(ごうまん)では?」


 師匠の言うことも理解できる。この世にはオシャレに興味関心などない女性の人だっているわけで、それを他人に押し付けるのはあまりにも傲慢が過ぎる。


 それは、分かるけど……分かるけど!


「いや、まあ、それは否定しませんが。でも、師匠って容姿が整っていて可愛いのにもったいないと言うか……」


「か、かわいい!? べ、別に可愛くなんて……」


 師匠は私に”可愛い”と言われ、声が上擦ると共に羞恥と照れが重なり、顔が真っ赤になって戸惑う。


 どうやら、そうした評価には慣れていないらしい。自分の姿について、ほとんど意識を向けてこなかったのだろう。


「いやいや、可愛いですよ!」


 自分の容姿の可愛らしさを否定する師匠に私はお世辞抜きの可愛いを被せる。


「そ、そうですか。ですが、四季はそういったおしゃれと言うものに無頓着で、基本的に出かけるときも、家にいるときも、寝るときも、Tシャツにこのようなジャージが鉄板なので。それ以外の服なんて持ってませんし……」


「オシャレに無頓着って言いますが、その髪飾りとかミサンガとかのアクセサリーはいつも身に着けてますよね? 多少、おしゃれに気を使ってるかと思ってましたが」


 オシャレに無頓着と言うものの、師匠の手首のミサンガはともかく、大きな青いリボンは、毎日髪をまとめるのが大変だと思う。


 私が今、二つのサイドの髪を結んでいる二つの白いリボンは、母が三つ葉女学院合格祝いとお守りと称して、作ってもらったものだ。


 ゴムにリボンが結びつけられているから、ただ束ねるだけで形になり、さほど手間がかからない。


 対して、師匠のリボンはそんな施しは無く、ただのひも状のリボン。そんなリボンを結ぶには相当な手間がかかるはず。


 オシャレに今まで無頓着だった師匠ならなおさら。


 師匠と出会ってからというもの、リボンをしていない姿なんてただ一度も見たことがなかった。


 オシャレに無頓着と言うなら、忘れたり、めんどくさくなって放置したりすると思うのだが。


「それも変な話なんですよね」


「変な話、ですか?」


「四季は愚か、両親もおしゃれに無頓着で、服装も四季みたいな感じで、オシャレよりも身軽さや手軽さを選ぶので、見た目にはこだわらないんですよ。アクセサリーなんてもってのほか。だから、誕生日の日に両親からこの髪飾りとミサンガを貰ったときは、正直、驚きました。どういう風の吹き回しかと。全く、おかしな話ですよね」


 師匠の青い瞳は遠い記憶の光景を映し出しているようで、その過去話を語る師匠の口元は優しく微笑んでいた。


 それほどまでに、この髪飾りとミサンガが気に入っているのだろう。

 

 その証左に、師匠は私と出会ってから大事そうにミサンガを優しく撫でているのを何度も見たし、さっきも言った通り、おしゃれに気を使っていないと言いつつ、しっかりと青いリボンを毎日欠かさず付けている。

 

 それだけで、師匠がどれだけ大切にしているのか分かる。


「ま、まあ、四季のことは置いといて。早く行きませんか? せっかくの休日が台無しになってしまいます」


「そうですね。行きましょうか」


 凜ちゃんも私たちの意見に賛成なのか、首をうんうんと頷いてくれた。


 そうして、私たちは休日を謳歌するために商業区域にてショッピングに勤しむのであった。

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